5 / 11
リボンとエプロン
5
「おやおやこれは痛かったねぇ。強く握り込まれたせいで少し傷がついてしまったけど、大丈夫綺麗に治って後も残らない様にするからねぇ」
騎士様は先生に私を託すとそのまま直ぐに立ち去っていった。
医務に勤めている先生が優しく治療を行なってくれてほっとし、少し涙が滲んだ。
「アトリア!」
そう言って駆け込んで来てくれたのはケニーだった。
ガバッと私を抱きしめてくれて「ごめんね」と呟かれた。
「心配かけてしまってごめんね、ケニー。私の見通しが甘かったの」
「それでも直ぐに対応出来る距離にいれば良かった。そうすれば怖い思いも、傷だってつけられ無かったかもしれないのに」
お互いに「そんな事ない」なんて言いながら涙ぐんでしまった。
「そういえばケニーはどうしてここに?」
「2人を見送った後心配で、部屋に戻らないで寮の入り口でうろうろしていたの。そうしたらあの素敵な騎士様がアトリアの事を教えてくれたの。
「そうだったんだね、感謝しなきゃ」
先生に治療と少し騒いでしまった事をお詫びして寮へ帰った。
夕飯時もう1人の友人に話をすると「なんて勝手なの」と怒り、傷の心配をしてくれた。
今日の事を手紙にし、お父さんには少し怖いので、もし可能ならチェスター男爵から縁談が来る様な事があれば断って欲しいと綴った。
卒業が目前にまで迫ると手紙と荷物が届いた。
手紙には1度家に戻ってくる様にと書かれていた。
そして荷物を開けて見ると、とても綺麗なドレス一式とアクセサリーが入っていた。
裾に向けて少しず青が濃くなるグラデーションドレスで見頃は華美すぎない巻き薔薇になっていてとても可愛らしい。
アクセサリーも小さな薔薇がモチーフの可愛らしいものでより卒業パーティーが楽しみになった。
そして迎えた学園からの旅立ちの日。
卒業生代表の挨拶が終わるとパーティーが始まる。
友人達のお互いのドレスを褒め、普段では滅多に口に出来ない料理を食べ、今日という日を迎えられた事を皆で喜びあった。
◆
◆
◆
「ただいま戻りました」
「お帰り姉さん!」
まだまだやんちゃな弟が胸に飛び込んで来た。
長期の休みの度に帰ってきていたがまた大きくなった様だ。男の子の成長って早いのね。
「お帰り。疲れただろうけど少し話をしてもいいかい?」
「ただいま、お父さん。大丈夫よ。ごめんね、姉さんちょっとお父さんとお話ししてくるから」
「もう、子供扱いしないで!大丈夫だからゆっくりね」
ぷうと頬を膨らませ弟は部屋に戻って行った様だ。
取り敢えず自分の部屋に荷物を運び込んで執務室に向かった。
「急がせて悪かったね。アンソニーの事は災難だったね。とても良い子だったからこそかもしれないが、勉強以外の事も学ぶのが学園だからね。きっと彼も良い勉強になっただろう」
「それで大丈夫だったの?」
「ああ。チェスター男爵も把握していて子供達の事は残念だが、変わらない付き合いを約束してくれたよ。それとねアトリア、お前に8歳年の離れた方から縁談が来ているんだ。明後日にはこちらにいらっしゃる様だから迎えてあげておくれ」
ええ?そんなに急に?ど、どうしよう準備と私の服なんかも…あ、そうだ。卒業パーティーで着たものにしよう。
古くから働いてくれているメイドのヘザーに、帰宅した挨拶と明後日の相談をしに向かった。
ここまで大変だった…。ヘザーに無理させちゃったから、お父さんに頼んで特別手当てを出してもらおう。
ぐったり到着を待っていると馬の嘶きが聞こえた。どうやら到着したようだ。
慌てて出迎えるとパリっとした服を着こなし、かなり上背のある方が大きな赤い薔薇の花束を抱え、私の前に立った。
「お待ちしておりました。ルズコート男爵の長女、アトリア・ウィックロスです。本日はお忙しい中ご来訪いただきありがとうございます。心よりお礼申し上げます」
「今日のこの日を心待ちにしていました。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。貴女を慈しみ、守り、大事にします」
はい?
