屈強なお母さん(男)が出来ました

まる

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リボンとエプロン

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「おやおやこれは痛かったねぇ。強く握り込まれたせいで少し傷がついてしまったけど、大丈夫綺麗に治って後も残らない様にするからねぇ」


騎士様は先生に私を託すとそのまま直ぐに立ち去っていった。
医務に勤めている先生が優しく治療を行なってくれてほっとし、少し涙が滲んだ。


「アトリア!」


そう言って駆け込んで来てくれたのはケニーだった。
ガバッと私を抱きしめてくれて「ごめんね」と呟かれた。


「心配かけてしまってごめんね、ケニー。私の見通しが甘かったの」

「それでも直ぐに対応出来る距離にいれば良かった。そうすれば怖い思いも、傷だってつけられ無かったかもしれないのに」


お互いに「そんな事ない」なんて言いながら涙ぐんでしまった。


「そういえばケニーはどうしてここに?」

「2人を見送った後心配で、部屋に戻らないで寮の入り口でうろうろしていたの。そうしたらあの素敵な騎士様がアトリアの事を教えてくれたの。

「そうだったんだね、感謝しなきゃ」


先生に治療と少し騒いでしまった事をお詫びして寮へ帰った。

夕飯時もう1人の友人に話をすると「なんて勝手なの」と怒り、傷の心配をしてくれた。

今日の事を手紙にし、お父さんには少し怖いので、もし可能ならチェスター男爵から縁談が来る様な事があれば断って欲しいと綴った。

卒業が目前にまで迫ると手紙と荷物が届いた。

手紙には1度家に戻ってくる様にと書かれていた。
そして荷物を開けて見ると、とても綺麗なドレス一式とアクセサリーが入っていた。

裾に向けて少しず青が濃くなるグラデーションドレスで見頃は華美すぎない巻き薔薇になっていてとても可愛らしい。

アクセサリーも小さな薔薇がモチーフの可愛らしいものでより卒業パーティーが楽しみになった。

そして迎えた学園からの旅立ちの日。

卒業生代表の挨拶が終わるとパーティーが始まる。
友人達のお互いのドレスを褒め、普段では滅多に口に出来ない料理を食べ、今日という日を迎えられた事を皆で喜びあった。








「ただいま戻りました」

「お帰り姉さん!」


まだまだやんちゃな弟が胸に飛び込んで来た。
長期の休みの度に帰ってきていたがまた大きくなった様だ。男の子の成長って早いのね。


「お帰り。疲れただろうけど少し話をしてもいいかい?」

「ただいま、お父さん。大丈夫よ。ごめんね、姉さんちょっとお父さんとお話ししてくるから」

「もう、子供扱いしないで!大丈夫だからゆっくりね」


ぷうと頬を膨らませ弟は部屋に戻って行った様だ。

取り敢えず自分の部屋に荷物を運び込んで執務室に向かった。


「急がせて悪かったね。アンソニーの事は災難だったね。とても良い子だったからこそかもしれないが、勉強以外の事も学ぶのが学園だからね。きっと彼も良い勉強になっただろう」

「それで大丈夫だったの?」

「ああ。チェスター男爵も把握していて子供達の事は残念だが、変わらない付き合いを約束してくれたよ。それとねアトリア、お前に8歳年の離れた方から縁談が来ているんだ。明後日にはこちらにいらっしゃる様だから迎えてあげておくれ」


ええ?そんなに急に?ど、どうしよう準備と私の服なんかも…あ、そうだ。卒業パーティーで着たものにしよう。
古くから働いてくれているメイドのヘザーに、帰宅した挨拶と明後日の相談をしに向かった。

ここまで大変だった…。ヘザーに無理させちゃったから、お父さんに頼んで特別手当てを出してもらおう。
ぐったり到着を待っていると馬の嘶きが聞こえた。どうやら到着したようだ。

慌てて出迎えるとパリっとした服を着こなし、かなり上背のある方が大きな赤い薔薇の花束を抱え、私の前に立った。


「お待ちしておりました。ルズコート男爵の長女、アトリア・ウィックロスです。本日はお忙しい中ご来訪いただきありがとうございます。心よりお礼申し上げます」

「今日のこの日を心待ちにしていました。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。貴女を慈しみ、守り、大事にします」


はい?
花束を受け取ると視界がいっぱいになる。
ヘザーがすかさず「お預かりします」と私から花束を受け取り活けに戻った様だ。

そしてポカンとする私の手を取り、その場で片膝をつかれた。


「何故騎士様がここに…」

「シルヴィスだ」

「いえ、ですから」

「シルヴィスだ」


昔同じやりとりをした様な気がする。


「…アトリアはいつも声をかけてくれた。俺だけでは無かったが、皆当たり前と思っている警備の者に労りの言葉をかけてくれる。それを自然と行う君が気になった。そして気づけば目で追う様になり、初めて真正面から向かい合ったあの日アトリアに恋をした」


しぱしぱと瞬きが止まらない。


「学園の休みの日にしたピクニック。回を重ねる度に思いが強くなり、アトリアと一生を共に過ごしたいと思った。決して余所見などせず、アトリアただ1人を愛し抜く事を誓おう。だからどうか俺と結婚してほしい」


はひ、ひえええ。
何が起きたか分からない。分からないけど私求婚されてる…?

ピンクのエプロンに大きなリボンを付けた謎な人が?

目の前のパリッとした服で身をつつみ、片膝をついて私に告白をする人は同じ人物なの…?

どんどん顔が赤くなるのが分かるが止まらない。
何故かだんだん息が上がって来て視界がチカチカして来た。

…どうやら私は人生で初めて驚きで気絶してしまった様だ。



屈強な自称『お母さん』の次は、私の旦那様になる事がご希望らしい。






感想 3

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