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第3章 おてんば姫の冒険録

15 チートな魔力を有効活用?

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 ♢♢♢

 地割れの修復と岩の撤去はアデルが残していったビッグゴーレム達に任せ、ティアラ達は湖周辺の整備を始めた。

 まず、エリックとティアラが手分けして森の浄化に取り掛かる。広大な森全体の浄化は時間をかけないと難しいが、せめて水場となる湖周辺だけでも浄化しておかないと、またすぐにモンスターが発生しかねない。

「これでよし。でも、中途半端に焼け落ちた木が邪魔だよね。どうしよっか」

「ん。僕達に任せて。ジャイル、頼んだよ」

「おう」

 焼け落ちた木をミハエルが風魔法でスパスパと切り刻むと、ジャイルの炎魔法であっと言う間に灰に変えていく。見事な連携プレーだ。

「セバス、灰はそのままおいといても肥料になるんだろ?」

 ジャイルの言葉にセバスは大きく頷く。

「森の恵みですな」

「木の燃えカス……こったらものが肥料になるんだべか?」

 ジャイルの言葉にトムが首を傾げた。村でも見よう見まねで畑を作っているが、街から逃げてきた獣人の多くは農業の知識が少なく、収穫量も多くない。村での食料問題に毎回頭を悩ませていたのだ。

「そうですな。森が育つときの養分としてこのまま置いておくもよし。痩せた土に混ぜて使えば、野菜がよく育つでしょうな。他にも、落葉が腐って出来た土なんかも栄養を沢山含んでいて、野菜作りにはピッタリですじゃ」

「ふぉぉぉぉ!勉強になるだっ!早速村の皆に教えてやるだっ!」

 これで畑の収穫量が増えれば、村の暮らしが楽になるかもしれない。しかも、

「トム、薪や木炭を燃料として使いたいならついでに作っておくけど?」

 続くミハエルの言葉にトムはますます目を輝かせる。トムの住んでいる村では、煮炊きするにも部屋を暖めるにも、薪や木炭が欠かせない。しかし、薪や木炭を作るのは中々の重労働だ。男手が少ない今、何より嬉しい提案だった。

「ええだかっ!?ぜひおねげーしますだっ!」

 ちょっとずうずうしいかなと思いながら、ティアラ達の好意をありがたく受けとることにしたトム。

「村の皆が喜ぶだっ!なんて、なんてお礼をいったらええか……」

 だーっと嬉し涙を流すトムに、ティアラ達が張り切ったのは言うまでもない。

 ♢♢♢

「よしっ!こんなもんかな?」

 ごろごろと転がっていた岩が跡形もなく消え、余分な木が撤去されると、湖の周りは見違えるほど綺麗になった。

「でも、このままだと少し寂しいよね。そうだっ!湖の周りに美味しい実のなる果樹とか植えたらどうかな?可愛いお花畑とかも作って!」

 名案!とばかりにティアラがキラキラとした目を向けると、ミハエルが思案顔で頷く。

「森の大部分が焼け落ちてるから、再生までは時間が掛かりそうだよね。村に当面の食料は置いていくとして、果樹や野菜、穀物の苗なんかがあるといいかも。あと、薬草もね。ティアラ、持ってる?」

「うん!沢山持ってきてるよ!」

「ちょっとまて、今は魔物の姿も見えないが、これだけ森に瘴気が満ちてればそのうち発生するだろう。餌目当てに水場の周りに強力な魔物が寄ってきたら厄介だぞ」

「そっか……アデルお兄様のゴーレムも、アデルお兄様の魔力が尽きるとそのうち止まっちゃうしな……そうだっ!」

 ティアラはマジックバッグから大きな袋を取り出すと、「えいっ」と地面におく。そこから取り出してみたのは、キラキラと光る手のひらサイズの虹色の石。

「これは……魔石か?」

「そう。ミハエルに魔石を貰ってから、自分でもちょこちょこ作ってたの。誕生日とかに皆に上げてるのはアクセサリーに加工して効果まで付与してあるけど、これはまだなんの付与もしていないから、色々使えるよ」

「毎年俺たちに贈るもの以外にまだこんなに作ってたのか……これ全部魔石なのか。いくつあるんだ、これ……」

 無造作に取り出した大きい袋にパンパンに詰められた魔石を見てメンバー全員が息を飲む。

「んー?数えたことないけど、毎日魔力が尽きるまで作るようにしてたから、結構あるかも」

「マジか……俺もある程度作るようにしてるが、そんなにごろごろ作れねーぞ」

「数もそうですが……私でもこのサイズの魔石を作るのは無理ですね」

「アクセサリーに加工するならあんまり大きくても邪魔になるけど、これは使い道とか考えずに作ってるから大きくなっちゃって」

 照れ照れと照れ笑いを漏らすティアラを呆れた目で眺めるメンバー達。魔石は魔力の結晶。論理的には魔力があるものなら誰でも産み出せるが、一生かかっても小指の先程の魔石も産み出せない魔法使いだっているのだ。それこそ魔物のように、死んでから始めて魔石を残すものもいる。

 それぐらい、魔石には膨大な魔力が込められている。特に全属性を持つティアラの魔石は国宝級の価値があるものだ。この魔石ひとつでも手に入れられるなら、全財産を投げ出しても、いや、国すら投げ出しても欲しいと思う王族もいるだろう。

 下手すれば、国同士の戦争にも発展しそうなほど、希少な魔石……それがまるで石ころのように無造作に袋いっぱいに詰められてるのだから、メンバー達が呆れるのも無理はない。

「これに魔法を付与してゴーレムに村や水場を守らせたらどうかな?」

「はぁ……お前、この魔石がどんだけ価値があるものか分かってんのか。いや、いい。お前はそういう奴だよな」

 ジャイルの言葉にきょとんと目を丸くするティアラ。そんなティアラに、ミハエルとセバス、エリックも苦笑いを隠さない。

「これだからティアラは放って置けないんだよね」

「姫様の世間知らずが爺も心配ですじゃ」

「私もさすがにここまでとは思いませんでした」

「な、何よー!私だって分かってるわよ!だからこうして自分で保管して、普段市場にでまわらないようにしてるんでしょっ!」

「絶対出すんじゃねーぞ?」

「どうしても使いたいときは僕達に相談すること。約束して?あと、アデル様とカミーユ様にも。それから……」

「わーかーりーまーしーたー!」

「ほんっとうに分かってんのかっ?ああん?お前には一回世の中の常識を叩き込む必要があるなっ!」

「えー、お説教は後にしてよ」

 キャーキャーと逃げ回るティアラと追いかけるジャイル達。じゃれあう三人の姿を、ちょっぴり羨ましく思ってしまうエリックだった。
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