AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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終わりのための旅

終わりのための決意

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夢を見た。


まだこの世界に異変が起きる前。
俺はスーツを着て、働いていた。
毎朝の通勤と数字に追われる日々。
疲労とプレッシャーに追われながらも、生きている実感があった。

「やばい、、遅刻だ、、!」

はっと目を開ける。
寝坊したと思った。

だが、そこにあるのは見慣れた光景。

薄暗い部屋。
ホコリを被った机。
そして天井から垂れるロープ。

俺は小さく息を吐いた。
呆れのような、悲しみのような。
もう出勤する会社も、取引先も存在しない。

目を開けたまま天井を見つめる。
この先どうするか、考えれば考えるほどマイナスな感情になる。

一旦、昨日の出来事が夢でないことを確かめる必要がある。
重たい体を起こし、住処を出る。


昨日の場所へ向かった。

いた。
やつらは、やはり倒れたままだった。
夢ではなかった。

その光景を前に、ある感情が胸の中で弾けた。
やつらに奪われた人生、家族、友人、そして人間らしい未来。
全部失った。いや奪われた。
こいつらが俺を地獄に閉じ込めたのだ。

怒りが込み上げる。
倒れているやつらを思いっきり踏みつけた。
それでは足りず、まるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。

足が止まらない。
何度も、何度も。
乾いた骨が砕ける音が響く。

やがて息が切れ、膝に手をついた。
冷静さが戻り、散らばった残骸を見つめる。
荒い呼吸。
俺はその場で立ち尽くした。

本来ならここで泣くのであろう。
やつらに奪われたものを思えば、当たり前だ。
けれど俺は泣けなかった。
この地獄が俺を麻痺させているのかもしれない。


辺りを見渡す。
やつらの群れがただ倒れている。
その中で俺は一人きりだ。
やつらに怯える必要がなくなった代わりに、孤独だけが重くのしかかる。
俺は何に向かって生きていけばいいのか。

立ち尽くしたまま、自分の影を見下ろしていた。

頭の中でいろいろと考えてみた。
生存者を探すか。安全な拠点で生活を続けるか。
けれどどの選択もしっくりこない。

生存者がいたとして、どうするのだ?
食料を集めて、一人で何十年も生きていくのか?
そもそも生き延びて何になる。

そして、自然と一つの答えが浮かぶ。


いっそ、死んでしまおうか。


不思議とその選択に暗さはなかった。
むしろどこか軽やかだった。
笑いそうになる。
自分がここまで追い詰められているとは。

その選択を選ぶことにした。

だが、ここでは死なない。
あのホコリが舞う場所で、最後を迎えるのは納得ができなかった。
そもそも、ゆかりもない場所だ。

だったら。
家に帰ろう。

そこにはもう誰もいないと分かったいる。
けれど、せめて最後はあの場所で。
思い出が染み付いたあの家で、全てを終えるなら。

ようやく、道が見えた。

ここでこの話の結末は決まった。
俺は家に帰り、そこで死ぬ。
もう揺るがない。

死に向かう旅路が始まるのに、不思議と気持ちは前向きだった。
終わりが見えたことで、これまでの空虚な日々よりずっと楽になった。

最後の居場所に帰る。
それが俺の旅だ。

満足した俺は、その場でボーっと遠くを眺めた。
時間がゆっくりと流れていく。
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