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その15 アスタリアの城
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◇◇◇
「ドラード国からの物資を運んできました」
「おお。待っていたぞ。入れ」
「はいっ」
荷運びの船員たちとともにミイナはアスタリアの城に入る。
(ここがアスタリアの王城か。ドラード国の王城に比べると小さいけど、作りは似てるな)
門を入り、食糧庫に持ってきた荷物を積み上げていく。塩に砂糖、小麦などの食料が、今回運ばれてきた主な荷物だ。
「随分少ないな……これだけか?」
帳簿を付けていた兵士の顔が曇る。
「へい。今回王城に届けるように言われたのはこれで全部になりやす」
「そうか。君たちの船長に会えるか?」
「へい。船長、こっちの旦那がお呼びですぜ」
「俺が船長のロイだ」
「少し、向こうで話ができないか?」
「ああ。じゃあお前ら、続きをしっかりやっとけよ」
「へいっ」
(いまだわっ……)
「あの、僕ちょっとお手洗いを借りてもいいですか?」
「ん?ああ。手洗いならあそこの建物の中にあるから。あまりうろうろするなよ」
「ありがとうございます!」
ミイナはその場をそっと抜け出した。
(情報を集めやすいのは、メイドや下働きの人が多い場所かな)
ミイナは目星を付けておいた厨房の裏に回り込む。
「あら、坊やどうしたの?」
「あの、ドラード国から荷物を運んできたんですが、喉が渇いちゃって。良かったら水を一杯いただけませんか?」
「ああ、さっきやってきた船員さんたちね。ご苦労様。いいわよ。ちょっと待っててね」
若い下働きの娘が、水を汲んで持ってきてくれる。
「ありがとうございます。喉がカラカラだったので助かりました」
「小さいのにもう働いているなんて偉いわね」
人の良さそうな娘はにこにこと声を掛けてくる。
「あの、さっき兵士さんに今回は荷物が少ないって言われたんですけど、いつもはもっと多いんですか?俺、船に乗るの今回が初めてで」
ミイナの言葉に娘もまた、顔を曇らせた。
「積み荷が……そうなのね。早速嫌がらせかしら。この国はドラード国からの輸入品に頼っているところが大きいの。積み荷の量が減らされたとすると、この先困ったことになるわね……」
「あのお……積み荷の量が減らされたことと、この国のお姫様がいなくなったことと、何か関係があるんでしょうか」
「そうに決まってるわ。姫様を側室に差し出さないと積み荷を減らすとさんざん脅してきたんだもの。大切な姫様も失った上、積み荷も減らされるなんて。こんな仕打ち酷すぎるわ」
悔しさが滲む声。そこに嘘は見えない。
「大切な姫君が行方不明となって、国王陛下や王妃殿下もお辛いですね」
「ええ。姫様が荒れ狂う海でいなくなったと聞かされて以来、両陛下ともずっとふさぎ込んでらっしゃるわ。弟君が捜索の指揮を執っていらっしゃるけど、まだ何の手掛かりも見つかっていないの」
「そうですか……せめて、何か手がかりが見つかるといいですね」
「そうね。……これは、聞いた話なんだけど、あの夜天翔ける竜の姿を見たって人がいるの。私はもしかしたら、老王に嫁ぐ姫様を憐れんで、竜神様が迎えにきてくれたんじゃないかと思っているのだけど……」
「天翔ける竜……」
「アスタリアは竜神が作った国だと言われているの。竜はこの国の守護神なのよ」
「あの、それってアルファンド王国と何か関係が……」
ここでも竜だ。
「おい、リサ、いつまで油売ってるんだ?」
「あ、ごめんなさいね。私そろそろいかなきゃ」
「いえ。お水、ありがとうございました」
パタパタと立ち去る姿を見送り、念のため手洗いに寄ってから食糧庫に戻る。
「おう。ミロ、遅かったな。こっちはもう終わったぞ」
「すみません。喉が渇いちゃって水を貰ってました」
「そうか。じゃあそろそろ戻るぞ」
