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第二章 ポンコツ令嬢と王国動乱編(上)
第1話「いつのまにか二年経ってました……」
しおりを挟む二年。
それは人によって短いと感じる人や長いと感じる人、様々いるだろう。
例えば、魔法学園に入学した新入生も二年経てば三年生。
男子三日会わざれば刮目して見よ…なんて言葉もあるぐらいだし。
この世界で二年なんて言うと…………な……何日だろう……。
まぁ、確実に三日はとうに過ぎ去っている。
そう。
あの事件が起きてから二年経った。
一時期生存は絶望的だと噂されていた私であるが、意外としぶとく生きてたりもする。
しかし、だ。
神様は何の悪戯か、はたまた悪意からか私の身長も胸も一向に成長もせず、王子様の様な高長身のスラッとした女性になって可愛い女の子をメロメロにしてイチャイチャするのだと言う願望はこの歳で儚くも崩れ去ったのだ。
せめて王子様は無理でも女性らしい身体つきになってお姉様と呼ばれる事を期待していたのに全然、何にも、これっぽっちも、変化しないのだから嫌になるよね!?
しかも、寄ってくるのは幼女好きの変態に、罵ってくれと言って四つん這いでカサカサと走ってくる変態に、迷子だと勘違いし警備所まで連れて行こうとする変態ぐらい。
私が一体何をしたと言うのだ。
こんちくしょうめっ!
まぁ、それはともかく。
私はあの事件の後、瀕死の状態である島に流れ着いた。
そこで双子の姉妹に出会い、看病してもらったのだが、話を聞くとその島に住む住人だというのだ。
その後、何だかんだあって地獄の様な修行という名のレベル上げを行ない、ハッチャケ過ぎたのか、島にいる魔物?が弱すぎてつまんなくなったから姉妹と一緒に島を出てきたのだ……が、そしたらなんと、二年経ってた。
というわけです、はい。
うん、自分でも何言ってるの?と思うけど、そうは言っても事実なのだからしょうがない。
とは言え、話の辻褄が合わないので私達が島から出て直後から話そうと思う。
*
それは、私と姉妹二人が薄暗い島から出た爽やかな風が吹く日。
美貌と戦闘力から神の使徒と言われ、他の種に比べ高い魔力値と俊敏性を併せ持つエルフである姉のメイと、メイの妹で神に反逆し地に堕とされた事で身体を魔族と同様に黒く染められたと言われる種族—————ダークエルフのアミル。
と言っても二人共私より年上だし、メイは綺麗な腰まである金髪ロングヘアーに、オッドアイの右目に掛かる髪を三つ編みで一房に纏めた高身長のスラッとしたクールなお姉さんって感じ。
アミルは日焼けしたような小麦色の身体と、対照的なサラサラとした肩まである白銀色のショートヘアーが特徴的な女性である。
あと、一つ付け加えるのならばメイがクール美人。
対して、アミルは人懐っこい活発なお姉ちゃんって感じだろうか?
そんな二人と私を含めた三人が島を出て最初に着いた場所は観光客や住民が多く賑わい、物資を多く積んだ貨物船などが数十隻横に並ぶ港街の様な場所だった。
「ラウ様? ここはどこでしょう?」
「港っぽいけど……。何処なんだろここ……」
メイが辺りを見渡し私に尋ねるが、私も分からない。
アミルは私を後ろからギュッと抱きしめスースーと可愛い寝顔で寝ているし、今頼りになるのはメイだけ。
流石、お姉ちゃん。
ちなみにメイが私の事を様付けで呼んだ事には訳があって、私が彼女達を助けた事に関連する。
今では私の立派な従者兼護衛。
そして、私のハーレムメンバーの一員でもある。
いや、最後のは私が勝手に言ってるだけだけど…でも、かといって二人を誰かに渡すつもりはない。
彼女達が何かされたら私は暴走する可能性がある。
……というより、もうしたことある。
ま、まぁ、そんなこんなあって港に着いたのだが……。
何処からかキュ~という可愛らしい音が鳴る。
……。
だって、なんか美味しそうな香ばしい匂いが彼方此方からするんだよ!
