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金茶色の髪
6
父からルズコート男爵より縁談を前向きに検討するとの返事をもらったと知らせを受けた。
俺の方からも任務に当たっている為、直接伺う時間の確保ができない事を詫び出来ればとの手紙を送っていた。もし許されるならアトリアに渡してほしいとドレス一式も一緒に。
無垢なお姫様が学園に来れなくなってからは、こう言っては何だがとても平穏だ。
きっとこれがAクラスとしての本来は当たり前の姿なのだろう。
ご令嬢も卒業が間近になり多忙を極めているがそれを周りに悟らせないとは流石だ。
「そういえばシルヴィス。貴方あの子とはどうなりましたの?」
「まだお話し出来る状況ではありません」
「まあ!つれない事!」
もう卒業も差し迫っていて女性はそういった話を好むそうだし、ちょっとした慰みに尋ねただけだったのだろう。
式当日俺は式場の警護ではない為様子を伺う事も出来ない。とても残念だ。
男爵はアトリアにドレスを送ってくれたのだろうか。見たかった。
「おい、手紙来てるぞー」
ファスター公爵令嬢の卒業をもって警護の任務は終了した。鍛錬、事務等が業務の中心となる。
今度は何だと受け取り手紙を読む。
「お?どうした?何か面倒ごとか?お、おい!」
「任せた」
「はー!?おっ前ふざけんなよ!」
ヒューの怒声を聞き流し、隊長室に駆け込んだ。
「ごほ!?何だシルヴィスか。何事だ?」
「俺の人生がかかっています。休みを2週間下さい」
「なんだって?」
「俺の人生がかかっています。休みを2週間下さい」
理由を聞いてるんだ馬鹿者と怒鳴られ、縁談を申し込んでいた家から返事が来たので往復でそれぐらいほしいと伝えた。
「それぐらいの休暇あげなさい。こいつほとんど休みとって無いんですよ」
と副隊長が援護して下さった。ありがたい。
「そもそも!アンタが!書類仕事!俺らに!ぶん投げてるせいで!休みがまわんないんでしょうが!」
「あた!いて!分かったからやめろ!あーもう早く行け!」
今が1番可愛い時期なのにと嘆いている副隊長がバシバシ引っ叩いている。
さっさと休暇申請をまとめて提出した。
◆
◆
◆
ルズコート領内の花屋を駆け回り赤の薔薇を108本束にし、一張羅を身に纏った。
「求婚をするなら赤い薔薇108本用意するのよ」と任務終了の挨拶に伺った時に念を押されたからだ。
逸る気持ちを抑え、馬車の中でソワソワする。
こんなに緊張し落ち着きないのは人生で初めてだ。
「お待ちしておりました。ルズコート男爵の長女、アトリア・ウィックロスです。本日はお忙しい中ご来訪いただきありがとうございます。心よりお礼申し上げます」
「今日のこの日を心待ちにしていました。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。貴女を慈しみ、守り、大事にします」
考えていた挨拶は吹っ飛んでしまった。
まさか今日の日に送ったドレスを着てくれるだなんて!
