努力が必ず報われる世界って本当ですか?

嗄声逸毅

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第一章① 『地獄の地編』

第一章①-3  『出れないって本当ですか?』

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「魔女の無力化と法の撤廃……。かなり難しそうですね」

その時、ベッドからガサっと音がした。

「いいじゃねーか、尚更やる気が出るってもんだろうがよ」

カマチだ。

「カマチ!起きてたのか!お前ビビらせんなよ」

「実は最初っからな、話は全部聞いてた。あと助けてくれてありがとうな」

カマチはオリオさんをまっすぐ見つめ話しかけた。

「どういたしまして。調子はどうかな?随分と息が上がっていたから心配していたよ」

「ああ、もう心配ねぇ。2人には迷惑かけてすまない。あと、俺はカマチ。そっちは?」

「僕はオリオ=マクレインだ。よろしくね、カマチ」

「ああ、よろしく頼むぜ。オリオ」

「バカ!オリオさんだろ!」

俺はすかさず突っ込む。
胡麻はするべきだろう。

「うっせーな。なんでもいいだろう。そんなことより、俺らは今から何をしたらいい?どうやったら王子になれる?」

「そうだった、まずは王子にならないと。オリオさん!王子になるにはどうしたらいいんでしょうか!」

「王子になるにはいくつか方法がある。もちろんすべてちゃんと教えよう。
……ただし、それを教えるには条件がある」

「「条件?」」

なんの条件だろう。

「そう、条件。君たちどちらかが王子になったとき、フラッカの法とは別にもう1つ、法を変えて欲しいんだ。その約束をして欲しい」

「別に構わねーけど、具体的に何についての法なんだ?」

「これを話すにはまず、僕の生い立ちから話さなくてはならない。少し長くなるが聞いてくれるかな?」

「ええ、もちろん聞きます!」

「ありがとう二人とも。じゃあ、そうだな。話がややこしくならないように先に言っておこうか。
僕はここワイト王国で生まれ育った水球人だ。
まあ、君たち地球人が現れるまでは自分のことを水球人だなんて言ったことはなかったんだが……それは置いといて。

僕の家庭は2人兄弟で僕が兄。父は僕がまだ幼い時に仕事に出かけて帰らず行方知れずのまま。

母は物心ついた時には不治の病にかかり、僕が7歳の時に亡くなってしまった。それを機に僕ら兄弟はそれぞれ別の里親に引き取ってもらうことになったんだ。

その後、20歳になり里親の元を離れ、昔から本好きだった僕は今のこの図書館の館長を務めることになったんだ。

この図書館はそこら辺の図書館とは違って唯一の国立図書館となっている。
だからワイト王国や世界に纏わる、ありとあらゆる情報が記載された本を多く扱うんだ。

つまりこの仕事はとても大切であり、その秘密を外部に漏らすわけにはいかない。
それによって僕はこの図書館を出ることを一切禁じられている。
もちろんここで数年暮らしているわけだし、何不自由なく暮らせている。
だが、僕にはどうしても生きているうちに会っておきたい人物がいるんだ。
それは僕がよく読んでいる本の著者である、『M.D.ノルド』という人物だ。

もうこれで、僕が何を言いたいかわかるかな?」

「要するに、その『M.D.ノルド』とかいうやつに会いたいから、ここを出るためにそれを縛る法を変えてほしいんだろ」

「そうだ。あるいはこちらに呼んで来てくれても構わないんだが、僕は『M.D.ノルド』を尊敬している。わざわざ出向いてもらうわけにはいかない」

「確かにそれはそうですね。そもそもこの職はオリオさんの意思では辞めることはできないんですか?」

「それができないんだ。現状の法のまま、もし『辞めたい』だなんて言えば即刻処刑は免れないだろう」

「即刻処刑…」

なんて恐ろしい世界なんだろう、ここは。今の日本なら辞めたいと思えば速攻やめてその日に職が見つかるというのに。

「それだけ重要な本がここには眠っているのか」

「まあ、実は本当に重要な本はちゃんと別のとこに保管してるんだけどね」

「へーそうなのか。じゃあここに来た時、奥に見えていた本は全部大したことはねぇ―のか?」

「いいや、そういうわけでもない。僕にもここにあるすべての本を把握しきれているわけではないからね。あれだけの量となると整理するのにはかなりの時間がかかる」

「まあ、とにかく!がんばって王子になってオリオさんを安全にここから出して見せますよ!」

「よろしく頼むよ、2人とも」

「おうよ。そろそろいいだろう?王子になる方法ってのをよ」

「そう焦らないでくれよ。これから説明する。まず、王子になるには前提として強くなくてはならない。もちろんこれは戦闘能力のことだ。王子である以上、自分が持つ州を守る義務がある。他にも、他国と争うようなことがあれば王子は国王の護衛もしつつ前線で戦うなんてこともあり得るだろう。これが、第一条件だ」

「ふっ、それなら簡単だ。俺は最初っから条件はクリアしている」

「さあ、それはどうかな」

「なんだと?」

カマチは一気に顔色を変えた。

「僕レベルになるとね、その人の近くにいるだけでだいたいの強さが分かるんだよ。ちなみにカマチ、君は弱い」

「カマチが弱い!?噓でしょ!?だったらオリオさん、俺はどうなるんですか!?」

「本当だ。ちなみにナイユフ、君は弱すぎる」

「そんな、確かに格闘経験ゼロだし勉強しかしてないし部活も途中で辞めたし彼女もできたことないけど」

「お前に女がいなかったのは関係ねーだろ。ところでオリオ。俺はどのくらい弱いんだ。認めたくねーけど、現状は受け止めなくちゃいけねーっては思ってんだ」

「んーどのくらいかと聞かれると難しいんだが、間違いなく素質はあるよ。だが弱いといったとこかな。心配はない、伸びしろはかなりあると思う」

「オリオさん!俺は!俺は強くなれますか?」

「ナイユフは伸びしろしかないね。大丈夫、ちゃんと強くしてくれるさ」

「してくれる?てっきりオリオさんが俺らに稽古でもしてくれるのかと」

「僕にはできないよ。さっきも言った通り僕には書庫の管理の仕事もあるし、こんな狭い空間で何かを教えるのは難しいからね」

「じゃあ、誰が俺らに稽古つけてくれるんだ?」

「それなら心配はいらない。僕の師匠達に頼もうと思っている」

「ちゃんといるんですね!よかったぁ」

「だが、あそこに行くには最低限の予備知識をつけていってもらいたい。2人とも、を知っているかい?」
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