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第3章 おてんば姫の冒険録
33 女神の祝福
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♢♢♢
「国の代表者か……大役だな」
「よし!ここは俺に任せとけっ!みんな俺についてこいっ!」
「ばぁか、お前なんかについていったら、あっという間に国が潰れちまわぁ」
「違いねぇ!」
ああでもない、こうでもないと代表者選びに頭を悩ませる冒険者たち。だが、一つ気になることがあった。
「アリステア王国の貴族がくる前に、ギルドマスターだった者たちは今どうしてるんだ?」
エスドラドは共和制だったため、各ギルドから代表者を選出して議会を開催していた。ギルドマスターたちはまさしく国の代表だ。彼らにまかせられるなら話は早い。
だが、アデルの言葉に、冒険者たちの顔が曇った。
「あいつらは駄目だ。ぼんくら揃いだからな。国の代表者なんて名ばかりで、単なるアリステア王国のイエスマンだ。大方国を売り渡す書類にもホイホイとサインしたんだろうぜ」
アリステア王国の属国になった当時から、選出されるメンバーのほとんどがアリステア王国の息が掛かった人物だったらしい。そうなると、アリステア王国と断絶するための新政府の代表者には相応しくない。
「だとしたら、この国で今一番動けるのは、冒険者ギルドとここにいる冒険者たちだ。取り敢えずここにいるメンバーが一時的に代表者になったあと、今度は公正に国民投票をして代表者を決めればいい」
「国民投票……なるほど」
アデルの言葉に冒険者たちが頷く。と、そこで一人の冒険者が声をあげた。
「なぁ、俺たちの中から代表者を選ぶなら、ギルドマスターがなるべきじゃねえか?」
「おお!そうだな!マスターなら問題ないぜっ!」
そうだそうだと盛り上がる冒険者たち。
「ま、待って下さいっ!」
「マリーちゃん?」
「父は、監獄生活で身体を壊してしまって、今動けるような状態じゃないんです……」
マリーの言葉に息を呑む冒険者たち。他のギルドマスターたちがさっさと国とポストを受け渡した中、最後まで抵抗したのも彼だ。
「親父さん、そんなに悪いのか?渡したポーションはどうした?」
アデルの言葉に、マリーはふるふると首を横に振る。
「何度も飲むように頼んだんですが、『これは、現役で戦う冒険者たちのものだ。俺なんかのために1本も無駄にすんじゃねぇ』って頑として受け取ろうとしないんです」
涙ぐむマリーの言葉に、アデルはティアラを振り返る。
「ティアラ、頼めるか」
ティアラは大きく頷いた。
「マリーさん、私をお父様のところに案内して貰える?」
♢♢♢
冒険者ギルドの二階に通されたティアラは息を飲んだ。
(これは、拷問の痕ね……酷いことを)
熟練の冒険者らしい逞しい体は、長期間の拘束と栄養不良、過酷な拷問ですっかり弱っていた。力なくベッドで横たわっている姿が痛々しい。
「辛いでしょうに……どうしてポーションを飲まなかったんですか?」
ティアラの問いかけにギルドマスターはうっすらと目を開ける。
「あんたは……誰だ……」
「アリシア王国の冒険者です」
「あ、あんたたちが……ポーションを分けてくれたって人たちか……礼を言う。どれだけ感謝しても足りねぇ。国中で、ポーションが不足してんだ。こんな老いぼれには過ぎたもんだ」
ティアラはギルドマスターの手をしっかり握る。
「獣人たちを、最後まで守ろうとしてくれたと聞きました。こちらこそお礼を言いたい」
「獣人?なんであんたが……ああ、アリシア王国は、獣人を大切にする国だって言ってたな……当たり前だ。ここは元々あいつらの国なんだから。出ていけってんなら、そりゃ俺たちのほうさ……」
ギルドマスターの言葉にティアラはにっこり微笑んだ。
「いいえ。貴方ならきっと、人間と獣人がお互いに尊重しあえる国を作れるはずです。だからお願い、私たちに力を貸して下さい」