(アルファンド王国……手がかりをつかんだかもしれない)
「ドラード国からの物資を運んできました」
「おお。待っていたぞ。入れ」
「はいっ」
荷運びの船員たちとともにミイナはアスタリアの城に入る。
(ここがアスタリアの王城か。ドラード国の王城に比べると小さいけど、作りは似てるな)
門を入り、食糧庫に持ってきた荷物を積み上げていく。塩に砂糖、小麦などの食料が、今回運ばれてきた主な荷物だ。
「随分少ないな……これだけか?」
帳簿を付けていた兵士の顔が曇る。
「へい。今回王城に届けるように言われたのはこれで全部になりやす」
「そうか。君たちの船長に会えるか?」
「へい。船長、こっちの旦那がお呼びですぜ」
「俺が船長のロイだ」
「少し、向こうで話ができないか?」
「ああ。じゃあお前ら、続きをしっかりやっとけよ」
「へいっ」
(いまだわっ……)
「あの、僕ちょっとお手洗いを借りてもいいですか?」
「ん?ああ。手洗いならあそこの建物の中にあるから。あまりうろうろするなよ」
「ありがとうございます!」
ミイナはその場をそっと抜け出した。
(情報を集めやすいのは、メイドや下働きの人が多い場所かな)
ミイナは目星を付けておいた厨房の裏に回り込む。
「あら、坊やどうしたの?」
「あの、ドラード国から荷物を運んできたんですが、喉が渇いちゃって。良かったら水を一杯いただけませんか?」
「ああ、さっきやってきた船員さんたちね。ご苦労様。いいわよ。ちょっと待っててね」
若い下働きの娘が、水を汲んで持ってきてくれる。
「ありがとうございます。喉がカラカラだったので助かりました」
「小さいのにもう働いているなんて偉いわね」
人の良さそうな娘はにこにこと声を掛けてくる。
「あの、さっき兵士さんに今回は荷物が少ないって言われたんですけど、いつもはもっと多いんですか?俺、船に乗るの今回が初めてで」
ミイナの言葉に娘もまた、顔を曇らせた。
「積み荷が……そうなのね。早速嫌がらせかしら。この国はドラード国からの輸入品に頼っているところが大きいの。積み荷の量が減らされたとすると、この先困ったことになるわね……」
「あのお……積み荷の量が減らされたことと、この国のお姫様がいなくなったことと、何か関係があるんでしょうか」
「そうに決まってるわ。姫様を側室に差し出さないと積み荷を減らすとさんざん脅してきたんだもの。大切な姫様も失った上、積み荷も減らされるなんて。こんな仕打ち酷すぎるわ」
悔しさが滲む声。そこに嘘は見えない。
「大切な姫君が行方不明となって、国王陛下や王妃殿下もお辛いですね」
「ええ。姫様が荒れ狂う海でいなくなったと聞かされて以来、両陛下ともずっとふさぎ込んでらっしゃるわ。弟君が捜索の指揮を執っていらっしゃるけど、まだ何の手掛かりも見つかっていないの」
「そうですか……せめて、何か手がかりが見つかるといいですね」
「そうね。……これは、聞いた話なんだけど、あの夜天翔ける竜の姿を見たって人がいるの。私はもしかしたら、老王に嫁ぐ姫様を憐れんで、竜神様が迎えにきてくれたんじゃないかと思っているのだけど……」
「天翔ける竜……」
「アスタリアは竜神が作った国だと言われているの。竜はこの国の守護神なのよ」
「あの、それってアルファンド王国と何か関係が……」
ここでも竜だ。
「おい、リサ、いつまで油売ってるんだ?」
「あ、ごめんなさいね。私そろそろいかなきゃ」
「いえ。お水、ありがとうございました」
パタパタと立ち去る姿を見送り、念のため手洗いに寄ってから食糧庫に戻る。
「おう。ミロ、遅かったな。こっちはもう終わったぞ」
「すみません。喉が渇いちゃって水を貰ってました」
「そうか。じゃあそろそろ戻るぞ」
(アルファンド王国……手がかりをつかんだかもしれない)
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