宇宙漂流した星軍下士官は魔法と魔物が存在する辺境惑星で建国を目指す!

生名 成 (いきな せい)

文字の大きさ
51 / 61

領都グリーンウッドの政策方針

しおりを挟む
 領都に幾つもある巨大なメディカルセンターでは医療用のナノマシンが大活躍していた。医療ポッドに入った病人はすぐに完治したが、栄養不足の者が多かったので入院して点滴を受けることになった。
 四肢の欠損までも再生するナノマシンにより、自分の体を取り戻した人々の歓声がセンター内に響いていた。

「俺の足が再生した。奇跡だ」
「長年治らなかった病気が完治したわ。信じられない」
「ご領主様のおかげだ。ありがたや」
「俺の指も動くようになった。ここに来て良かった」
「家もくれると言うし、ご領主様は神様みたいなお人だ」


 人々は、奇跡だと喜び、奇跡を与えてくれたレンヌ伯爵を神と称えた。
   更に、治療を終えた人々は住居に案内された後、その地区にある食材や衣服の無料配給センターに向かった。
 配給センター内では、音声ガイダンスが無料配給の説明をしていた。そのあと、それぞれの地区の集会場に集められて、職業斡旋所や学校教育に関する説明を受けた。

 子供のための学校教育は領民の義務とされ、怠ると領民の資格を失うこともあると注意があった。学校と病院は無償で活用できる。それでも生活が苦しい者は、役場に申請すれば支援が行われると説明を受ける。



 魔石と魔物の素材が売れる事を知ったレンヌは、エルフを指揮官にしてロボット部隊を多数作った。そして、ロワール王国に点在する『魔物の森』で狩りをさせようと思った。

   レンヌはギルマスのゴランに相談した。
「領都運営のために魔物狩りで資金を捻出しようと思うんだけど?」
「ああ、あれだけ無料政策を出したら、そりゃあ資金も不足するわな」
「新しい領地には必要な事なんだ」
「それは理解している。ただ、魔物を狩るのは推奨するが、程度をわきまえろよ」
「程度と言われても初めてやるので、どのくらい狩っていいのか分からん」
「お前のことだから国中で狩りをするつもりなんだろう?」

 レンヌは驚いてゴランに聞き返した。
「どうして分かった?」
「やっぱりか。困った奴だ」
「ギルマスは人の心が読めるのか?」
「ああ、読めるぞ。単純馬鹿限定だがな」
   レンヌは心当たりがあるので反論を控える。

「ギルドの支部一つにつき持ち込む魔物は百体までだ。それ以上持ち込むと、解体場の主任が怒り狂う」
「分かった。数には配慮する」
「それから、魔石と魔物の素材を傷つけるよ。価値が大きく下がるからな」
「忠告ありがとう」

   魔石と素材を傷付けないように、基本武器はパラライザーガンという麻痺銃を使う事に決めた。ゴランの忠告通りに魔物の討伐数と売る場所は、アルテミス1が調整する。
 
 更にレンヌには構想があった。グリーンウッドからトリニスタンに通じる街道の間に街を造り、周囲を開拓して耕作地を作ろうと思っていた。それは、将来的な食料の確保を一つの目的としていたが、街道の安全を図るという目的もあった。
 それだけでは、20万人の領民を養えないので、グリーンウッドに近い白壁山脈の麓の森を開拓する予定だ。開拓地は自分の領土にして良い、との許可はブロッケン宰相から既に貰っている。

 前もってロワール王国と国内の貴族領から食料を買い付けていたが、思ったよりも移住者の集まりが早かったので食料不足が懸念された。そのため、レンヌは緊急で食料の調達が必要になった。それで、リール王国とミュウレ帝国からも食料の買い付けを行う必要がでた。

だが、それは一領主が勝手には出来るものではない。そのための許可を国に貰う必要があった。レンヌはブロッケン宰相と謁見をするために王都に向かう。出発前に、アイシス伯爵に連絡して宰相の謁見予約を取ってもらった。

 アイシス邸に一泊する予定だったので、今回は評判が良かったケーキを持参した。
「艦長、お世話になっているアイシス伯爵家の家人の方たちの分も用意したので、忘れずに持っていってください」
「おお!   アルテミス1、気がきくな。そこまで頭が回らなかった。助かったよ」
「いいえ、どういたしまして」
   