握った手の先から虹色の光が溢れる。
「これは……」
「あなたに、女神の祝福を」
「国の代表者か……大役だな」
「よし!ここは俺に任せとけっ!みんな俺についてこいっ!」
「ばぁか、お前なんかについていったら、あっという間に国が潰れちまわぁ」
「違いねぇ!」
ああでもない、こうでもないと代表者選びに頭を悩ませる冒険者たち。だが、一つ気になることがあった。
「アリステア王国の貴族がくる前に、ギルドマスターだった者たちは今どうしてるんだ?」
エスドラドは共和制だったため、各ギルドから代表者を選出して議会を開催していた。ギルドマスターたちはまさしく国の代表だ。彼らにまかせられるなら話は早い。
だが、アデルの言葉に、冒険者たちの顔が曇った。
「あいつらは駄目だ。ぼんくら揃いだからな。国の代表者なんて名ばかりで、単なるアリステア王国のイエスマンだ。大方国を売り渡す書類にもホイホイとサインしたんだろうぜ」
アリステア王国の属国になった当時から、選出されるメンバーのほとんどがアリステア王国の息が掛かった人物だったらしい。そうなると、アリステア王国と断絶するための新政府の代表者には相応しくない。
「だとしたら、この国で今一番動けるのは、冒険者ギルドとここにいる冒険者たちだ。取り敢えずここにいるメンバーが一時的に代表者になったあと、今度は公正に国民投票をして代表者を決めればいい」
「国民投票……なるほど」
アデルの言葉に冒険者たちが頷く。と、そこで一人の冒険者が声をあげた。
「なぁ、俺たちの中から代表者を選ぶなら、ギルドマスターがなるべきじゃねえか?」
「おお!そうだな!マスターなら問題ないぜっ!」
そうだそうだと盛り上がる冒険者たち。
「ま、待って下さいっ!」
「マリーちゃん?」
「父は、監獄生活で身体を壊してしまって、今動けるような状態じゃないんです……」
マリーの言葉に息を呑む冒険者たち。他のギルドマスターたちがさっさと国とポストを受け渡した中、最後まで抵抗したのも彼だ。
「親父さん、そんなに悪いのか?渡したポーションはどうした?」
アデルの言葉に、マリーはふるふると首を横に振る。
「何度も飲むように頼んだんですが、『これは、現役で戦う冒険者たちのものだ。俺なんかのために1本も無駄にすんじゃねぇ』って頑として受け取ろうとしないんです」
涙ぐむマリーの言葉に、アデルはティアラを振り返る。
「ティアラ、頼めるか」
ティアラは大きく頷いた。
「マリーさん、私をお父様のところに案内して貰える?」
♢♢♢
冒険者ギルドの二階に通されたティアラは息を飲んだ。
(これは、拷問の痕ね……酷いことを)
熟練の冒険者らしい逞しい体は、長期間の拘束と栄養不良、過酷な拷問ですっかり弱っていた。力なくベッドで横たわっている姿が痛々しい。
「辛いでしょうに……どうしてポーションを飲まなかったんですか?」
ティアラの問いかけにギルドマスターはうっすらと目を開ける。
「あんたは……誰だ……」
「アリシア王国の冒険者です」
「あ、あんたたちが……ポーションを分けてくれたって人たちか……礼を言う。どれだけ感謝しても足りねぇ。国中で、ポーションが不足してんだ。こんな老いぼれには過ぎたもんだ」
ティアラはギルドマスターの手をしっかり握る。
「獣人たちを、最後まで守ろうとしてくれたと聞きました。こちらこそお礼を言いたい」
「獣人?なんであんたが……ああ、アリシア王国は、獣人を大切にする国だって言ってたな……当たり前だ。ここは元々あいつらの国なんだから。出ていけってんなら、そりゃ俺たちのほうさ……」
ギルドマスターの言葉にティアラはにっこり微笑んだ。
「いいえ。貴方ならきっと、人間と獣人がお互いに尊重しあえる国を作れるはずです。だからお願い、私たちに力を貸して下さい」
握った手の先から虹色の光が溢れる。
「これは……」
「あなたに、女神の祝福を」
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