努力が必ず報われる世界って本当ですか?

嗄声逸毅

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第一章① 『地獄の地編』

第一章①-4  『強くなれるって本当ですか?』

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「「マナ?」」

あれ、どこかで聞いたことあるよな。マナ…。

「知らないようだね」

「あっ!ちょっと待ってください!それ、どこかで聞いたことがあります!」

「俺も聞いたことある気がする。確か名前を役所で決めてもらうときに…」

「思い出したそれだ!フルーラだ!懐かしいなー。ここに来たばかりの時に名前を付けてもらったの忘れてた」

「俺もそいつだったな」

「フルーラか、なるほど。彼ならマナのことは知ってるだろうね。ちなみに僕もそのフルーラに名をつけてもらったよ。というかワイト王国に住む者は皆、彼に名を付けられているようなものだよ」

「そ、それって一人で全員分の名前をってことですか?」

「正確には彼自体はローゼ州に居るが、彼のマナを使って動かしている命名機が各州に1つずつ配置されているんだ。どちらにせよ彼のマナを使ってる以上はこの国の住民にとって彼が名付け親だよ」

「へぇー知りませんでした!命名職も大変ですね」

「ちょっと待て…そのフルーラってやつだけが名前を付けられるんだろう?だとしたら、フラッカって名前を付けたのはそいつのはず。フラッカについて何か知ってやがるんじゃねーか?」

「それは僕も今思ったところだ。もしかすると、彼は何らかの関係者なのかもしれないね。だが、それを今話したところで解決はしない。この話はここまでにして、早速マナについて教えよう。簡単に説明するとマナとはエネルギーのことだ」

「エネルギー?」

「そう、エネルギー。人間は生きていく中で必ずエネルギーが必要となる。わかりやすく説明すると、人間は皆、酸素を吸って生活しているだろう?その酸素を大量に、かつ、素早く体内に取り込むためには何度も深呼吸をするほかない。しかし、この世界ではマナを利用することで体内の酸素の吸収の効率を上げることが出来る。結果的に、深呼吸の回数を大幅に減らすことができる」

「それってマナは具体的に何をしてくれるんですか?」

「今の例だと、血の流れるスピードを速めてくれるんだ。他にも色々な活用方法がある。だが、ひとつずつ説明するのには時間もかかるし言語化するのも難しい。だから今から僕の記憶と感覚を君たちに与えよう」

「記憶と感覚ってどうやってそんなことを」

「急がば急げだ。まあ見てなって。“伝達せよビナレロ”」

オリオさんは謎の言葉を発するとともに、右手の人差し指を自分のこめかみにそっと当てた。

するとその直後、俺とカマチは緑のオーラに包まれた。

「なんだこの記憶!見たことも聞いたこともねーのに映像やら言葉が頭に入ってくる!」

「俺もだよ!何だこの感じ!」

すぐにそのオーラはスンと消えた。

「今僕がしたのはマナについての記憶、および感覚をマナに変換し、君たち二人に伝達したんだ。マナにはこんな使い方もある」

「すんげー!おい、オリオ!今やって見せた伝達、俺らにもできるのか?」

「いいや、残念だが今僕が見せた術は高度な技術を要するから君たちにはまだ不可能だ。ここまでの技術を会得するのには最低で10年かかると思ってくれていい」

「10年か、それだけすごいんですねオリオさんは」

「すごい?」

「すごいですよ!だって並大抵では会得できないんですよね」

「どうだろうね。努力しだいと言いたいところだが、もちろん運も大事だろうね。さっ、マナについての基礎は今ので伝わったはずだ。それじゃ早速だが僕の師匠達のところへ送るとしようか」

「ちょっと待ってくださいよ!」

「ん?どうしたのかな?もう基礎はわかっただろう」

「それはわかりましたけど、まだ使ってないじゃないですか!僕ら初心者にもできる簡単な技?的なモノはないんですか?」

「ああ、確かに基礎は教えたけどマナを使うってのはそんな単純じゃないんだよ。だから君たちはまだ使えないはずなんだ。だがカマチ。君はすでにマナを使っているんじゃないかな?恐らく自覚はないだろうが」

「俺がマナを?全く身に覚えはないな」

「そうか。君は走ってここまで来たと言っていたね。実際走って来れない距離ではないんだが、君はカラルナの街からこの図書館までの距離を知っているかい?おおよそ100キロメートル。これを人が走るには単純計算だと、だいたい早くても10時間以上はかかるだろう。とはいってもこれは、休憩なしで、かつ、ずっと同じペースで走ったときの話だ。実際は常人ならもっとかかる。だがカマチはカラルナを正刻せいこく、つまり0時に出て今朝の7時にここにたどり着いた。要した時間は約7時間だ」

「となるとさっきの単純計算よりも3時間も速い!」

「ああ、常人ではあり得ない速度なんだ。しかも、ここに来るまでの道のりはそのほとんどが上り坂」

「速いのかもしれないけど、俺は普通に走っていただけだし特別何かをした覚えはないぞ」

「マナというのは無意識でも使うことが出来るんだ。だが完全に使いこなすには、かなりの時間がかかる。もう早速だか、君たちにはあまり時間が無い。せっかくここまで来てもらったのにたらい回しのようになってしまって申し訳ない。しかし僕に出来るのはここまでだ。今から君たちを僕の師匠達の元へ送ろう」

「あれ、でももう駅馬車はカラルナに戻っちゃいましたけど?ナニでそこまで向かえばいいんですか?」

「これもマナを使う」

「マナで転移できるんですか!?」

「ああ、上級者になれば可能だよ。さっ、2人ともここに立って、
できるだけくっついてあまり離れないようにしてくれよ。失敗すると全身バラバラの状態で届くかもしれないからね」

「全身バラバラ!?嫌ですよそんなの!」

「心配ないさ、これは僕が編み出したものだからね。僕以上はいないさ。誰にだって工夫や想像しだいで可能性を生み出し強くなることが出来る。それがマナさ。さあ!幸運を祈る!''転移せよリアンキ''」

こうやってどこかへ飛ばされるのは人生で2回目である。
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