しょうがないじゃん!
「ふふっ、可愛らしい音ですね。港に着きましたし、何か食べましょうか。ほらアミル、貴女も早く起きなさい」
「ん……むぅ、ん~……姉々? ラウ様? ……なにここ?」
アミルが寝起きの寝ぼけた表情で私の首筋に鼻を擦り寄せ、爽やかな果物の香りとたわわに育った胸が私の背中から離れる。
どうやら、メイの声と私の匂いで判断したようだ。私からムニュリとした柔らかい二つの果実が離れた事で、若干名残惜しい気持ちが顔に出てしまったのだろうか。
メイが少しムスッとした表情をし、アミルが眠そうな表情から途端に笑顔になったかと思うと、私の頬を両手で挟んで顔をのぞき込んで「ラウ様、また今夜♪」と意地悪く微笑み、頭を撫でる。
その表情は小悪魔的で、どこか艶っぽく見え、私の脳は一瞬思考を停止させる程の破壊力。
「ラウ様?」
はっ! いやいや、危なかった!
一生這い上がれない沼に落ちる所だった。
多分、他の人が私の表情を見たら心底デレデレの情けない表情を晒していたに違いない。
だって、メイの表情が氷のように無表情になってるし……。
アミルにいたっては何かもう今にも襲いかかってきそうな眼をしてるし……。
「おい、あんたら! そこから早く移動させるんだ!」
そんな時、男性の焦った声が聞こえ、私達が何事かと振り向く。
そこには木製の箱を肩に落とし、両手で支えながら作業している男性達の姿があった。
声を掛けてきたのは、その内の一人の様だ。
私達の周囲には全長百五十mはありそうな貨物船が横にずらっと横に並んでおり、一つだけポツンと大きく空いた所に私達がいる。
見るからに、このままいたら面倒事に巻き込まれる気しかしない。
お腹が空いてる時に面倒事を起こすのも嫌なので言われた通りに早く移動した方が良いかな。
とは言え、何処に移動したらいいのやら……。
周囲を見渡せど、私達の乗っている様な小型の船なんて見当たらないし。
「ねぇ! 言われたとおりに移動しようと思うんだけど、何処に移動したらいいの?」
「だったらこっちに止めてくれ」
男性が指差す方向には比較的船を止めれそうな浅瀬があった。
確かにあそこなら止められるかも。
「か、頭!」
「おい、お前ら! 道をどけろ!」
すると、男達が騒ぎ出した後に強面の男性が一人奥から出てきた。
その体格は他の作業している男性の一回り大きく、周りの男性が頭《かしら》と呼んでいるのを耳にする。
どこかの偉い人なのかな?案内された場所は……えっと、ここだよね。
ともかく、私達が案内されたのは小型船が数多く船舶している場所の一画だった。
その他の船に邪魔ならないように端っこに止め、ギシギシと如何にも壊れそうな音の鳴る木製の人工の質素な古びた桟橋に降り立つ。
「さっきはいきなり若ぇもんが大声で忠告しちまってすまんかったな。怖くなかったか?」
お?
どうやら見た目以上には怖く無い人のようだ。
なんか、気前のいいおっちゃん感が……。
「大丈夫だよ。というより、逆に助かったよ。あのまま居たら、面倒事に撒き込まれそうな雰囲気あったし」
「ハハッ、そりゃそうだ。ここは各地の大型船が止まりに来る船着場だからな。むしろ、嬢ちゃん達は運が良かったぞ? 大型船が来ればあんな小さな船なんか波で転覆しちまう」
「そういえば、なんか慌ててたようだけど、何かあったの?」
「あぁ~、そうだな。嬢ちゃん達には、ついでに教えといてやるよ。あそこはな、何でも和国に行ってた名のある貴族が帰ってくるってんで失礼が無いように皆、殺気立ってんだ」
「そこまでの人物なの? というより、殺気立つの?」
街の人にそこまで嫌われるって何者なんだろ?
