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第1章 はじまりの準備
10 過保護なひとたち
しおりを挟む本当は実際に街を歩いて、街の様子を詳しく見てまわりたかったのだけど、魔力切れを起こして倒れてしまったこともあり、結局馬車で軽く街を一巡りして城に戻ることになった。
何度も大丈夫だと言っているのに、アデルは隙あらば膝に乗せようとしてくるので、困ってしまう。
「アデル兄様はちょっと過保護すぎ!」…
「兄貴よりはましだと思うぞ」
「うっ、そ、そういう問題じゃないもん!」
「兄貴にとって妹ってもんはとにかく可愛いもんなんだ。仕方ないな」
「むうー……」
アデルの過保護ぶりに納得のいかないティアラだったが、城に帰ると、今度は真っ青な顔をしたカミールが待ちかまえていた。挨拶をする暇もなく、有無を言わさず抱え上げられるとベッドに連れて行かれる。
「ティアラ、ティアラ……」
ティアラの手をギュッと握り締め、肩を小さく震わせている。
「わ、わ、わ、カミールお兄様?私もう大丈夫……」
ティアラが慌てて起きあがろうとすると、
「大丈夫なもんかっ!マルク、すぐにティアラをみてやってくれ!」
「かしこまりました。姫様、さぁ口を開けて」
宮廷医であるマルクは小柄な白髪のお爺ちゃんで、まだ小さな頃、しょっちゅう熱を出していたティアラは何度もお世話になっている。
カミールのあまりの勢いにティアラは逆らうのを止め、大人しく口を開けた。
「熱はなし、呼吸も脈も正常。うん、喉も心の蔵も異常ありませんな。姫様、気分が悪かったり、頭が痛くなったりしていませんか?」
「はい、マルク先生。大丈夫です」
「体に異常はないようですな」
「そうか……」
カミールはホッと息をつくとティアラの頭を優しく撫でる。
「アデルからティアラが倒れたと聞いて、心臓が止まるかと思った。あまり、心配させないでおくれ」
「カミールお兄様……心配かけてごめんなさい」
「昼食がまだだろう?今日の昼食は部屋に運ばせよう。体をしっかり休ませるんだ」
「はい」
「僕はまだ仕事があるからついていてやれないが、落ち着いたらまた見舞いにくるから。それまで大人しくしてるんだよ」
カミールはティアラに向かって微笑むとメイドに食事の指示を与え、アンナを残して部屋を出て行った。忙しいカミールに心配させてしまって申し訳なく思う。
「姫様、私も心配いたしましたよ!孤児院でいったいなにがあったのですか?」
アンナも心配そうに眉をひそめている。朝は元気すぎるぐらい元気だったので無理もない。
「う、うーん、あのね、ちょっと魔法を使いすぎちゃって。孤児院で怪我をしている子がいたから、治してあげたかったの」
「そうだったんですか……」
アンナは優しく目を細めると素早くティアラを着替えさせ、ベッドを整えて暖かいココアを入れてくれる。
「姫様、民のために力を尽くすことは王族の勤め。アンナは姫様のなさったこと、誇りに思います」
「アンナ……ありがとう」
日頃厳しいアンナの思いがけず優しい言葉に思わずうるっとくる。
「しかし!姫様自身のお体も大切にしなければなりません!自己管理ができてこそ民のために尽くせるというもの。しばらくは外出禁止です!」
「あ、アンナ~~~!」
「カミール様のお許しが出るまでは絶対に認めません!」
(そ、そんなのいつになるかわかんないよー!!!)
がっくりするティアラだった。
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