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第3章 おてんば姫の冒険録
42 王妃様の悪戯
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♢♢♢
魔物の異常発生に教会が関与しているかもしれない。エリックの発言によって誰もがその可能性に考えを巡らせ、重々しい空気が流れていた。
そこに、ようやくティアラの支度が済んだと声が掛かる。
「ん。そう言えばティアラ、母上に捕まってたんだよな。ワリィ……」
言いかけたジャイルは、王妃を伴って現れたティアラに、息を呑んだ。
普段は軽く1本に結んだ髪を美しく結い上げてパールを散らし、レースをふんだんに使った淡いピンクのドレスに身を包んだティアラ。胸元と耳を飾るのは、髪飾りと同じ上品なパールで、ティアラの持つ清楚な美しさをより引き立てていた。
「ほう。さすが姫様。こうしていると王妃様のお若い頃を思い出しますな」
「ティアラ、そのドレスとても似合ってる。美しいよ」
スラスラと褒め言葉を並べるセバスとエリックに、ティアラははにかんだような微笑みを浮かべる。
「リアナ様にこちらの伝統的なドレスを着せて頂いたの。似合うかな」
ミハエルはすぐさま立ち上がり、ティアラのエスコートをかって出る。
「うん、完璧。そんなに完璧に着こなしちゃったら、この国の令嬢たちが皆嫉妬しちゃうよ?」
「ミハエルったら、相変わらず口が上手いんだから」
楽しそうに微笑むティアラとミハエル。
「ジャイル?」
ただ一人、ポカンと口を開けたままのジャイルに、ティアラは首を傾げる。
「どうしたの?」
「な!何でもないっ!」
慌てたように目をそらすジャイルを見て、リアナ王妃は悪戯が成功した少女のようににんまりと笑みを洩らす。二人を不思議そうに見比べるティアラだったが、突然アデルに手を取られた。
「ティ、ティアラ……」
「なあに?アデルお兄様」
「お、お前……ついに嫁に行く決意を固めたのかっ!」
「……はぁ?」
「う、うう。それも俺に何も相談せずに……お兄ちゃんは悲しい……」
「ごめんなさいお兄様。ちょっとなに言ってるか分からないわ」
「だ、だってそれ、その衣裳」
ティアラのドレスを震える指で指差すアデル。
「この国の花嫁衣裳じゃないかっ!」
途端にシーンと静まり返る応接室。
「えへへ。ばれちゃった♪」
テヘッと舌を出す王妃を困ったように見つめるノイエ国王。
「すまん、ティアラ姫。王妃の悪ふざけが過ぎたようだ。昔から娘が欲しいと言う願いを叶えてやれなかったため、若いお嬢さんを見ると飾り立てるのが趣味でな。でも、お前、花嫁衣裳はさすがにやりすぎだぞ?ティアラ姫が困ってるじゃないか」
「えー、だってせっかく我が国の伝統を取り入れた新作のウェディングドレスが出来たところだったから、ティアラちゃんにモデルになって貰おうと思って。ジャイルとミハエルも、大好きなティアラちゃんの花嫁姿、見たいでしょ?」
ギギギ、っと音がしそうなくらいぎこちない動きでジャイルを見ると、口を手で覆ったまま、首まで真っ赤に染めている。
「母上のセンス、最高だね!ティアラに凄く良く似合ってるよ」
「ありがとうミハエル!さすがミハエルは私に似てセンスがあるわ!」
聞けばリアナ王妃はノイエ王国のファッションリーダー兼、ドレスや宝飾品のデザイナーとしても有名な人らしい。彼女のデザインしたドレスは国内ばかりでなく国外でも大人気で、各国の王公貴族からオファーが絶えないそう。
「モデルになってくれたお礼にそのドレスはプレゼントするわ!ねっ!」
リアナ王妃の屈託の無い笑顔を前に、もはや何も言う気力の無いティアラだった。
魔物の異常発生に教会が関与しているかもしれない。エリックの発言によって誰もがその可能性に考えを巡らせ、重々しい空気が流れていた。
そこに、ようやくティアラの支度が済んだと声が掛かる。
「ん。そう言えばティアラ、母上に捕まってたんだよな。ワリィ……」
言いかけたジャイルは、王妃を伴って現れたティアラに、息を呑んだ。
普段は軽く1本に結んだ髪を美しく結い上げてパールを散らし、レースをふんだんに使った淡いピンクのドレスに身を包んだティアラ。胸元と耳を飾るのは、髪飾りと同じ上品なパールで、ティアラの持つ清楚な美しさをより引き立てていた。
「ほう。さすが姫様。こうしていると王妃様のお若い頃を思い出しますな」
「ティアラ、そのドレスとても似合ってる。美しいよ」
スラスラと褒め言葉を並べるセバスとエリックに、ティアラははにかんだような微笑みを浮かべる。
「リアナ様にこちらの伝統的なドレスを着せて頂いたの。似合うかな」
ミハエルはすぐさま立ち上がり、ティアラのエスコートをかって出る。
「うん、完璧。そんなに完璧に着こなしちゃったら、この国の令嬢たちが皆嫉妬しちゃうよ?」
「ミハエルったら、相変わらず口が上手いんだから」
楽しそうに微笑むティアラとミハエル。
「ジャイル?」
ただ一人、ポカンと口を開けたままのジャイルに、ティアラは首を傾げる。
「どうしたの?」
「な!何でもないっ!」
慌てたように目をそらすジャイルを見て、リアナ王妃は悪戯が成功した少女のようににんまりと笑みを洩らす。二人を不思議そうに見比べるティアラだったが、突然アデルに手を取られた。
「ティ、ティアラ……」
「なあに?アデルお兄様」
「お、お前……ついに嫁に行く決意を固めたのかっ!」
「……はぁ?」
「う、うう。それも俺に何も相談せずに……お兄ちゃんは悲しい……」
「ごめんなさいお兄様。ちょっとなに言ってるか分からないわ」
「だ、だってそれ、その衣裳」
ティアラのドレスを震える指で指差すアデル。
「この国の花嫁衣裳じゃないかっ!」
途端にシーンと静まり返る応接室。
「えへへ。ばれちゃった♪」
テヘッと舌を出す王妃を困ったように見つめるノイエ国王。
「すまん、ティアラ姫。王妃の悪ふざけが過ぎたようだ。昔から娘が欲しいと言う願いを叶えてやれなかったため、若いお嬢さんを見ると飾り立てるのが趣味でな。でも、お前、花嫁衣裳はさすがにやりすぎだぞ?ティアラ姫が困ってるじゃないか」
「えー、だってせっかく我が国の伝統を取り入れた新作のウェディングドレスが出来たところだったから、ティアラちゃんにモデルになって貰おうと思って。ジャイルとミハエルも、大好きなティアラちゃんの花嫁姿、見たいでしょ?」
ギギギ、っと音がしそうなくらいぎこちない動きでジャイルを見ると、口を手で覆ったまま、首まで真っ赤に染めている。
「母上のセンス、最高だね!ティアラに凄く良く似合ってるよ」
「ありがとうミハエル!さすがミハエルは私に似てセンスがあるわ!」
聞けばリアナ王妃はノイエ王国のファッションリーダー兼、ドレスや宝飾品のデザイナーとしても有名な人らしい。彼女のデザインしたドレスは国内ばかりでなく国外でも大人気で、各国の王公貴族からオファーが絶えないそう。
「モデルになってくれたお礼にそのドレスはプレゼントするわ!ねっ!」
リアナ王妃の屈託の無い笑顔を前に、もはや何も言う気力の無いティアラだった。
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