思った通り良く似合っている。じっと食い入る様に見つめ花束を彼女に渡す。華奢なアトリアには少し重いのか受け取ってふらふらしていた。
さっとメイドが花束を持って下がっていく。
ああ可愛い。
片膝をつき、小さく柔らかな手を取った。
「何故騎士様がここに…」
「シルヴィスだ」
「いえ、ですから」
「シルヴィスだ」
名前を呼んでほしい。
『お母さん』で無くても沢山甘やかすから。大事にするから。
「…アトリアはいつも声をかけてくれた。俺だけでは無かったが、皆当たり前と思っている警備の者に労りの言葉をかけてくれる。それを自然と行う君が気になった。そして気づけば目で追う様になり、初めて真正面から向かい合ったあの日アトリアに恋をした」
遠くから見るだけ、後ろ姿を見るだけでは嫌だ。
「学園の休みの日にしたピクニック。回を重ねる度に思いが強くなり、アトリアと一生を共に過ごしたいと思った。決して余所見などせず、アトリアただ1人を愛し抜く事を誓おう。だからどうか俺と結婚してほしい」
隣であの柔らかい笑みを見せてほしい。
どうか頷いてくれと願いを込めてじっと見つめる。
アトリアはどんどん顔が紅く染まってゆく。
かくんと頷いてくれたと思った時にはそのまま気を失ってしまった。
慌てて抱きとめじわじわと胸に広がる喜びを噛み締めた。
「初めまして、ルズコート男爵ルーフィー・ウィックロスです。こうして直にお目にかかれて嬉しく思います」
「初めてお目にかかります。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。本日はお時間を作っていただきありがとうございます」
にこりとアトリアを彷彿とさせる優しい笑顔で挨拶をして下さった。
「…娘の事は本気なんですね」
「はい。必ずルズコート男爵が大事に慈しんで来た彼女を今度は俺が…私が生涯かけて大事にします。それ以上に慈しみます」
ふふっと男爵は少し複雑そうに笑った。
「そうですか…はは。何とも複雑だ。アトリアが目を覚ましたら婚約誓約書にサインをしましょう。…その前に娘を部屋に運んでもらってもいいかな?」
どうやらあの時に願った事はこれから叶えられそうだ。
『お母さん』としてではなく君の横に立つ夫として。
俺の方からも任務に当たっている為、直接伺う時間の確保ができない事を詫び出来ればとの手紙を送っていた。もし許されるならアトリアに渡してほしいとドレス一式も一緒に。
無垢なお姫様が学園に来れなくなってからは、こう言っては何だがとても平穏だ。
きっとこれがAクラスとしての本来は当たり前の姿なのだろう。
ご令嬢も卒業が間近になり多忙を極めているがそれを周りに悟らせないとは流石だ。
「そういえばシルヴィス。貴方あの子とはどうなりましたの?」
「まだお話し出来る状況ではありません」
「まあ!つれない事!」
もう卒業も差し迫っていて女性はそういった話を好むそうだし、ちょっとした慰みに尋ねただけだったのだろう。
式当日俺は式場の警護ではない為様子を伺う事も出来ない。とても残念だ。
男爵はアトリアにドレスを送ってくれたのだろうか。見たかった。
「おい、手紙来てるぞー」
ファスター公爵令嬢の卒業をもって警護の任務は終了した。鍛錬、事務等が業務の中心となる。
今度は何だと受け取り手紙を読む。
「お?どうした?何か面倒ごとか?お、おい!」
「任せた」
「はー!?おっ前ふざけんなよ!」
ヒューの怒声を聞き流し、隊長室に駆け込んだ。
「ごほ!?何だシルヴィスか。何事だ?」
「俺の人生がかかっています。休みを2週間下さい」
「なんだって?」
「俺の人生がかかっています。休みを2週間下さい」
理由を聞いてるんだ馬鹿者と怒鳴られ、縁談を申し込んでいた家から返事が来たので往復でそれぐらいほしいと伝えた。
「それぐらいの休暇あげなさい。こいつほとんど休みとって無いんですよ」
と副隊長が援護して下さった。ありがたい。
「そもそも!アンタが!書類仕事!俺らに!ぶん投げてるせいで!休みがまわんないんでしょうが!」
「あた!いて!分かったからやめろ!あーもう早く行け!」
今が1番可愛い時期なのにと嘆いている副隊長がバシバシ引っ叩いている。
さっさと休暇申請をまとめて提出した。
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ルズコート領内の花屋を駆け回り赤の薔薇を108本束にし、一張羅を身に纏った。
「求婚をするなら赤い薔薇108本用意するのよ」と任務終了の挨拶に伺った時に念を押されたからだ。
逸る気持ちを抑え、馬車の中でソワソワする。
こんなに緊張し落ち着きないのは人生で初めてだ。
「お待ちしておりました。ルズコート男爵の長女、アトリア・ウィックロスです。本日はお忙しい中ご来訪いただきありがとうございます。心よりお礼申し上げます」
「今日のこの日を心待ちにしていました。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。貴女を慈しみ、守り、大事にします」
考えていた挨拶は吹っ飛んでしまった。
まさか今日の日に送ったドレスを着てくれるだなんて!
