桃子と睦月

ぱや

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後輩の菊野ちゃん

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 月に一度のお仕置きを開始して半年たった。
 睦月はいい子なので、お仕置きの日と言っているけれど、お仕置きは一番最初と先々月の二回だけ。
 それ以外はご褒美の日になっている。果たしてご褒美になっているのかはわからないけど。
 睦月はキスと体を触ってほしいしか言わない。一応私もちょっと体勢を変えたり、触り方を変えたりはしてる。おもちゃも使ってないし、メスイキもさせてない。おもちゃは私の部屋の段ボールの中でほとんど眠っている。
 睦月に手で奉仕して終わる。
 先々月は私のお気に入りのティーカップを割ってしまったのを睦月は隠した。
 わざと割ったわけではないということはわかるが、すぐに言って、謝ってもらえば許したのだけれど、言わずに隠したのでお仕置きをした。
 どんなお仕置きかというと、メスイキさせたのだ。私もちょっと確認したいことがあったので丁度良かった。睦月は、耳、首、胸、乳首、おなかでイクことができる。かなり調教されているようだ。
 なんだか腑に落ちないし、見知らぬ誰かに怒りすら沸く。
 二十回ぐらいメスイキさせてから、睦月の亀頭部分におもちゃを装着して三回ほど出させた。
 あんあん喘ぐ睦月はすごくかわいかった。あの時は私もヤバかった。理性が。
 ……わかる、やりすぎたって思ってる。私にはSの一面もあったんだなって思ってる。むしろ認める。
 数日間、睦月がちょっと辛そうだった。いや、でも、お尻の方は使わなかったから。お尻を使わなかったからセーフというわけでもないんだけどさ。

 合体することはない。睦月が言わない限りは私から招き入れるなんて事はしない。
 そもそも睦月から触ってくることはない。相変わらず、手をつなぐ以上のスキンシップはない。キスも睦月に言われてから、私の方からする。
 睦月と同じぐらいのサイズのおもちゃで自分を慰めてますけど。
 自社のおもちゃは気持ちいいですよ。


 世間はハロウィンで大騒ぎだ。今年も渋谷はすごいことになりそうだ。
 うちの会社もハロウィンの時は忙しい。
 ほら、ハロウィンというお祭り騒ぎに乗じてグッツを出せば売れるから。
 忙しさも下火になってきたときに、後輩の菊野ちゃんから飲みに誘われた。
 ハロウィンの一週間前にはそこそこ私たちの忙しさは下火になるのだ。
 ネット販売組は駆け込み需要で大忙しだけど。その忙しさは、事務的には来月に忙しさが来る。
 なので、今のちょっと余裕がある期間は重要だったりする。
 柏木さんにも声をかけたら、柏木さんも一緒に行ってくれるという。

 睦月にメールを打とうとして、電話をした。
 今日は飲みに行くので夕飯がいらないこと、遅くなりそうだから先に寝てていいこと、明日は休みだということを伝えて電話を切る。
 菊野ちゃんは菊野ちゃんで誰かと電話をしていたようだ。
 三人で、居酒屋へ向かう。
 職場でもよく使う居酒屋だ。
 個室が空いているというので、個室の方に通してもらった。
 菊野ちゃんは荷物が多い。いったい何をそんなにバッグに入れてるのかってぐらい大きな荷物を持っている。
 それなので、柏木さんと私が隣に座り、テーブルをはさんで菊野ちゃんが一人で座った。

 初めの一杯を飲み、食事をしつつ、おつまみも頼みつつ、他愛のない話をしてほろ酔いになってきたところで、菊野ちゃんが「聞いてくださいよ~!!」と話し出した。
 菊野ちゃんは三年後輩だけど、年齢的には六歳違う。
 がっつり取引先の中根さんの愚痴だった。
 その取引先の人は女子社員の間でかなり評判が悪い。
 菊野ちゃんは若いだけで何のとりえもないとか馬鹿にされたようだ。
 私も年増扱いされ、結婚しないのが何たらとか言われた。
 柏木さんは整理止まったんじゃない?とか最低なことを言われたそうだ。
 二時間ぐらい中根さんの愚痴で盛り上がった。
 その後は話がだんだんそれていき、菊野ちゃんの彼氏の話になった。

 菊野ちゃんの彼氏は二歳年上のM男。
 菊野ちゃんはショートボブのかわいらしい女の子なのだが、夜は女王様になるらしい。見た目ではわからないものだな……。
 彼氏の写真も見せてくれた。ちゃんと隠すところは隠している。かくしているのだけれど、完全にアウトだと思う。人に見せちゃダメなやつだと思った。
 拘束されていると言えばわかるだろうか……。

 少し話の流れを変えるため、柏木さんも旦那さんのことを話し出し、子供のことも話し出した。上の子供は高校生で、下の子供は小学生。高校生の息子さんは思春期真っただ中。
 やはりエロ本はベッドの下に隠すらしい。
 笑っちゃダメなんだろうけど、笑ってしまった。 

「安藤さんは彼氏いないんですか?」

 菊野ちゃんにそういわれて、手が止まる。
 睦月は彼氏ではない。

「彼氏はいないよ」
「えー?そうなんですか?おかしいなぁ」

 その言い方が何か含みのある感じだった。
 ちなみに、睦月のことは柏木さんには言ってある。

「ん?何がおかしいの?」
「えっとですね、社内で話を聞いたんですけど、安藤さんは男を飼ってるって」
「は!?」
「何でも言うことを聞く男を飼って、毎晩、指で、口で奉仕させてるって聞きました」
「はぁああ!?」