海賊とか?
「あぁ、なんでも王国の重鎮を背後に抱えてると聞いてるが背後関係は詳しくは知らん。それで何で殺気立ってるかだったか……」
「?」
「あぁ……実はな、一ヶ月前だったか、あの事があっただろう?」
「ちょ、ちょっと待って。あの事って何の事?」
「ん? そりゃあれだ、ノイア聖国で『ちきゅう』? とか言う別の世界から数十人の勇者達が召喚されたことだ」
ちきゅう?
別の世界?
「なんでも、聖国の信者が信奉する唯一神の神託が下ったとかで人類の敵である魔族や魔物の殲滅の為に、異世界から勇者を召喚したんだよ。そしたら王国も、その殲滅戦に参戦することを王が決めちまった」
王がねぇ……。
あの娘を溺愛する人がそんな事決めるとは思えないんだけど。
でも、おじさんの話では決めたって事らしいし……。
「そんで、これから来る貴族様は元々貴族思想が高かった人物なんだが、王国が参戦することを発表してからそれが更に高まっちまった。自分が気にくわない事があれば女子供でも容赦しない性格になったもんで皆怯えてるんだよ」
はぁ、早くここに移動させて良かった。
メイもアミルも自慢じゃないがその辺の女性とは格が違うレベルで美形だ。
街に行く前にどこかでフードでも被って目立たないようにしないと、変なのに絡まれても面倒だし。
にしても異世界の勇者、か。
強いのかな……?
戦ってみたいな~。
聖国だよね!
よし、覚えた!
「ラウ様、また可愛い口が吊り上がってますよ?」
「そんなラウ様も可愛いけどね~」
おっと、いけない。
最近、自分よりも強い敵を想像すると口端が吊り上がってしまうのはどうにかしなくては……。
私は口元を手でムニムニと揉み混んでから、改めて礼を伝える。
「親切にありがとう! えっと……」
「おぉ、そういやまだ名乗ってなかったか。ハハッ、すまんな。俺はここの漁業都市の船の出入りの管理等を領主様に任されてるダンズってもんだ。よろしくな、嬢ちゃん達」
「うん! よろしくね! 私はラウ、こっちはメイとアミルだよ」
メイとアミルが少し頭を下げる。
「そうか、そうか。なんかの縁だ、聞きたい事があったら聞いてくれ。俺は大体ここら辺で指揮を取ってるからな」
「あ、じゃあ早速いい? ここって何処で今いつなの?」
私は一つのさっきから気になっていた質問を口に出した。
それは何気ない質問だった筈だ。
島に居たときは四六時中戦闘に明け暮れてたし、メイ達の世界樹聖誕歴というのもあったが、よく分からなかったし。
精々、一、二ヶ月ぐらいだと思っていたのだ。
うん。
そしたら……。
「ここか? ウフォン、んん……よし。今は王国歴1556年青果の旬、ここはクリノワール王国南部に位置する王国一の漁業都市。ようこそ、タリーへ! 楽しんで行ってくれ、嬢ちゃん達」
ダンズが厳つい顔を笑顔にし、祝いの声を出した。
姉妹二人と私を含めた三人が島を出て最初に着いた場所はクリノワール王国南部の辺境に位置する都市タリー。
和国と海との距離が近い為、漁業が盛んで観光業に力を入れている一大漁業都市に流れ着いたのだった。
そして、私が行方不明になっていつの間にか二年経ってたのだった。
*
ラウが二年越しに姿を現わしたその日は、後にこの世界を引っ掻き回す最強の戦闘狂であり、大事な所でポンコツになる令嬢が野に放たれた日でもあった。
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