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終わりのための旅
遭遇
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道のりは順調だった。
自分のペースで死へと進む。
それでも「目標に向かって歩いている」という事実が、奇妙な満足感を与えていた。
足を前に出すたびに、少しづつ終わりに近づいている。
動かないやつらに意識的に警戒するようにする。
万が一を考えてだ。
だが、どれも引き続き動かない。完全な死体だ。
警戒心がだんだん緩んでいくのを自覚していた。
何もないだろうと。
――っと思った矢先だった。
目の前に、突然一人の少女が飛び出してきた。
突然過ぎて意識は追いついていないが、この地獄で身についた警戒心は強制的に体を反応させた。
やつらと遭遇したときに染み付いた記憶が、勝手に応戦の構えを取らせた。
本当に人間の少女なのか?!?!
だが、よく見ると普通の少女だ。
普通の――多分、生きた人間の少女だった。
久しぶりの人間。
多分、心の何処かで待ちわびていた存在。
だが、いきなり過ぎて感情が追いつかない。
それと一つ、気になることがあった。
少女の腕に、、、噛み傷に見える傷があった。
嫌な予感がした。
「助けてください!!」
その叫びに、体がビクッと驚いた。
だがすぐに押し殺す。
焦りを子供に悟られるわけにはいかない。
なんとか心を落ち着かせて少女に訪ねた。
「、、、先に、その腕の傷が何か教えてくれないか?」
「なぜかはわかるよね?」
少女はバツが悪そうに黙り込んだ。
視線を落とし、唇を噛み締め、震える肩を小刻みに揺らしている。
この沈黙が、さらに不安を膨らませた。
やがて、途切れそうな声で、
「噛まれました」
か細い声は、風にさらわれそうに弱かった。
「変わってしまったパパに、、」
震える声。
絞り出すような言葉。
予想はしていた。
だが、本当に最悪だと感じた。
ここまで順調に、平和に進んできたのに。
何が最悪かって?
それは、俺がこの少女を「終わらせなければならない」ことだ。
重すぎる。
だが、俺が生きるためだ。
今までも、そんな場面は何度もあった。
最低な話だが、相手が大人ならまだ迷いはない。
だが、相手は子供だ。
心臓の奥に冷たいものを感じた。
「正直に話してくれてありがとう」
俺は冷静を装った。
「ちなみに、、いつ噛まれたんだ?」
やつらに噛まれると、長くても三十分。
その後は、やつらの仲間になりこちらを襲ってくる。
だが、
「三日前です」
少女は答えた。
声を震わせ、目には涙を浮かべながら。必死に立っている。
――三日前?
そんなはずはない。おかしい。
三日間も持つはずはない。
「嘘はやめてくれないか?」
俺は思わず声を荒らげた。
少女は俯いたまま、小さな肩を震わせた。
口調が強かったのは、少女を責めたからではない。
ただ、真実を聞きたかった。
死にたくない一心で、咄嗟に嘘をついたのかもしれない。
そう思うと、責める声の裏で、どこかやるせなさが渦を巻いていた。
混乱する思考の中で、ふと背筋が凍りついた。
噛み傷を追った少女が目の前にいるということは、やつらが近くにいるではないか。
三十分前に噛まれていて、それを隠しているのだとしたら?
そうなると、この近くにやつらがいることになる。
最悪の可能性に気づいた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
頭が真っ白になる。
この状況に脳の処理が追いつかない。
どう判断して、動けばいいのか。
さっきまで呑気に地図を広げて、進路を考えていた自分が馬鹿みたいに思えた。
甘すぎた。
困惑する俺に、少女が必死な声を張り上げる。
「嘘じゃないです!本当です、、、!」
震えながらも、精一杯の力だった。
だがその言葉を受け止める余裕はなかった。
ここに立っていることが危険かもしれないのに、体は固まり動くことができない。
――いきなり、やつらに首元を噛みつかれるかもしれない。
想像した瞬間、背筋が凍る。
だが、恐怖が足を縛る。
やつらに変わる可能性がある少女が目の前にいること。
やつらが周りにいる可能性も高い。
逃げたいけど、足が動かない。
その時、まるでフラグが立っていたかのように背後に気配を感じた。
全身の毛穴が総立ちになる。
悪寒が背筋を駆け上がった。
これからやつらに変わるであろう少女と、背後の“何か”――。
最悪の挟み撃ちだ。
自分のペースで死へと進む。
それでも「目標に向かって歩いている」という事実が、奇妙な満足感を与えていた。
足を前に出すたびに、少しづつ終わりに近づいている。
動かないやつらに意識的に警戒するようにする。
万が一を考えてだ。
だが、どれも引き続き動かない。完全な死体だ。
警戒心がだんだん緩んでいくのを自覚していた。
何もないだろうと。
――っと思った矢先だった。
目の前に、突然一人の少女が飛び出してきた。
突然過ぎて意識は追いついていないが、この地獄で身についた警戒心は強制的に体を反応させた。
やつらと遭遇したときに染み付いた記憶が、勝手に応戦の構えを取らせた。
本当に人間の少女なのか?!?!
