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リボンとエプロン
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とぼとぼと力なく歩いていた。
私には婚約はしていなかったけれども将来は結婚しようねと約束していた人がいた。幼馴染みのアンソニー・ヒースター。お隣のチェスター男爵の次男だ。
弟を出産した時に産後の肥立ちが悪く、私が6歳の時に母が他界してしまった。悲しみにくれている私を優しく励ましてくれたアンソニー。それからも私を元気付ける為に外に連れ出してくれたり、会えない時には手紙をくれたりと気がつけば大好きになっていた。
10歳の誕生日に、プレゼントと祝いの言葉と共に成人したら結婚しようねという言葉が嬉しかった。
12歳になり学園に入学してからはお互い選択する授業が違うのもあり、子供の頃の様にいつも一緒というわけにはいかなかったけれど、あの時の言葉をずっと信じていた。
少し疎遠になったのも入学してお互い友人が増えたからだと思っていた。
卒業も間近になり、私達も16歳になってそろそろお前達も結婚するのかと父に尋ねられた。アンソニーをカフェに呼び、父からも聞かれているのだけれどもと、自分から聞くのは恥ずかしかったけれど尋ねた。
「…ごめん。言えなかったけれど、好きな人が出来て…その、今付き合ってるんだ」
「…え?」
「本当にごめん」
そう言って私に背を向けて去って行った。
あの時に言われた言葉を大事にしていた。ずっとアンソニーと結婚するんだとばかり思っていた。それなのに…。
辛いけど、好きな人が出来たならせめて彼の方から言って欲しかった。
ああ、お父さんに何て言おう…。
最近は話す時間も無かったからせっかくの休日だし、食事でもしながら今後の事を話そうと思っていた。それが席に着いて注文する暇もなく終わるだなんて…。
お店の人に悪い事しちゃったな。そう思ってふらふら力なく歩いているとふと影ができ、上から男性の声が降って来た。
「どうなさいましたか。気分が優れないのですか」
気がついたら学園の寮近くまで来ていた様だ。
学園内には昼夜問わず警備兵が配置されている。高位貴族のご子息ご令嬢も寮にいる為だ。今心配して声を掛けてくれた方は、その学園を警備して下さってる方だろう。
「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
いつも万全の警備をありがとうございます。とその場を離れようとすると「失礼します」と手を掴まれ人目につかなそうな場所に引っ張ってこられた。
いくらなんでも誰かに身咎められたらと慌てて離れようとするも通せんぼのように立ち塞がれてしまう。
半ばパニックになりあわあわしてしまった。
「どうぞ」
どうぞって…。
先程からピクリとも表情を動かさず促される。な、何故そんなに。
もう早く部屋に戻りたい。戻って気持ちの整理をしたい。そんな投げやりになってさっと話をした。
「小さい頃に結婚しようと言ってくれていた幼馴染みに振られてしまって落ち込んでいました」
「…なるほど」
「はい。それでは失礼いたします」
何故まだ通せんぼされるのかしら。
「新しくレディも恋をすれば良い」
気持ちの整理をつけてゆっくり考えたいのにどうしてこうなっちゃたのかしら。もしお母さんが今も元気なら相談出来たのかな。それよりもこの状況をどうすれば良いのか教えてほしい。
ああー…
「……お母さんに会いたい…」
「分かった」
何が。
「俺がお母さんになろう」
何故。
無意識に呟いてしまった言葉のせいでとんでもない事になった気がする。
私には婚約はしていなかったけれども将来は結婚しようねと約束していた人がいた。幼馴染みのアンソニー・ヒースター。お隣のチェスター男爵の次男だ。
弟を出産した時に産後の肥立ちが悪く、私が6歳の時に母が他界してしまった。悲しみにくれている私を優しく励ましてくれたアンソニー。それからも私を元気付ける為に外に連れ出してくれたり、会えない時には手紙をくれたりと気がつけば大好きになっていた。
10歳の誕生日に、プレゼントと祝いの言葉と共に成人したら結婚しようねという言葉が嬉しかった。
12歳になり学園に入学してからはお互い選択する授業が違うのもあり、子供の頃の様にいつも一緒というわけにはいかなかったけれど、あの時の言葉をずっと信じていた。
少し疎遠になったのも入学してお互い友人が増えたからだと思っていた。
卒業も間近になり、私達も16歳になってそろそろお前達も結婚するのかと父に尋ねられた。アンソニーをカフェに呼び、父からも聞かれているのだけれどもと、自分から聞くのは恥ずかしかったけれど尋ねた。
「…ごめん。言えなかったけれど、好きな人が出来て…その、今付き合ってるんだ」
「…え?」
「本当にごめん」
そう言って私に背を向けて去って行った。
あの時に言われた言葉を大事にしていた。ずっとアンソニーと結婚するんだとばかり思っていた。それなのに…。
辛いけど、好きな人が出来たならせめて彼の方から言って欲しかった。
ああ、お父さんに何て言おう…。
最近は話す時間も無かったからせっかくの休日だし、食事でもしながら今後の事を話そうと思っていた。それが席に着いて注文する暇もなく終わるだなんて…。
お店の人に悪い事しちゃったな。そう思ってふらふら力なく歩いているとふと影ができ、上から男性の声が降って来た。
「どうなさいましたか。気分が優れないのですか」
気がついたら学園の寮近くまで来ていた様だ。
学園内には昼夜問わず警備兵が配置されている。高位貴族のご子息ご令嬢も寮にいる為だ。今心配して声を掛けてくれた方は、その学園を警備して下さってる方だろう。
「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
いつも万全の警備をありがとうございます。とその場を離れようとすると「失礼します」と手を掴まれ人目につかなそうな場所に引っ張ってこられた。
いくらなんでも誰かに身咎められたらと慌てて離れようとするも通せんぼのように立ち塞がれてしまう。
半ばパニックになりあわあわしてしまった。
「どうぞ」
どうぞって…。
先程からピクリとも表情を動かさず促される。な、何故そんなに。
もう早く部屋に戻りたい。戻って気持ちの整理をしたい。そんな投げやりになってさっと話をした。
「小さい頃に結婚しようと言ってくれていた幼馴染みに振られてしまって落ち込んでいました」
「…なるほど」
「はい。それでは失礼いたします」
何故まだ通せんぼされるのかしら。
「新しくレディも恋をすれば良い」
気持ちの整理をつけてゆっくり考えたいのにどうしてこうなっちゃたのかしら。もしお母さんが今も元気なら相談出来たのかな。それよりもこの状況をどうすれば良いのか教えてほしい。
ああー…
「……お母さんに会いたい…」
「分かった」
何が。
「俺がお母さんになろう」
何故。
無意識に呟いてしまった言葉のせいでとんでもない事になった気がする。
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