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金茶色の髪
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「あらぁ、ファスター様。いーっつも素敵な男性を連れていらっしゃるのねぇ。その方達がそんなにお気に召しているのならその中から選ばれた方がよろしいのではなくて?ああ!私ならギルバート様にそぉんな不実な事なんていたしませんのに!政略で決まってる事とはいえ悲しい事ですわぁ」
「まあ。この方達は警護をしてくださってる方々ですのよ。それとご存知ない様ですが王族のファーストネームを許しもなく勝手に呼ぶと、場合によっては不敬罪に問われる事もございますのよ」
またか。
オールテア伯爵イレイシー・リンガラム令嬢。俺の様な者にさえ耳にする程に評判の良いリンガラム家の中で彼女の評判だけはすこぶる悪い。オールテア令嬢の曾祖母は降嫁された王女という事もあり、皮肉を込めて無垢なお姫様と呼ばれているらしい。
そんな無垢なお姫様は王子様の花嫁になりたいと我儘を言った様だが、候補にも上らなかったそうだ。
入学してその鬱憤を婚約者であるファスター公爵令嬢にぶつけている。
幼い頃から家名を背負う重さを自覚しているこの高位貴族のクラスの中でとても浮いている様だ。
「そんな事言われなくても知っていますわよ!あー嫌だ!公爵家だからとギルバート様の婚約者に無理矢理捻じ込んで、学園では殆ど来ていらっしゃらないのに融通する様にしているだなんて!!」
「まあふふふ。ああ、そういえば私面白い事を聞きましたのよ。どなたかは存じませんが『この成績は間違っているから今すぐ直して!私なら満点の筈だもの、ねぇ分かってるでしょう?お父様に言いつけるわよ!』と叫んでいた方が居たそうよ。王族の方でも介入出来ない様に法で定められているのに、面白い事を叫ぶ方もいらっしゃるのね」
ブルブルと震え出したオールテア伯爵令嬢は「今に見てなさいよ」と呟きを残し立ち去って行った。毎回毎回本当に懲りない方だ。
ファスター公爵令嬢は部屋に戻る様だ。
「どうもありがとう」
ファスター公爵令嬢が寮に入ったのを見届け、半数は引き続き警護に、残りは早めの飯休憩だ。
「やれやれ。大した事なんざしていないのにどっと疲れが出るな。どれ、飯でも食いに行くかー」
「そうだな」
「そういえばお前、金茶の子はどうなんだ?学園の休日にちょろちょろしてるのか?」
「問題無い」
令嬢と副隊長には許可は得ているので穴はない筈だ。
しかしアトリアは可愛かった。
アドバイスを元にちょっとしたプレゼントを選び、ピクニックの時に渡していた。
俺の瞳と同じ色のリボンはとても良く似合っていた。小花の髪留めは彼女の柔らかい雰囲気に合って可憐だった。それにあの細工師が、普段のちょっとしたアクセントに良いと勧められて選んだブローチだがなるほどと納得した。
「休憩中、申し訳ありません」
「なんだ?何があったんだ?」
「はい。オールテア伯爵令嬢が寮内で騒動を起こし飛び出したと報告を受け、学園内を捜索をしておりましたが未だ見つかっておりません。街に出た可能性も考え、市街の巡回兵と協力し捜索をする事に決まりました。その際学園内の警備をフォローいただきたいと」
「了解した」
そろそろ日も暮れる。そんな時間帯にもし共も連れずに飛び出したのなら、何があっても文句も言えないだろう。しかしそれでもこれで事が起きれば学園内の責任にもなる。高位貴族の令嬢なのに何故そんな短絡的に行動するのか…。
早めに休憩を切り上げて、念の為建物で死角になっている場所にも目を向ける。
ん?あれは…。
「すまん。少しだけいいか?」
「ああ?ああ、金茶の子か。ふむ。何だか雰囲気も妙だな。時間をあまり取るなよ」
「ああ」
あの幼馴染みか。
「……るのは嫌。…………………たの。だから……………」
「そんな!嫌だ!そうだ。………ばいい。………………?やり直そう。大丈夫、絶対大丈夫だから!」
あのクソ餓鬼。寄りを戻そうとアトリアに迫っているのか!
両腕を掴んでいる?あんなたおやかなあの子に乱暴な事を!
