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第1章 はじまりの準備
8 アデルの決意
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―――なんだかユラユラと揺れている気がする―――
ティアラが僅かに感じる振動にぼんやりと目を開くと、馬車の中でアデルにお姫様抱っこされていた。
「……アデルお兄様?私……」
「ああ、ティアラ、目が覚めたか?体調はどうだ?」
「ん、んんん、はい、どこも痛くないし、大丈夫!」
「そっか、良かった」
ほっと息をついてにっこり笑うと、今度は心配そうに顔をのぞき込んでくる。
「魔力切れを起こして倒れたんだ。シスターたちには孤児院で休んでいくように勧められたんだが、ティアラが街を見たがっていたからそのまま連れてきてしまった」
「アデルお兄様ありがとう。色んなところを見て回りたかったから、その方がうれしい。あの子たち、少しは元気になったかなぁ」
「ああ、みんな、綺麗に傷が癒されていた。見ているだけでもつらかったからな。シスターたちが感謝していたよ。子供たちだけじゃない。一緒にいた騎士のアーサーや、カイルも、昔負った怪我まで癒えたといって驚いていたぞ」
「ふふっ、そっか、うまくできて良かった」
「なぁ、ティアラ……」
「なぁに?アデルお兄様」
「ティアラはいつからあんな魔法が使えるようになったんだ?」
アデルはまじめな顔で話しかけくる。普段とは違う深刻な態度に戸惑いつつ、ティアラはこてんと首を傾げた。
「回復魔法は前から使えたよ?」
「あれはただの回復魔法じゃないよな?虹色に輝く魔力なんて初めてみた。通常の回復魔法は聖属性を持っている。感じる魔力は白だ。以前のティアラが回復魔法を使ったときもそうだった。」
(そう言えばそうだったかも。手のひらがちょっと光るぐらいだったけど)
―――虹色の魔力は全属性持ちの証し。
「ティアラには、人にはない、何か特別な力があるのかも知れないな……」
「アデルお兄様?」
アデルは苦しげに息を吐く。
「ティアラは今まで珍しい聖属性魔法が使えたが、その力はあまり強くなかった。負ったばかりのかすり傷が治せる程度だ。だから、その力を過度に期待されることもなかった」
「うん」
「でも、強い回復魔法が使えると分かれば、これから先その力を望まれることも増えるだろう」
「そうかも」
強い魔力は王族たるものの証し。強力な魔力をもって生まれたからには国のために働かなくてはならない。それは王族に生まれたものの義務だ。
「ティアラ、俺はティアラには普通の女の子のように幸せになってほしい。国同士の戦争や魔物との闘いに巻き込みたくないんだ」
「アデルお兄様……」
「ティアラはずっと俺たちが守るから。だから……」
「アデルお兄様、心配してくれてありがとう」
「ティアラ……」
「でもね、私、この力に目覚めて良かったと思ってる。目の前に苦しんでる人がいたら見ないふりはしたくないもん」
「……わかった。このことは父上や兄貴にも報告する」
「アデルお兄様……。心配してくれたのに、ごめんね」
「いつまでも小さいままだと思ってたがティアラも立派なレディになったな!えらいぞ!」
突然ギュッと抱き締められて、頭をがしがしと撫でられる。
「ちょっ。お兄様やめて!髪の毛がぐしゃぐしゃになったらアンナに怒られちゃうっ!それに、そろそろ下ろして!ひとりで座れるから!」
―――何があっても俺が、俺達が守ってやるからな。
アデルはこれからさき起こるであろう事態を予感し、決意を新たにしていた。
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