いつも通りにアイシス伯爵邸の前庭に着陸すると、玄関前にアイシス伯爵夫妻と多くの家人が並んでいた。

  レンヌが先に降りて、そのあとを宙に浮いた運搬台がいくつも続く。運搬台の上には白い紙箱が見えた。
「きゃあああ!  きっと、あれがそうよ」
「楽しみだわあ」
「お前たち、はしたないぞ」
 と注意しようとしたアイシスは、隣で唾を飲み込む妻を見てため息をついた。
「はあ。アイリーン、お前もか!」



 王城で宰相と謁見して両国に行く許可を貰い、その上で領地名と家名の届けを出す。
「レンヌ伯爵、両国への先触れは王国から出しておく。日程は先ほど打ち合わせた通りだ」
「宰相閣下、ありがとうございます」と礼を言ってレンヌは王城を出た。

 城を出てすぐに、レンヌはアルテミス1に命令を出した。
「ミュウレ帝国とリール王国に偵察用の小型ドローンを放て、至急に結果が欲しいので出来るだけ多くのドローンを使ってくれ」
「艦長、調査目的をお願いします」
「両国と交易をする必要が出来たので、交易に使える情報が欲しい。特に、塩や農作物と特産品についてだ。市場の動向も調べてくれ」
「了解しました。小型ドローンの製造許可をください」
「許可する」

 領民の募集をしてから五日が経ち、ひとまずは移住希望者の申込みも落ちつきをみせた。
その間にレンヌはアニエスとイネスの二人と話し合っていた。領都の中央付近に地上800メートルのタワーがある。最上階の下が司令官室で、最上階全部がレンヌの居住空間だ。レンヌの自慢は360℃パノラマ展望風呂だ。タワーの一番上にあるので、ワイバーン以外には覗かれる心配も無い。

「それじゃあ、結婚式は別々がいいと言うんだな?」
 大きな胸を隠そうともせずに、下半身だけを浴槽に沈めたアニエスが言う。
「ええ、イネスとも相談しましたが、面倒でも別々にしたいのです」
「面倒だということは無いが、エルフ族も二度集まることになるが」

 浴槽の縁に腰を掛け、クビレた腰と長い足を晒したイネスが笑いながら言った。
「それが、皆の狙いなのですよ。レンヌ殿、ふふふ」
「狙い?」
「結婚式を二度行えば、レンヌ様が教えてくださったウェディングケーキが、二回食べられるではないですか」
「ウェディングケーキを二回食べるために結婚式を二度するというのか」
 レンヌは開いたままの口を閉じてから言う。
「ところで、二人とも。婚約したというのに殿や様はおかしくないか? 貴方とか旦那様とでも呼ぶかい?」
「それは……」と言って、アニエスは大きな胸を隠さずに、両手で顔を隠した。
 イネスは浴槽に体を入れて、真っ赤になった顔を横に向ける。

『長命なエルフ族は恥じらいというものが薄いのです。ですから、レンヌ様。羞恥心が無いとは思わずにご容赦ください』と言っていた最長老のネメシスの言葉をレンヌは思い出した。それでも、ときおり恥じらう姿を見せるのでレンヌは思わず、からかいたくなるのだ。

 ネメシスが言うことに、確かに思い当たる節がある。それは、さっきの出来事。
 レンヌが展望風呂に入っているとアニエスとイネスがとつぜん入ってきた。いきなり全裸で現れた二人は、私たちもご一緒させてくださいと言って俺に許可を求めた。そのような状況で断るほどの余裕がレンヌにはなかった。レンヌは『にごり湯の入浴剤』を浴槽に投げ入れて、慌てて湯の中に入り下半身を隠した。いかにレンヌがヘタレと言っても、極めて美しい二人の全裸を見て興奮しない訳がないのだ。

「結婚式の主役はアニエスとイネスなのだから、二人の言う通りにしよう」
 とレンヌは言った。二人は大喜びでレンヌに飛びついた。レンヌの左肩は巨大な谷間に埋まり、右肩には柔らかい感触が押し付けられた。レンヌは浴槽から出る事が叶わずにノボセて意識を手放した。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...