なんで俺ばっかり!

黒滝ヒロ

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「それで?ドゥーガル、もうお前の目論見は通らんぞ。すぐにさらったとはいえ、街中でこいつの姿を見た奴だっているんだ。隠しだてはできんぞ。」
「わかっている。完全に不服だが、お披露目した後で正規の方法で相手を決めるしかないか。」
「そうするしかないだろうな。まあ、俺もサトルを絶対に手に入れるつもりだからお前に譲るつもりは全くないが。」
「それが決まるまではサトルに手をつけるのはご法度だぞ。わかっているだろうな?」

ちっと舌打ちしてルシアーノが答える。

「仕方ねえ。だが保護先はこのまま俺の屋敷でいいんだろ?ここならサトルの守りも鉄壁だからな。」
「これも完全に不服だが、仕方がない…何度もいうが絶対に手をつけるなよ!お披露目についてはまた段取りができてからまた連絡する。サトル、説明がこのような形になってしまったのは私の本意ではないのだ。すまなかった。」

そう告げると、ドゥーガルは部屋を出て行った。

「ふう。せっかく異世界人の初物がいただけると思ったのに全く残念だぜ。だが、楽しみは後まで取っておくのがより大きくなるってもんだ。」

差し迫った危険は無くなったようだが、何も危険が無くなったわけではない。
まだ全然状況が掴めない状況だが、自分なりに対策を考えなくては…。

「しばらくはここにいることになるが、何か不足しているものがあったら、遠慮なくジナにいえ。」
「あ、ありがとう?」
「忘れないでほしいが、俺はお前を絶対に自分のものにしたい。もう乱暴なことはしないが、そのことは忘れないでいてくれ。愛している、サトル。」

ストレートな告白に思わず胸がドキドキしてしまう。
男が好きなわけでは断じてないが、こんなかっこいい男に傅かれて、手の甲にキスなんてされたらいい歳した男だってときめいちゃうのは仕方ないよね?さらに俺耐性ないし!
最初のあのセクハラ親父はどこいった?

突然の告白に口をパクパクさせている俺を置いて、ルシアーノも部屋を出て行った。た、助かった…。
嵐が過ぎ去った後のように、急に静かになったところでようやく考える余力が出てきた。
とりあえずは危機を脱したが、この先どうなるのか不安しかない。せっかくこの家でしばらく保護されるらしいから、情報を集めるところから始めよう。対策立てるにも何も知らないんじゃ話にならない。

この家の中では執事のジナが一通りの面倒を見てくれる。着替えや食事の準備、入浴の手配などなど、まさに至れり尽くせりだ。俺がここに滞在する間の生活費は領主からも出ているそうなので、もっと贅沢でもいいらしいのだが、これ以上なんか買われても小心者の俺には心に負担しかないので、丁重にお断りした。
俺の中では贅沢は敵なのです…。


まずはこの世界での異世界人の扱いについて歴史を学ぶことにした。
『伝説の異世界人!その謎と歴史に迫る!』というなんだか週刊誌の記事のようなタイトルの本を1冊お借りして黙々と読み込んだ。
あ、ちなみにこの世界の文字は全部日本語。助かるには助かるが、見た目西洋人の人たちが流暢に日本語話しているのは今でも違和感しかない。

本にはこれまでの異世界人の扱いについての歴史が、割と事細かに綴られていた。
曰く、村人全員に死ぬまで犯され狂死した者。
曰く、戦争の発端となり処刑された者。
曰く、領主に拉致監禁され、発見された時には自我を失っていた者。
本を読んで逃げ出したくなったが、そのうちいくつかは比較的平和に人生を過ごせた者もいるらしい。

それはちょうど100年前のこの国でのこと。
異世界人が発見され街の男たちで取り合いになっていたところ、その国の王子が開催したある「大会」によって勝者を決め、それによって配偶者を決めたらしい。その時の配偶者は結局王子だったのだが、勝利を決めたと同時に国民全員に金貨1枚を配布したことで国民も喜び、大いに祝福された。

国民全員に金貨1枚って日本円で10万円くらいか~なんか元の世界でもそんなことがあったような…。
つまり何かしら差し出すか、納得するようなことをすれば悲惨な目に遭うことなく無事に1人で済ませられるわけか。もうここで「1人で済む」という発想にだいぶこの世界に毒されているのだが。

それで「正しい手順」というわけか…。
しかし、「大会」ってなんだ?剣術大会みたいなものだったら圧倒的に騎士団長であるルシアーノが優勢だ。
それとも他の手段で争うのだろうか…。
残念ながら本にはその「大会」の具体的な内容までは記されていない。
そのことにも若干の違和感がある。わざと書いてないような…。

ため息をついて、本を閉じる。ジナの入れてくれた紅茶が美味しい。
普通に落ち着いたこの世界でゆっくり過ごせるのなら、何も問題はないのだけれど。
俺が男たちから狙われる存在だというのはいまだに信じられない。しかし、外出は認められていないし、厳重に館の周りには見回りの騎士が多く配置されている。だから確かめようにも外出することはできない。

ベッドに横になっていたら、うつらうつらして眠りに入ってしまった。
そしてふと目が覚めたら、周囲の景色が全く違うものになっていた。
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