AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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終わりのための旅

剛と鋭

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こんな大男に殴られたら、ただじゃ済まない。
自衛隊の男の時より、間違いなく悲惨だろう。
体格も、筋力も桁違い。
誤解を解かないと、本当に終わる。

「違います」

俺は声を荒げないように言った。
ここで冷静を失えば、相手は逆上するだろう。

「この少女は私の連れです」

「襲ったりなんか、していません」

トーンを落として話した。
心臓はバクバクと脈打っている。

大男は、鬼の形相のまま黙り込んだ。

やがて、視線を下げ少女を見る。

「、、、、そうなのか?」

さっきまでの怒鳴り声ではない。
だが、低く重たい声だった。

少女はまだ圧倒されている。
それでも、なんとか頷いた。

それを見て、大男は再びこちらを向いた。
視線が鋭く刺さる。

沈黙。
空気が重い。

「なら、証拠を出せ!!!」

さっきと同じ、腹の底から叩きつけるような大声。
街中に響き渡る。

「そ、そんな、、、、証拠なんて、、、」

言葉に詰まる。頭の中が真っ白になる。

大男が歯を食いしばり、こちらに向かって歩き出す。
その一歩一歩で、地面が揺れるように感じる。

「ちょっと、待て、、、」

そう言いかけた、その時――


「待たんか! デカブツ!!」

急な怒声が、大男の背後から叩きつけられる。
聞き覚えのある声。

大男の背後に、銀色が光る。

老人だ。
刀を抜き、こちらに向かってくる。
あの優しくて穏やかな老人の面影はない。
こちらも鬼の形相。

「その二人を、どうする気だ?」

刃先がゆっくりと、大男を指す。
大男が急な老人の登場に、少し表情を変えた。

だが、

「ご老体、殺気が漏れていますよ?」

大男は、ニヤリと笑い、老人の方を向いた。

「若造が……」

「舐めた口を聞きよって……」

老人は、さっきと変わらない足取りで距離を詰める。
刀は低く構えられ、大男との間合いを測っている。

まずい。
このままだと完全に無意味な争いが始まる。
どうすれば、、、。


その時、

「だめ!!!」

甲高い声が響く。
少女が二人の間に飛び出したのだった。
涙で顔はグシャグシャ、足はブルブルと震えている。
だが必死に両腕を広げて立っている。

「お嬢ちゃん! 危ないから下がっていなさい!!」

老人が、焦った声で叫ぶ。

「少女よ!
  今助けるから、退いていなさい!!」

今度は大男が、同じように声を上げる。

二人の視線が少女に集まる。


俺は妙に冷静な気持ちになってしまった。
自分を俯瞰したのだ。

――ああ、俺、ダサすぎるな。

老人と大男。
二人の圧に完全に呑まれ、足が動かないのに。
声も出ない。
それなのに。

こんなにも幼い少女が、震えながらも二人を止めようとしている。

情けない。
恥ずかしい。

少女を助けようとしている大男。
俺達、二人を助けようとしている老人。
誤解を解くために、二人を止めようとしている少女。
自分の保身のため、動けない俺。

俺だけだ。
自分のための選択をしているのは。
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