だが、よく見ると普通の少女だ。
普通の――多分、生きた人間の少女だった。
久しぶりの人間。
多分、心の何処かで待ちわびていた存在。
だが、いきなり過ぎて感情が追いつかない。
それと一つ、気になることがあった。
少女の腕に、、、噛み傷に見える傷があった。
嫌な予感がした。
「助けてください!!」
その叫びに、体がビクッと驚いた。
だがすぐに押し殺す。
焦りを子供に悟られるわけにはいかない。
なんとか心を落ち着かせて少女に訪ねた。
「、、、先に、その腕の傷が何か教えてくれないか?」
「なぜかはわかるよね?」
少女はバツが悪そうに黙り込んだ。
視線を落とし、唇を噛み締め、震える肩を小刻みに揺らしている。
この沈黙が、さらに不安を膨らませた。
やがて、途切れそうな声で、
「噛まれました」
か細い声は、風にさらわれそうに弱かった。
「変わってしまったパパに、、」
震える声。
絞り出すような言葉。
予想はしていた。
だが、本当に最悪だと感じた。
ここまで順調に、平和に進んできたのに。
何が最悪かって?
それは、俺がこの少女を「終わらせなければならない」ことだ。
重すぎる。
だが、俺が生きるためだ。
今までも、そんな場面は何度もあった。
最低な話だが、相手が大人ならまだ迷いはない。
だが、相手は子供だ。
心臓の奥に冷たいものを感じた。
「正直に話してくれてありがとう」
俺は冷静を装った。
「ちなみに、、いつ噛まれたんだ?」
やつらに噛まれると、長くても三十分。
その後は、やつらの仲間になりこちらを襲ってくる。
だが、
「三日前です」
少女は答えた。
声を震わせ、目には涙を浮かべながら。必死に立っている。
――三日前?
そんなはずはない。おかしい。
三日間も持つはずはない。
「嘘はやめてくれないか?」
俺は思わず声を荒らげた。
少女は俯いたまま、小さな肩を震わせた。
口調が強かったのは、少女を責めたからではない。
ただ、真実を聞きたかった。
死にたくない一心で、咄嗟に嘘をついたのかもしれない。
そう思うと、責める声の裏で、どこかやるせなさが渦を巻いていた。
混乱する思考の中で、ふと背筋が凍りついた。
噛み傷を追った少女が目の前にいるということは、やつらが近くにいるではないか。
三十分前に噛まれていて、それを隠しているのだとしたら?
そうなると、この近くにやつらがいることになる。
最悪の可能性に気づいた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
頭が真っ白になる。
この状況に脳の処理が追いつかない。
どう判断して、動けばいいのか。
さっきまで呑気に地図を広げて、進路を考えていた自分が馬鹿みたいに思えた。
甘すぎた。
困惑する俺に、少女が必死な声を張り上げる。
「嘘じゃないです!本当です、、、!」
震えながらも、精一杯の力だった。
だがその言葉を受け止める余裕はなかった。
ここに立っていることが危険かもしれないのに、体は固まり動くことができない。
――いきなり、やつらに首元を噛みつかれるかもしれない。
想像した瞬間、背筋が凍る。
だが、恐怖が足を縛る。
やつらに変わる可能性がある少女が目の前にいること。
やつらが周りにいる可能性も高い。
逃げたいけど、足が動かない。
その時、まるでフラグが立っていたかのように背後に気配を感じた。
全身の毛穴が総立ちになる。
悪寒が背筋を駆け上がった。
これからやつらに変わるであろう少女と、背後の“何か”――。
最悪の挟み撃ちだ。
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