屈強なお母さん(男)が出来ました

まる

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金茶色の髪

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「早く身を固めてくれ」


副隊長の従騎士時代に公務等で共に行動する機会が多かったせいか顔を覚えてくださり、正式に騎士なった際当時はまだ立太子されていなかった殿下に取り立ててもらった。
成人を迎える辺りから両親に、何かと都合が良いからと側近の方からも言われている。

そうは言われても正式に騎士になったとはいえ、むしろ騎士になったからこそ学ばなければならない事が多く、そちらの方にまで気は回らなかった。

周囲には理由をつけて女性と話す機会を設けられたりもしたが、正直好みに合わなかった。

内々で立太子される事が決まっていた殿下が入学される際に、警備の強化で俺の所属している殿下付きの部隊も学園に配置される事になった。

何事もなく時間が過ぎ、殿下の婚約者も入学が決まった。
そのご令嬢も警備の面から考慮され学園の寮から通う事になっている。俺達の部隊は主に殿下の居られる男子寮が主体となるが、女子寮も警護に当たる事になった。殿下の卒業時、半数は学園に残り引き続きご令嬢の警護をする事が決まっている。

俺を含み面識のある者が残る様だ。
この学園内の雰囲気のせいか気が緩みそうになり通常任務より逆に辛い。

殿下は卒業され、引き続きご令嬢の警護にあたっている。

そういえばいつの頃からか、時折「いつもありがとうございます」等の言葉をかけられる様になった。


「ああ、俺も偶にそう言われるよ。金茶の髪の可愛い女の子だろ?他の生徒なんて当たり前みたいな顔してるのに、嬉しいモンだよな」

「…金茶」


そうだ。声をかけられた時にはいつも、ゆるいウェーブの掛かった金茶色の髪の子の後ろ姿が目に入った。

それからは何となくその子を探してしまう。
まだ子供。気にするのもおかしいがどうしても目で追ってしまう。楽しそうに友人と笑っている様子に和み、異性と一緒にいる姿に騒つく。そんな風にただ彼女を遠くから見つめる日々。

ある日門の方から頼りなく歩く女性を見かける。
金茶色の…。

具合でも悪いのかと急いで近づき声をかける。


「どうなさいましたか。気分でも優れないのですか」


ゆっくり顔をあげ真正面から相対した金茶色の髪の娘。

可愛い。

自分の中にある何か柔らかなものを一瞬握り込まれた感覚がした。

少し潤んだ大きなヘーゼルナッツ色の瞳。ぷっくりとしたほのかに色付く唇。
今は顔色が悪く辛そうだが、いつか遠くからでしか見た事のないあの柔らかな笑顔を俺の隣で見せてくれたら…。

突然浮かんだ考えに自分で驚き深く息を吸い込み意識を戻す。


「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」


いつも万全の警備をありがとうございます。とその場を去ろうとした。

慌てて立ち去ろうとする彼女を見て、このままでは嫌だ、ただ目で追うだけではと強く思ってしまった。

そうだ、これはチャンスだ!
なんでもいい。とにかくこれで縁を繋げなくては!
そう思った瞬間彼女の手を取っていた。淑女教育を受けた女性に大分強引な手を使ってしまった。怖がらせて申し訳ない。

顔色が非常に悪かったので心配したのも本当の事だ。
でもそれだけではない事情があるなら、力になりたいと思った。純粋ではない下心だったが。

困った様子で黙り込む彼女をじっと見つめる。
すると彼女は観念した様に一つため息をついて話した。


「小さい頃に結婚しようと言ってくれていた幼馴染みに振られてしまって落ち込んでいました」


つまり今は完全にフリーという事か。
彼女には申し訳ないが俺は嬉しくてたまらない。


「新しくレディも恋をすれば良い」


俺と。
絶対に大事にする。

しかし彼女は顔色も悪く何処か遠くを見ながら呟いた。


「……お母さんに会いたい…」

「分かった」


何故そんな事を呟かれたのか分からない。
よく分からなかったがきっと母親の様に甘やかして欲しいんだろう。その幼馴染みの事等欠片も思い出させない。

取っ掛かりは取り敢えず掴めた。名前も聞けた。俺の家は准男爵だが今の立場的に大丈夫だと思う。
直ぐに父からルズコート男爵に縁談を申し込んでもらおう。俺からも男爵に連絡をとって認めて貰わねば。

急がねばならない。
それに彼女は傷心中だろう。だから今はそれで構わない。


「俺がお母さんになろう」





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