急いで近づき、アトリアの後ろから小僧の両手首を掴み彼女から引き離した。
少し血が滲んでいるな。可哀想に痛かっただろうし、幼馴染みとはいえ男からこんな風に迫られて怖かっただろう。…このまま骨を砕いてやろうか。
「女性に乱暴を働くのは感心しませんね」
何か言おうとしたのか小僧は口をはくはくさせているが言葉にならない様だ。
「よろしいですか。決して乱暴をしてはいけない」
ふむ。激昂して襲いかかってくる様子もないな。
それよりもアトリアだ。早くこの小僧から離してやった方が安心するだろう。
掴んでいた小僧を離し、彼女を横抱きにするとそのまま医務室に運んだ。
「どうやら強く掴まれた際に爪で傷がついた様だ。少しショックも受けていると思う」
「おやおや。それはまぁ…」
後を頼み、寮母に伝えに向かう。
急ぎ寮に向かうと入り口付近に不安そうに佇んでいる子がいた。
見覚えがあるな。
「すまない。レディは金茶の髪の子と面識はあるだろうか」
「金茶…アトリアの事ですか?はい、私友達です。彼女に何か?」
「トラブルに遭い少々の傷を負っていたので医務室に運んだ。少しショックを受けている様に見受けたので様子を見てあげてほしい」
そう伝えるとお礼を述べ、駆け出して行った。
寮母の待機部屋まで行き事の次第を話す。
コンコンとノック音が響きヒューが入室してきた。
「失礼。ああ、お前も居たのか。丁度良い」
オールテア伯爵令嬢が見つかったとの知らせだった。
「まあ。この方達は警護をしてくださってる方々ですのよ。それとご存知ない様ですが王族のファーストネームを許しもなく勝手に呼ぶと、場合によっては不敬罪に問われる事もございますのよ」
またか。
オールテア伯爵イレイシー・リンガラム令嬢。俺の様な者にさえ耳にする程に評判の良いリンガラム家の中で彼女の評判だけはすこぶる悪い。オールテア令嬢の曾祖母は降嫁された王女という事もあり、皮肉を込めて無垢なお姫様と呼ばれているらしい。
そんな無垢なお姫様は王子様の花嫁になりたいと我儘を言った様だが、候補にも上らなかったそうだ。
入学してその鬱憤を婚約者であるファスター公爵令嬢にぶつけている。
幼い頃から家名を背負う重さを自覚しているこの高位貴族のクラスの中でとても浮いている様だ。
「そんな事言われなくても知っていますわよ!あー嫌だ!公爵家だからとギルバート様の婚約者に無理矢理捻じ込んで、学園では殆ど来ていらっしゃらないのに融通する様にしているだなんて!!」
「まあふふふ。ああ、そういえば私面白い事を聞きましたのよ。どなたかは存じませんが『この成績は間違っているから今すぐ直して!私なら満点の筈だもの、ねぇ分かってるでしょう?お父様に言いつけるわよ!』と叫んでいた方が居たそうよ。王族の方でも介入出来ない様に法で定められているのに、面白い事を叫ぶ方もいらっしゃるのね」
ブルブルと震え出したオールテア伯爵令嬢は「今に見てなさいよ」と呟きを残し立ち去って行った。毎回毎回本当に懲りない方だ。
ファスター公爵令嬢は部屋に戻る様だ。
「どうもありがとう」
ファスター公爵令嬢が寮に入ったのを見届け、半数は引き続き警護に、残りは早めの飯休憩だ。
「やれやれ。大した事なんざしていないのにどっと疲れが出るな。どれ、飯でも食いに行くかー」
「そうだな」
「そういえばお前、金茶の子はどうなんだ?学園の休日にちょろちょろしてるのか?」
「問題無い」
令嬢と副隊長には許可は得ているので穴はない筈だ。
しかしアトリアは可愛かった。
アドバイスを元にちょっとしたプレゼントを選び、ピクニックの時に渡していた。
俺の瞳と同じ色のリボンはとても良く似合っていた。小花の髪留めは彼女の柔らかい雰囲気に合って可憐だった。それにあの細工師が、普段のちょっとしたアクセントに良いと勧められて選んだブローチだがなるほどと納得した。
「休憩中、申し訳ありません」
「なんだ?何があったんだ?」
「はい。オールテア伯爵令嬢が寮内で騒動を起こし飛び出したと報告を受け、学園内を捜索をしておりましたが未だ見つかっておりません。街に出た可能性も考え、市街の巡回兵と協力し捜索をする事に決まりました。その際学園内の警備をフォローいただきたいと」
「了解した」
そろそろ日も暮れる。そんな時間帯にもし共も連れずに飛び出したのなら、何があっても文句も言えないだろう。しかしそれでもこれで事が起きれば学園内の責任にもなる。高位貴族の令嬢なのに何故そんな短絡的に行動するのか…。
早めに休憩を切り上げて、念の為建物で死角になっている場所にも目を向ける。
ん?あれは…。
「すまん。少しだけいいか?」
「ああ?ああ、金茶の子か。ふむ。何だか雰囲気も妙だな。時間をあまり取るなよ」
「ああ」
あの幼馴染みか。
「……るのは嫌。…………………たの。だから……………」
「そんな!嫌だ!そうだ。………ばいい。………………?やり直そう。大丈夫、絶対大丈夫だから!」
あのクソ餓鬼。寄りを戻そうとアトリアに迫っているのか!
両腕を掴んでいる?あんなたおやかなあの子に乱暴な事を!
急いで近づき、アトリアの後ろから小僧の両手首を掴み彼女から引き離した。
少し血が滲んでいるな。可哀想に痛かっただろうし、幼馴染みとはいえ男からこんな風に迫られて怖かっただろう。…このまま骨を砕いてやろうか。
「女性に乱暴を働くのは感心しませんね」
何か言おうとしたのか小僧は口をはくはくさせているが言葉にならない様だ。
「よろしいですか。決して乱暴をしてはいけない」
ふむ。激昂して襲いかかってくる様子もないな。
それよりもアトリアだ。早くこの小僧から離してやった方が安心するだろう。
掴んでいた小僧を離し、彼女を横抱きにするとそのまま医務室に運んだ。
「どうやら強く掴まれた際に爪で傷がついた様だ。少しショックも受けていると思う」
「おやおや。それはまぁ…」
後を頼み、寮母に伝えに向かう。
急ぎ寮に向かうと入り口付近に不安そうに佇んでいる子がいた。
見覚えがあるな。
「すまない。レディは金茶の髪の子と面識はあるだろうか」
「金茶…アトリアの事ですか?はい、私友達です。彼女に何か?」
「トラブルに遭い少々の傷を負っていたので医務室に運んだ。少しショックを受けている様に見受けたので様子を見てあげてほしい」
そう伝えるとお礼を述べ、駆け出して行った。
寮母の待機部屋まで行き事の次第を話す。
コンコンとノック音が響きヒューが入室してきた。
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