努力が必ず報われる世界って本当ですか?

嗄声逸毅

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第一章① 『地獄の地編』

第一章①-1  『ここが図書館って本当ですか?』

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図書館までの道中にある小屋――。


俺はスジグモさん達と別れた後、馬車のおじさんが言っていた小屋に着き、夜飯を終えていた。

「ナイユフさま、明日も朝がお早いので今日はゆっくりお休みなさいませ」

「お気遣いありがとうございます。では、おやすみなさい」

もうすぐ今日が終わる。俺は明日から、フラッカのために何ができるのだろうか。王子になれたとして、それはいつだ。本当に王子になったからといって法を変えることが出来るのか。





 太陽がまだ顔を出してない薄暗い朝、「はっ」と俺は目覚めた。
夢……だよな。
寝ていたのだから当然夢だったのだろう。
しかし、寝ぼけていて夢ではないような気がしていた。
よく覚えてはいないが遠くから俺は真っ暗闇にいる小さい女の子をただ見ていた。
肌も服もボロボロのその女の子。泣いていたのか。何かを手に取りこちらを見てきた。
それからのことは覚えていないが、今思えば水球ここに来てから何度か同じような夢を見ている。
変な夢のせいでイマイチ疲れが取れておらず、少し頭がボーっとしていた。
なんだか、をした夜のあとの目覚めに近い。
そんなことを考えていたら、そこにドアをノックして「失礼いたします」と馬車のおじさんが入って来た。

「おはようございます、ナイユフ様。朝食の準備が整いましたのでお呼びに参りました」

「わざわざありがとうございます。今すぐ起きますね」

ちゃちゃっと朝の支度をし、おじさんが作ってくれたスープと備蓄用の硬いパンを食べ終え図書館へ向かった。


****


「おじさん!もしかしてこの先に見えるあのデカいのが図書館ですか?」

「ええ、そうですよ。あれが蔵書数でワイト王国一を誇るワイト国立図書館でございます」

おお!すっげー!ワイト王国一なだけあるな。

白色を基調としたその図書館はまるでアメリカのホワイトハウスを彷彿とさせる外観をしていて、とにかくでかい。

「国内一なのに、こんな山奥にあるのはどうしてなんですか?やっぱり閉架式だからですか?」

「その通りでございます。閉架式のため一般のお客様はあまり来られません。もともとは街の中に建設予定でしたが訪れる方があまり来ないことを想定し、山奥に変更になりました」

確かに一般人が手に取って読んだりがしづらいようなところに、あまり行こうとは思わないよな。

「それにしても本当にここが中心部なんですか?見渡す限り森ばっかりじゃないですか」

「この山は中心部のすぐ横にあり、名はメンチーカマウンテンです。お客様が乗車されたカラルナの町よりは中心に位置しております」

「なんだそういうことだったんですね。てっきり街中をイメージしてまして」

なんだか少しがっかりした。もっと人っけの多い開けた街を想像していた。

あっという間にワイト国立図書館に着くことが出来た俺は、馬車のおじさんに別れを告げ、図書館の入口の扉を開けた。
入ってすぐ、そこには広々としたホールがあり、奥の部屋には本がぎっしりと詰まっているのが良く分かる。
そしてそのホールのど真ん中に受付のカウンターあり、一人の男が立っていた。体系はすらっとしており、軟毛で毛先がクルクルとしており物腰が柔らかそうでいて、しかし凛とした表情の男。
その男はこちらに気づくと

「ご用件は?」

とこちらを伺う。

ご用件はって聞かれてもなんて答えたらいいのだろうか。王子になりたくて来ました?いや、なんか違う。違うことはないがただ王子になりたい奴とは違う。

「ええっとー」

俺が言葉を詰まらせていると

「もしかして、君がナイユフかい?」

「えっ、なんで俺の……」

なんで俺の名前を知っているんだろう。

「やはり君がそうか。よかったよかった、無事にたどり着いたね。話は聞いている。待っていたよ、と共にね」
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