王女様は聖女様?いいえ、実は女神です(こっそり)~転生王女は可愛いもふもふと愛するドラゴンを守るため最強の仲間と一緒に冒険の旅に出る~

しましまにゃんこ

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第3章 おてんば姫の冒険録

8 快適で安全な空の旅

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 ◇◇◇

「姫様、道中お気をつけて。旅の間皆様の元を離れず、決して危ないことには首を突っ込まないで下さいね」

 およそ冒険者にかける言葉とも思えないが、アンナの表情は真剣そのものだ。

 王妃も心配そうな顔で隣に立つアデルに詰め寄っている。

「ねえ、アデル……本当にティアラも連れていかなくちゃダメなのかしら……他の人じゃダメなの?女の子なのに心配だわ。道中はきちんと宿を取ってね。野宿なんて絶対ダメよ」

 ――― 「ティアラ姫が国外のクエストを受注する」というカミールからの報告を受け、城内は大騒ぎになった。

 特に王妃とアンナは、話を聞くなり口を揃えて反対の意思を示した。カミールが「ちょっとした旅行がてら、アデル達と一緒に他国の様子を見に行くだけ」と言葉巧みに説得したが、心から納得はしていないようだ。

 すぐにでも出発するというティアラ達を無理矢理引き止めたせいで、城中の人間が見送りに出てくる事態となってしまった。

「ティアラ、何か困ったことがあったら通信用の魔道具で連絡をするといい。父がすぐに迎えにいってやるからな」

 父王も心配を隠せないようで、なんなら今すぐにでもついてきそうな勢いである。16歳になっても、末娘を溺愛する両親は相変わらず過保護だった。

  他国の情勢調査とは名ばかりで、実際は戦争を止めるためアリステア王国の最終破壊兵器であるドラゴンに会いに行く、と言ったら腰を抜かすのではないか。

 そうした不安から、カミールやアデルには前世のことを話したものの、王と王妃には秘密にすることにしたのだ。

「お父様、お母様、アンナも心配しないで。私、これでもAランク冒険者なのよ?」

 ティアラは明るく微笑んでみせるが、三人の顔は晴れない。あーでもない、こうでもないと道中の心配を始める様子にティアラが困っていると、カミールが助け舟を出してくれる。

「大丈夫ですよ、アデルには十分路銀を渡していますから。エリック殿にジャイル殿、ミハエル殿の実力は私が保証します。しっかりものの爺もついてますしね」

 カミールの言葉に、王妃も渋々引き下がる。

「そう、そうね。皆さん、娘をよろしくお願い致します。ティアラ、怖くなったらいつでも帰ってらっしゃい。あなたが城を出るなんて初めてね。お母様、寂しいわ……」

 今にも泣き出しそうな王妃にセバスがドンっと胸を叩いて見せる。

「王妃さま、姫様のことはこのじいが命に代えてもお守り致します。ご心配めさるな。なぁに、まだまだ若いもんには遅れはとりませんぞっ!」

「まぁ!そうね、じい、ティアラをよろしくね」

 セバスの頼もしい言葉にようやく王妃も笑顔を見せた。

「さぁ、父上も母上も。そろそろ出発しないと夜になってしまいますよ」

 カミールに促され、王と王妃もようやく飛竜から離れて距離を取る。

 ―――飛竜に乗るのはティアラにとって初めての経験だ。アリシア王国は海に囲まれているため、飛竜は古くから飛行用の乗り物として重用されている。繁殖が難しく大変希少なため、主に王族が国外に出る際に使用されることが多い。

「これがアリシア王国の飛竜か、すげぇな」

「本当に。大人しいね。賢くていいこだ」

 ジャイルとミハエルは飛竜の背中に器用に飛び乗ると、思ったより安定感のあるその乗り心地に感動していた。

「草食で大人しいが落ちないようにしっかり捕まってろよ」

 ティアラとエリックも飛竜に乗り込み、その乗り心地を確かめる。飛竜の背中は思ったよりも柔らかく、馬に乗るのに似ている。乗馬ができる人間なら難なく乗りこなせるらしい。

「旅の間よろしくね」

 飛竜達は大人しく皆を背に乗せると、アデルの合図と共に一斉に飛び立った。

 飛竜の上でティアラは見送りに出てきてくれた城のみんなに思いっきり手を振る。

「みんな!行ってきます!」

「アデル!ティアラを頼むぞ!」

「爺!あまり無理をするでないぞ」

 一気に高度を上げるとアデルを先頭に陣形を組んだまま飛ぶようだ。

「よく躾られていますね」

 エリックの言葉にアデルも笑顔で答える。

「ああ。全ての飛竜は卵から養育係が大切に育てているからな」

「風が気持ちいいわ。それに凄いスピード」

 実際かなりのスピードで飛行しているのだが、流石にAランク冒険者と言うべきか。皆涼しい顔をしている。

「だろう?船旅も悪くないが、飛竜だと小回りがきくうえに時間も大幅に短縮できるからな。俺やカミールが国外に行くときは、たいてい飛竜を使っている。この調子なら、アリステア王国まで一週間もあれば届くだろう」

「まずはどこへ向かうの?今アリステアに直接向かうのは危険かしら」

「そうだな。一旦ノイエ王国に降りて街の様子をみたい。エリックとティアラが政治利用されかねないから、今回公式訪問はなしだ。ジャイルとミハエルは久しぶりの帰国なのに悪いな」

「遊びじゃねぇんだから分かってるよ、師匠。今帰ると俺らも身動き取れなくなるからな」

「ノイエ王国に入ったら僕たちは目立たないように姿を変え、なるべく大人しくしています」

「ああ、そうしてくれると助かる。二人とも頼りにしてるぞ」

「ああ」

「お任せください」

 こうして一行は、ノイエ王国に向かって旅立った。
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