 柏木さんは声を出さないものの、飲んでいた飲み物を吹き出し、自分で拭いていた。

「え、ちょっと誰よそれ言ったの!!」
「西村さんと東藤さんです」

 名前を聞いて、「あー…」と柏木さんと声をハモらせた。
 西村さんと東藤さんは煙あるところでも、ないところでも火を立たせる。
 噂話が大好きで、マウントを取るのが大好きで、言ってることの半分以上はでたらめの情報だ。たまに本当のことも紛れているけれど。
 あまり好きになれない人たちだけど、仕事はそれなりにできるし、それなりにわきまえてはいる。おしゃべり以外は。

「あれ、これも嘘だったんですか?」
「も?」
「佐藤先輩がズラとか」
「確かにズラっぽいけど、ズラじゃないんだよねー」
「表崎さんがオネェだとか」
「その疑惑は一瞬あったけど、西村さんと東藤さんが煙を立たせたのか…」
「あと、めちゃくちゃ強く言ってたのは、蒼さんが女の人と親密にしてて、キスしてるところを見たって」
「蒼さんは柚木さん以外眼中にないのに?」
「そうですよねー。でも、西村さんが見たっていうんですよ」
「蒼君が女の人とキスしてるところを?」

 思わず、柏木さんも会話に加わった。

「はい。しかもディープキス」
「え~~~、それはないない」
「それはないわね」

 社内で見てればわかるほど、蒼さんと柚木君はラブラブだ。
 さすがにこれはすぐに嘘だと思った。確かにその話を聞いた後だと、私の件は本当のように聞こえるだろう。

 しかし、しかしである。私と睦月の関係ってなんなんだろう……。
 うーんと悩んでしまった。

「まぁ、一緒に住んでいる人はいるよ」

 柏木さんにはいろいろ相談に乗ってもらっていた。菊野ちゃんに話すのかどうか一瞬迷ったけど、菊野ちゃんは口が堅い子だ。そして信頼できる子だ。
 いろいろなことを端折って睦月のことを話した。
 私が時々有給で休む理由も納得していた。

「ってことは、西村さんと東藤さんが話していたこともあながち間違いじゃなかったんですね?」
「んー……扶養家族がいるってことは隠してないからね。そこから想像を膨らませたんじゃない?」
「でもさー、トーコちゃん的には睦月君のことありなの?」
「ありだね」

 何がデモなのかわからないが、柏木さんに言われて即答した。

「でも、睦月が私をどうに思っているのかわからないのよねー」
「エッチしたのに?」
「したけどさ」
「したんですか!?」

 菊野ちゃんが食いついてきたので、睦月が過去に色々あったようで病んでいることとかをサラッと告げる。さらに、月に一回私が睦月に奉仕している問うことも話す。
 確実にお酒が回っているので、口が滑りやすくなってしまっているようだ。

「なるほどー、確かに、エッチって一緒にいるーって思えるし、相手の体温を感じるから安心するのかもしれませんねぇー」

 うんうん、と頷き、ハッと何かを思いついたようにごそごそと自分の荷物をあさる。
 そして、もこもこしたもの差し出してきた。

「これとこれ!どっちか上げます!まだ未使用ですし!!」
「え、何これ?」

 襟巻のようにもこもこしていて、肌触りがいい。そのもこもこの片側に箱がくっついている。

「毛の色が一部混ざってしまったみたいで商品として販売できないやつです」

 確かに茶色のもこもこの中に一部黒いものとかが混じっている。

「二つあるけど、どう違うの?」
「こっちは丸いのがいっぱいついてて太くて、こっちは振動します」
「……えーと……菊野ちゃん、これなに?」
「え?アナルプラグですよ?」
「はぁ!?」

 サラッとアナルプラグを差し出す菊野ちゃん、恐ろしい子!
 もふもふについている箱が長い方は奥まで入れられて、丸がいっぱい連なっているらしい。もう一つはその二分の一ぐらいの長さで、バイブ機能付き。
「初心者におすすめは、バイブの方です!」と、なんかキラキラした顔で言われたので、おすすめの方を手に取る。何の初心者だろうか。
 隣で柏木さんが爆笑してて、柏木さんも、「それなら私も未使用のもの上げるわ」と透明な袋に入っているレースをバックから取り出した。
 一つを私に、もう一つを菊野ちゃんに。
 男性用のレースの下着だそうだ。菊野ちゃんはめちゃくちゃ喜んでた。
 お返しに、と柏木さんにもう一つしっぽをバッグから取り出し差し出していた。そのバッグの中に尻尾はいくつ入っているのだろうか……。
 そもそも、二人とも何で持ってるのよ。

 その後は職場の話をしたり、新しくできたスイーツのお店の話とかいろんなところに話が飛んだりして、終電前には解散になった。
 みんなかなりお酒を飲んで、かなり酔っ払った。
 家に帰ると睦月が出迎えてくれたところまでは覚えている。

 気が付くと朝だった。
 頭がガンガンして気持ち悪い。二日酔いだ。
 しかも、スーツのまま寝てしまったのでスーツがしわしわ。
 午前中の私は使い物にならなかった。午後になってから復活した。

 睦月に「帰ってきたときのこと覚えてる?」と聞かれたので、素直に「覚えてない」と答える。
 何を言ったのか、やったのか恐る恐る聞いてみると、「来週、お仕置きの日にしようねって約束した」と返してきたので安心した。
 特に変なことをしたりやったりしたのかと一瞬焦ってしまった。
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