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思い出の庭園
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フォルカが離宮へ訪れて以来、荒れた庭はゆっくりとだが着実に、その姿を変えようとしていた。
使用人の中には、庭が手入れされ始めたことに喜ぶものもいたが、アダマスにとっては王や宰相に、良き思い出が蹂躙されているのと同じようなものだった。
仕方がないことだと頭では理解していても、心はそれを受け入れようとはしない。
次第にアダマスは自室に引きこもるようになっていく。
カーテンを閉め切り、外の世界を完全に遮断したアダマスは、日に日に憔悴していった。
これにはさすがの使用人も見かねようだ。
秋晴れのある日、アダマスは使用人の手によって外へ連れ出された。
「お部屋のお掃除をさせていただく間にと思いまして、東屋にお茶をご用意いたしました。お屋敷の空気だけではお体にも障りましょう。外の空気は爽やかでございますよ」
そう言った使用人の顔には、いつもの張り付いた笑顔だけでなく、アダマスを気遣うような色も含まれている。
その些細な変化に、アダマスは申し出を断ることが出来なかった。
よりにもよって庭を見渡すことの出来る東屋か、とアダマスは浅い息を吐く。外は晴れやかだというのに、アダマスの心は曇ったままだ。
浮かない顔で東屋の席についたアダマスは、ベルガモットの香りが立ち昇る紅茶を揺らしながら、ぼんやりと庭を眺めた。
アダマスの視線の先では、なにやらフォルカが作業をしている。
庭師というのは見た目以上に重労働な仕事だ。夏は灼熱の太陽に照らされ、冬は凍るような寒さの中で作業をしなくてはならない。力仕事も多く、腰を痛める庭師も多くいるという。また、草木で肌を切ることもあり、生傷の耐えない職業でもあった。
空は高く、すがすがしい風が吹いているにも関わらず、フォルカは先程から何度も汗を拭う仕草をしている。アダマスが感じている気温と、フォルカが感じている気温はそれだけの違いがあった。
離宮につかわされた庭師はフォルカ一人だ。いくら規模の小さな庭園とはいえ、一人で手入れをするのは骨が折れるだろう。ましてや手付かずで荒れ果てていた庭なのだ。フォルカの苦労はそれだけで充分うかがえる。
アダマスは溜め息を吐きながら、目を伏せた。
フォルカの苦労を分かりながら、離宮の主としてねぎらいの言葉もかけられない自分が疎ましい。フォルカは命じられたとおりの仕事をしているだけであり、心を苦しめているのはフォルカに命じた宰相のはずなのに。
分かっている。分かってはいるのだ。だがそれを受け止めるにはまだ時間が足りなかった。
使用人の中には、庭が手入れされ始めたことに喜ぶものもいたが、アダマスにとっては王や宰相に、良き思い出が蹂躙されているのと同じようなものだった。
仕方がないことだと頭では理解していても、心はそれを受け入れようとはしない。
次第にアダマスは自室に引きこもるようになっていく。
カーテンを閉め切り、外の世界を完全に遮断したアダマスは、日に日に憔悴していった。
これにはさすがの使用人も見かねようだ。
秋晴れのある日、アダマスは使用人の手によって外へ連れ出された。
「お部屋のお掃除をさせていただく間にと思いまして、東屋にお茶をご用意いたしました。お屋敷の空気だけではお体にも障りましょう。外の空気は爽やかでございますよ」
そう言った使用人の顔には、いつもの張り付いた笑顔だけでなく、アダマスを気遣うような色も含まれている。
その些細な変化に、アダマスは申し出を断ることが出来なかった。
よりにもよって庭を見渡すことの出来る東屋か、とアダマスは浅い息を吐く。外は晴れやかだというのに、アダマスの心は曇ったままだ。
浮かない顔で東屋の席についたアダマスは、ベルガモットの香りが立ち昇る紅茶を揺らしながら、ぼんやりと庭を眺めた。
アダマスの視線の先では、なにやらフォルカが作業をしている。
庭師というのは見た目以上に重労働な仕事だ。夏は灼熱の太陽に照らされ、冬は凍るような寒さの中で作業をしなくてはならない。力仕事も多く、腰を痛める庭師も多くいるという。また、草木で肌を切ることもあり、生傷の耐えない職業でもあった。
空は高く、すがすがしい風が吹いているにも関わらず、フォルカは先程から何度も汗を拭う仕草をしている。アダマスが感じている気温と、フォルカが感じている気温はそれだけの違いがあった。
離宮につかわされた庭師はフォルカ一人だ。いくら規模の小さな庭園とはいえ、一人で手入れをするのは骨が折れるだろう。ましてや手付かずで荒れ果てていた庭なのだ。フォルカの苦労はそれだけで充分うかがえる。
アダマスは溜め息を吐きながら、目を伏せた。
フォルカの苦労を分かりながら、離宮の主としてねぎらいの言葉もかけられない自分が疎ましい。フォルカは命じられたとおりの仕事をしているだけであり、心を苦しめているのはフォルカに命じた宰相のはずなのに。
分かっている。分かってはいるのだ。だがそれを受け止めるにはまだ時間が足りなかった。
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