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夢、貴方
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あなたを、感じる。
そこにあなたが、いる。
熱でも出したかのように頭が浮いていて。あなたに触れて、更に熱くなって。
おかしいのかな?おかしいのだろう。こんなの、いけない事だって分かってる。許されないと、知ってはいても。
少し顔を傾ける。温かい君の、私と良く似た顔に近づける、この朱。
あなたを、思う。
そこにいるあなたに、触れる。
テレビの前、二人の子供がいる。黒の長い髪が艶やかな少女と、彼女に良く似た顔つきの、でも少し大人びた印象の少年。
彼女たちの見ている、その画面から破裂音が響く。モザイクに包まれる。途端、汗と涙と、決意と悲哀に満ちた、黒人男性の顔。
どこか呆然としていた、彼女のその半開きの唇が、震う。
──綺麗だね
その瞳が映すのは、モザイクの向こうの紅。人の命の散る、彼女たちが見るべきとは言えないもの。同じものを映す彼の、その結ばれた口が開く。
──あぁ
こんな物を見ているのに、こんな会話をする子供はおかしい?いや、それは違う。
例えるなら、
イソスタグラムとか、シイッターとか。そういう物に写真をあげる人がいる。彼らの思う事は何なのだろう?自己顕示?存在の証明?どれも違わない。ただその中の一つには、美しさの共有、があるだろう。私の思う「美」を見て。見て、「いいね」と思うでしょう?そんな思い。その双子の言っている事、やっている事は、それと同じ。自分の中の「美」を残して、共有しているだけ。
目覚めはいつも鈍足で。靄が晴れるような、そんな感じがする。
微かに瞳を開く。仕事上あまり良い事ではないが、寝起きは良い方ではない。
寝袋の中そのまま、少し過ぎる時。ぼんやりする頭で、彼の側でゆっくりする。この時間は、一日の中の最初の楽しみ。
──そろそろ、動かなければ
気だるさが取りきれていない体を動かし、チャックを下ろして寝袋から起き上がる。そして、一日の中の二回目の楽しみ。彼の最初の姿を目に焼きつける為、ふと左を向き、瞬間、震える体。彼がいない。
焦る体、絡まる心。髪も解かぬまま、心の急き立てるままにテントの出入り口を開き。
──なんだ
唐突に訪れる安堵を感じる。さっきまで恐ろしさに満ちた心が嘘みたいだ。
出入口の前、日を浴びながら立つ彼が、そこにいた。
朝日を前に立つ彼を見ながら髪を解き、少し荒れ、光を返さない黒い髪が、座る彼女の足に触れる。
特に思う事も無く、下ろした右手。何か硬い物に当たり、カタリと音が立つ。あぁ、そう言えば昨日、疲れに負けてカメラを放ったままに寝ていた。
中々値が張るカメラだ、仕舞おうかなと、当然に思うが少し、留まる
美しく感じた、その瞬間を切り取る。一人の写真家としては当然の事だし、今もやっている事。
ならば、そうだ。今私は、切り取るべき瞬間に遭遇しているではないか。
手に馴染む、確かな重みを感じる。レンズの向こうに、彼を覗く。寝起きだから、あまり綺麗に撮れなかったらごめん。そんな風な事を考えながら
カシャリと、シャッターを切る
そこにあなたが、いる。
熱でも出したかのように頭が浮いていて。あなたに触れて、更に熱くなって。
おかしいのかな?おかしいのだろう。こんなの、いけない事だって分かってる。許されないと、知ってはいても。
少し顔を傾ける。温かい君の、私と良く似た顔に近づける、この朱。
あなたを、思う。
そこにいるあなたに、触れる。
テレビの前、二人の子供がいる。黒の長い髪が艶やかな少女と、彼女に良く似た顔つきの、でも少し大人びた印象の少年。
彼女たちの見ている、その画面から破裂音が響く。モザイクに包まれる。途端、汗と涙と、決意と悲哀に満ちた、黒人男性の顔。
どこか呆然としていた、彼女のその半開きの唇が、震う。
──綺麗だね
その瞳が映すのは、モザイクの向こうの紅。人の命の散る、彼女たちが見るべきとは言えないもの。同じものを映す彼の、その結ばれた口が開く。
──あぁ
こんな物を見ているのに、こんな会話をする子供はおかしい?いや、それは違う。
例えるなら、
イソスタグラムとか、シイッターとか。そういう物に写真をあげる人がいる。彼らの思う事は何なのだろう?自己顕示?存在の証明?どれも違わない。ただその中の一つには、美しさの共有、があるだろう。私の思う「美」を見て。見て、「いいね」と思うでしょう?そんな思い。その双子の言っている事、やっている事は、それと同じ。自分の中の「美」を残して、共有しているだけ。
目覚めはいつも鈍足で。靄が晴れるような、そんな感じがする。
微かに瞳を開く。仕事上あまり良い事ではないが、寝起きは良い方ではない。
寝袋の中そのまま、少し過ぎる時。ぼんやりする頭で、彼の側でゆっくりする。この時間は、一日の中の最初の楽しみ。
──そろそろ、動かなければ
気だるさが取りきれていない体を動かし、チャックを下ろして寝袋から起き上がる。そして、一日の中の二回目の楽しみ。彼の最初の姿を目に焼きつける為、ふと左を向き、瞬間、震える体。彼がいない。
焦る体、絡まる心。髪も解かぬまま、心の急き立てるままにテントの出入り口を開き。
──なんだ
唐突に訪れる安堵を感じる。さっきまで恐ろしさに満ちた心が嘘みたいだ。
出入口の前、日を浴びながら立つ彼が、そこにいた。
朝日を前に立つ彼を見ながら髪を解き、少し荒れ、光を返さない黒い髪が、座る彼女の足に触れる。
特に思う事も無く、下ろした右手。何か硬い物に当たり、カタリと音が立つ。あぁ、そう言えば昨日、疲れに負けてカメラを放ったままに寝ていた。
中々値が張るカメラだ、仕舞おうかなと、当然に思うが少し、留まる
美しく感じた、その瞬間を切り取る。一人の写真家としては当然の事だし、今もやっている事。
ならば、そうだ。今私は、切り取るべき瞬間に遭遇しているではないか。
手に馴染む、確かな重みを感じる。レンズの向こうに、彼を覗く。寝起きだから、あまり綺麗に撮れなかったらごめん。そんな風な事を考えながら
カシャリと、シャッターを切る
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