思った通り良く似合っている。じっと食い入る様に見つめ花束を彼女に渡す。華奢なアトリアには少し重いのか受け取ってふらふらしていた。
さっとメイドが花束を持って下がっていく。
ああ可愛い。
片膝をつき、小さく柔らかな手を取った。
「何故騎士様がここに…」
「シルヴィスだ」
「いえ、ですから」
「シルヴィスだ」
名前を呼んでほしい。
『お母さん』で無くても沢山甘やかすから。大事にするから。
「…アトリアはいつも声をかけてくれた。俺だけでは無かったが、皆当たり前と思っている警備の者に労りの言葉をかけてくれる。それを自然と行う君が気になった。そして気づけば目で追う様になり、初めて真正面から向かい合ったあの日アトリアに恋をした」
遠くから見るだけ、後ろ姿を見るだけでは嫌だ。
「学園の休みの日にしたピクニック。回を重ねる度に思いが強くなり、アトリアと一生を共に過ごしたいと思った。決して余所見などせず、アトリアただ1人を愛し抜く事を誓おう。だからどうか俺と結婚してほしい」
隣であの柔らかい笑みを見せてほしい。
どうか頷いてくれと願いを込めてじっと見つめる。
アトリアはどんどん顔が紅く染まってゆく。
かくんと頷いてくれたと思った時にはそのまま気を失ってしまった。
慌てて抱きとめじわじわと胸に広がる喜びを噛み締めた。
「初めまして、ルズコート男爵ルーフィー・ウィックロスです。こうして直にお目にかかれて嬉しく思います」
「初めてお目にかかります。へブリッジ准男爵嫡子シルヴィス・へブリッジです。本日はお時間を作っていただきありがとうございます」
にこりとアトリアを彷彿とさせる優しい笑顔で挨拶をして下さった。
「…娘の事は本気なんですね」
「はい。必ずルズコート男爵が大事に慈しんで来た彼女を今度は俺が…私が生涯かけて大事にします。それ以上に慈しみます」
ふふっと男爵は少し複雑そうに笑った。
「そうですか…はは。何とも複雑だ。アトリアが目を覚ましたら婚約誓約書にサインをしましょう。…その前に娘を部屋に運んでもらってもいいかな?」
どうやらあの時に願った事はこれから叶えられそうだ。
『お母さん』としてではなく君の横に立つ夫として。
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親切から出た言葉だとしても『どんな思考回路しとんじゃ??』と思いましたがそんなオチが❣️
良いね良いね(*>ω<*)b
不器用だけど心根の優しいシルヴィス素敵です♥️
そんなシルヴィスを弄って応援してる周りの方々も良い味出してますw
アトリア、幸せになってね〜(❁´ω`❁).。.:*♡
可愛いお話を読ませて頂きまして有難う御座いました(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°
きっとアトリアも、ドン引き…いや、戸惑いながらも斜め48度な愛情を沢山もらい幸せになると思います!
感想ありがとうございました(*^^*)
騎士様サイコーです(笑)凄く素敵な物語をありがとうございます😊
感想ありがとう御座います!
まっすぐにおかしい騎士様な話になるよう当事頑張ってたと思うのでとても嬉しいです(*^^*)
文章も今読み直すととっ散らかってましたのにありがとうございました🙇
ほっこりして、楽しくって、可愛くって
、大好きです*
素敵なお話をありがとうございます
そう言っていただけてとても嬉しいです(*^^*)
ちょっとした暇潰しになったのなら幸いです!
感想ありがとうございました!