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繋がる気持ち3

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「なによ、急に」 
「いいじゃん、教えてよ。後学のためにもさ」
「後学のためって言われてもね。ないわよ、ノンケの友達なんて。そんな面倒なの好きになっても意味ないじゃない。好きになる前にアタシから一線を置くわ」
「そうだよなぁ、やっぱり」
「……ちょっとあんた。まさかノンケで、しかも友達に惚れて、更にフラれたの? 王子様系が好きってだけでも馬鹿なのに、一体どんだけ馬鹿なのよ」
「うるせー、バカバカ言い過ぎ。……別にさー、王子様だと思ってたやつにフラれたのはどうでもいいんだよ。問題はその後」
「その後ってなによ」
「本当に一番の友達だと思ってたやつに、実はマジ惚れしちゃってた」
 ヒロは大袈裟にため息を吐く。
「あんたって救いようのないくらい馬鹿なのね……」
 救いようのない馬鹿というのはなかなかに堪える言葉だ。だが慶はそれを否定はしない。自分でもそう思っているからだ。
 兵藤が好きだという気持ちに気がついた。だがそれを兵藤には伝えることができない。伝えて、気持ちを拒まれたらもう友達ではいられないからだ。
 兵藤なら一度肉体関係を結んだ責任だと、受け入れてくれるかもしれないが、それは望んではいなかった。責任だから恋人になるのではなく、好きだから恋人になって欲しい。兵藤にも幸せになってもらいたかった。
「世の中の恋人同士ってマジですごいよな。こんな葛藤を乗り越えて、色んな覚悟をして告白して、それで受け入れられなきゃいけないんだから」
 慶は今までそんなこと考えたこともなかった。フラれても、数日後には笑って話しかけられるような、簡単な恋しかした事がなかった。兵藤が初めてだ。失うのが怖いと思ってしまうほど、相手に焦がれた恋は。ある意味、これが本当の初恋かもしれない。
 慶の深刻な様子に、ヒロはやれやれと肩をすくめる。
「本当にお馬鹿だけど、まあ良い経験にはなったんじゃない? 運命の王子様がどうのこうの言ってる時より、よっぽど良い顔してるわよ。今のアンタ」
「……さっきはブスって言ったくせに」
「変なとこ根に持ってんじゃないわよ」
 ヒロの軽口に、気分が少し軽くなる。
 兵藤への気持ちをどうするか、それはまだ決めていない。伝えるか、伝えまいか。簡単に決められる問題ではなかった。
 兵藤のことを好きになって後悔する気持ちと、好きになってよかったと思う気持ちが混ざり合い、それは簡単に表現できない。だがこの気持ちを諦めるのも大事にするのも、大切な事だと慶は思う。なんらかの形で自分の中で落ち着くまでは、静かに恋の炎を燃やすだろう。
「ヒロちゃん、なんかありがと。話してちょっとは気が晴れた」
「あらそう? お代は安くしとくわよ」
 ちゃめっ気たっぷりにそう言ったヒロに、慶は学生にたかるなよと返す。やっぱりここに来て良かったと、慶がグラスを傾けたときだった。
「あらやだ、私好みの良い男が来たわ!」
 ヒロの声がワントーン上がる。そのはしゃぎようにどんな男が来たのかと、視線を辿ると、見知った姿に驚いた慶は、口に含んだアルコールを盛大に噴き出した。
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