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第3章 おてんば姫の冒険録

40 可愛い王妃様

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 ♢♢♢

「きゃあ!なんて可愛らしいのかしら!」

 淡いピンクとレースで統一された可愛らしい部屋で、ティアラは途方に暮れていた。侍女たちによって次々と運び込まれるドレスや宝石が、キラキラとティアラを彩っていく。

「うふふ。やっぱり女の子はいいわね。次はこっちのドレスを着てみて。あ、宝石はティアラちゃんの清楚さを引き立てるパールがいいわ。キャシー、パールのセットを持ってきてくれる?」

「はい、王妃様」

「あ、アメジストとダイヤのセットもお願いね。きっとティアラちゃんに似合うわ……」

 うっとりと夢見るように呟くのは、ノイエ王国王妃……ジャイルとミハエルの母君だった。

「あ、あの、王妃様!私、こんなことをしていただくわけには……」

 ノイエ王国に着いてすぐ、ジャイルとミハエルの計らいにより、内密に王宮に招き入れられたティアラ一行。しかし、一人だけ別室に呼ばれたと思ったら、拒否する間もなく着せ替えごっこが始まり、ティアラは焦っていた。

「嫌だわ、王妃様だなんて。リアナって呼んでちょうだい」

「リアナ様、私も国王陛下に大切なお話が……」

 ティアラの言葉にリアナ王妃は途端に肩を落として目を伏せる。

「そう、そうよね。突然あれこれ押し付けられて迷惑よね……ごめんなさい。私ったら一人で浮かれちゃって」

 目に見えてシュンとするリアナ王妃にティアラは慌ててしまう。

「い、いえいえ!とんでもないです!こんなに歓迎していただき、本当に嬉しいです!」

「……本当に?」

「本当です!」

 力強く頷くティアラに、リアナ王妃はパァーと顔を輝かせる。

「良かった!私、ずっとティアラちゃんに逢いたいって思ってたのよ。なんといっても、うちの息子たちのハートを射止めたお嬢さんだもの。きっととても素敵なお姫様だと思ってたの。でも、想像以上だったわ!本当に可愛くて嬉しくって!」

「え、え~と。その……」

「あ、息子たちのことは気にしなくていいのよ。二人が揃ってティアラちゃんにお熱なのは知ってるけど、ちっとも進展してないんでしょ?ふふ。あの子達もまだまだね。私、恋は強制されてするものじゃないと思ってるの。結婚するなら本当に心から愛する人じゃなきゃね」

 お茶目に片目をつぶって見せるリアナ王妃にホッとする。ティアラは二人の王子から求婚されていながら、未だにどちらとも正式な婚約を結んでいない。ノイエ王国にしてみれば、随分失礼な態度だと思う。

 実のところ、誰とも結婚する意志がないティアラは、父王に願い、他国からの婚約の申し出を一切断っていた。それは、エリック、ジャイル、ミハエルとて例外ではない。

 だが、それでも三人はティアラの側を離れようとはしなかった。婚約の申し込みは一旦保留にして、パーティーの一員として残ることを選んだのだ。

 そのことに、ティアラとて何も思わないわけではない。立場のある三人を、結婚の意志がない自分の側に長く留めておくことは、どんなに傲慢なことか。分かってはいるのだ。

(でも、きっともうすぐ終わるから……今は、自分のやるべきことをやらなきゃ!)

 ティアラが決意を新たにしてる間にも、どんどん運び込まれる煌びやかなドレスや宝石たち。

(と、取りあえず誰か助けて~~~)
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