花束を受け取ると視界がいっぱいになる。
ヘザーがすかさず「お預かりします」と私から花束を受け取り活けに戻った様だ。
そしてポカンとする私の手を取り、その場で片膝をつかれた。
「何故騎士様がここに…」
「シルヴィスだ」
「いえ、ですから」
「シルヴィスだ」
昔同じやりとりをした様な気がする。
「…アトリアはいつも声をかけてくれた。俺だけでは無かったが、皆当たり前と思っている警備の者に労りの言葉をかけてくれる。それを自然と行う君が気になった。そして気づけば目で追う様になり、初めて真正面から向かい合ったあの日アトリアに恋をした」
しぱしぱと瞬きが止まらない。
「学園の休みの日にしたピクニック。回を重ねる度に思いが強くなり、アトリアと一生を共に過ごしたいと思った。決して余所見などせず、アトリアただ1人を愛し抜く事を誓おう。だからどうか俺と結婚してほしい」
はひ、ひえええ。
何が起きたか分からない。分からないけど私求婚されてる…?
ピンクのエプロンに大きなリボンを付けた謎な人が?
目の前のパリッとした服で身をつつみ、片膝をついて私に告白をする人は同じ人物なの…?
どんどん顔が赤くなるのが分かるが止まらない。
何故かだんだん息が上がって来て視界がチカチカして来た。
…どうやら私は人生で初めて驚きで気絶してしまった様だ。
屈強な自称『お母さん』の次は、私の旦那様になる事がご希望らしい。
騎士様は先生に私を託すとそのまま直ぐに立ち去っていった。
医務に勤めている先生が優しく治療を行なってくれてほっとし、少し涙が滲んだ。
「アトリア!」
そう言って駆け込んで来てくれたのはケニーだった。
ガバッと私を抱きしめてくれて「ごめんね」と呟かれた。
「心配かけてしまってごめんね、ケニー。私の見通しが甘かったの」
「それでも直ぐに対応出来る距離にいれば良かった。そうすれば怖い思いも、傷だってつけられ無かったかもしれないのに」
お互いに「そんな事ない」なんて言いながら涙ぐんでしまった。
「そういえばケニーはどうしてここに?」
「2人を見送った後心配で、部屋に戻らないで寮の入り口でうろうろしていたの。そうしたらあの素敵な騎士様がアトリアの事を教えてくれたの。
「そうだったんだね、感謝しなきゃ」
先生に治療と少し騒いでしまった事をお詫びして寮へ帰った。
夕飯時もう1人の友人に話をすると「なんて勝手なの」と怒り、傷の心配をしてくれた。
今日の事を手紙にし、お父さんには少し怖いので、もし可能ならチェスター男爵から縁談が来る様な事があれば断って欲しいと綴った。
卒業が目前にまで迫ると手紙と荷物が届いた。
手紙には1度家に戻ってくる様にと書かれていた。
そして荷物を開けて見ると、とても綺麗なドレス一式とアクセサリーが入っていた。
裾に向けて少しず青が濃くなるグラデーションドレスで見頃は華美すぎない巻き薔薇になっていてとても可愛らしい。
アクセサリーも小さな薔薇がモチーフの可愛らしいものでより卒業パーティーが楽しみになった。
そして迎えた学園からの旅立ちの日。
卒業生代表の挨拶が終わるとパーティーが始まる。
友人達のお互いのドレスを褒め、普段では滅多に口に出来ない料理を食べ、今日という日を迎えられた事を皆で喜びあった。
◆
◆
◆
「ただいま戻りました」
「お帰り姉さん!」
まだまだやんちゃな弟が胸に飛び込んで来た。
長期の休みの度に帰ってきていたがまた大きくなった様だ。男の子の成長って早いのね。
「お帰り。疲れただろうけど少し話をしてもいいかい?」
「ただいま、お父さん。大丈夫よ。ごめんね、姉さんちょっとお父さんとお話ししてくるから」
「もう、子供扱いしないで!大丈夫だからゆっくりね」
ぷうと頬を膨らませ弟は部屋に戻って行った様だ。
取り敢えず自分の部屋に荷物を運び込んで執務室に向かった。
「急がせて悪かったね。アンソニーの事は災難だったね。とても良い子だったからこそかもしれないが、勉強以外の事も学ぶのが学園だからね。きっと彼も良い勉強になっただろう」
「それで大丈夫だったの?」
「ああ。チェスター男爵も把握していて子供達の事は残念だが、変わらない付き合いを約束してくれたよ。それとねアトリア、お前に8歳年の離れた方から縁談が来ているんだ。明後日にはこちらにいらっしゃる様だから迎えてあげておくれ」
ええ?そんなに急に?ど、どうしよう準備と私の服なんかも…あ、そうだ。卒業パーティーで着たものにしよう。
古くから働いてくれているメイドのヘザーに、帰宅した挨拶と明後日の相談をしに向かった。
ここまで大変だった…。ヘザーに無理させちゃったから、お父さんに頼んで特別手当てを出してもらおう。
ぐったり到着を待っていると馬の嘶きが聞こえた。どうやら到着したようだ。
慌てて出迎えるとパリっとした服を着こなし、かなり上背のある方が大きな赤い薔薇の花束を抱え、私の前に立った。
「お待ちしておりました。ルズコート男爵の長女、アトリア・ウィックロスです。本日はお忙しい中ご来訪いただきありがとうございます。心よりお礼申し上げます」
「今日のこの日を心待ちにしていました。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。貴女を慈しみ、守り、大事にします」
はい?
花束を受け取ると視界がいっぱいになる。
ヘザーがすかさず「お預かりします」と私から花束を受け取り活けに戻った様だ。
そしてポカンとする私の手を取り、その場で片膝をつかれた。
「何故騎士様がここに…」
「シルヴィスだ」
「いえ、ですから」
「シルヴィスだ」
昔同じやりとりをした様な気がする。
「…アトリアはいつも声をかけてくれた。俺だけでは無かったが、皆当たり前と思っている警備の者に労りの言葉をかけてくれる。それを自然と行う君が気になった。そして気づけば目で追う様になり、初めて真正面から向かい合ったあの日アトリアに恋をした」
しぱしぱと瞬きが止まらない。
「学園の休みの日にしたピクニック。回を重ねる度に思いが強くなり、アトリアと一生を共に過ごしたいと思った。決して余所見などせず、アトリアただ1人を愛し抜く事を誓おう。だからどうか俺と結婚してほしい」
はひ、ひえええ。
何が起きたか分からない。分からないけど私求婚されてる…?
ピンクのエプロンに大きなリボンを付けた謎な人が?
目の前のパリッとした服で身をつつみ、片膝をついて私に告白をする人は同じ人物なの…?
どんどん顔が赤くなるのが分かるが止まらない。
何故かだんだん息が上がって来て視界がチカチカして来た。
…どうやら私は人生で初めて驚きで気絶してしまった様だ。
屈強な自称『お母さん』の次は、私の旦那様になる事がご希望らしい。
あなたにおすすめの小説
覚醒者の安穏
かな
恋愛
ジュリアは、15才になり魔力測定のため幼馴染のキースとともにルディエアの魔力測定協会にやってきた。
突然、前回の記憶がよみがえり2回目の人生をやりなおしていることに気づいたのだが・・・。
ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
あなたに何されたって驚かない
こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。
そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。
そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。