なんで俺ばっかり!

黒滝ヒロ

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それからさらに1週間たって、俺のお披露目と女神への報告の儀式が執り行われる日となった。どちらも100年ぶりということで街はお祭り騒ぎとなっていた。何しろ領内だけでなく、国内全体から人が集まっている。

なんだか客寄せパンダになってしまった気持ちだが、それでこの領内の懐が温まるのならこれも日頃の恩返しだと思うことにしよう。

ドゥーガルの館に勤めてる侍女の皆さんが総出で俺を飾り立ててくる。俺の髪を香油で梳かし、頭に白い花をつける。流石にドレスではなかったが、上も下も白で統一された服は元の世界で一度もきたことがないので、汚してしまわないかと緊張の度合いが増していく。
もうここでは逆らうことはできない。何より侍女の皆さんが楽しそうに俺を飾り立てる姿を見て何も言えない。俺はマネキンになったつもりで言われる通りに体を動かした。

準備が終わったところで、ドゥーガルたち3人が俺を呼びに部屋にやってきた。支度を終えたので侍女さんたちはそそくさと部屋を出ていく。
それにしてもドゥーガルたちの正装を見ると改めてかっこいいな。

肩まで伸びたウェーブのかかった金髪が美しく、すらりと長身のドゥーガル。
後ろに撫で付けた赤髪がいつもより凛々しく見せる、筋肉逞しいルシアーノ。
水色の髪がより幼く見せているが、活発でつい甘やかしたくなる美少年のレメディオス。
この3人に求愛されてると思うと、改めてなんだか照れてしまう。

だめだな。俺はまだこの3人に何も返していやしないというのに、浮かれてしまっているのか俺は?せめて自分のお役目はしっかり果たそうと、化粧のため座っていた椅子を立つ。

「サトル。今日は一段と美しいな。聖女のようだぞ。」
「なんだ?おめかしするとまた随分と色っぽいな。」
「やっぱり僕が思った通り、サトルはこの国一番かわいいよ!」

3人に手放しで褒められるとさらに照れが増し、視線の行き先に困ってしまう。

「お、おう。ありがとう?」
「サトル照れてんだ~」
「レメ、からかっている場合ではない。そろそろ時間だ。」
いたずら顔のレメをドゥーガルが諫める。もうそんな時間か。

「ふう。みんなに見せるの嫌だな…」
「お前サトルを自分のものにする自信がないのか?俺は自慢したいくらいなんだがなあ~」
「そんなわけないよ!絶対僕のものにするんだから!」
「はいはい。もう着くから、2人ともその辺で。」
言い合うレメとルシアーノをドゥーガルが止める。この3人かなり仲がいいんだな。
俺には入り込めないというか、3人がお互いをよく知った関係なのがわかる。
そんなやりとりをしながら教会の廊下を歩くと一際豪華な扉の前にきた。

「打ち合わせ通り、サトルは微笑んでいればいいだけだから安心して欲しい。全ての進行は私が進めるから何も心配はいらないからね。」
「わ、わかった。倒れたら…ごめん」
大勢の前に立つことなど、人生で一度もなかった俺には今にも緊張して倒れてしまいそうなほどだ。

大きく深呼吸をして、3人の顔を見るとドゥーガルとルシアーノが両側から扉を足開ける。
「おおおお!」という大きなどよめきとともに割れんばかりの拍手が、大きな聖堂に響き渡る。
「なんと美しい…」「あれほど魅力的な黒髪があるだろうか」「目の色も吸い込まれそうな黒色だ…」
などなどたくさんの人のつぶやきが聞こえたが、事前にあまり気にするなと言われていたので、「右足、左足…」と出す足の確認をしながら、そのままステージ奥の椅子に座った。

聖堂は俺が高校の時の体育館よりさらにひとまわり大きく、1000人以上はいそうだが一体どれくらいいるのか見当もつかない。聖堂にひしめくほどの多くの人がいて、その全員が俺に注目している。俺は顔は務めて口角を上げるように笑顔を作っているつもりだが、絶対引き攣っていると思う。
手足もカタカタと震えてしまっている。

俺の傍に立つドゥーガルが小声で「大丈夫」といい、ルシアーノとレメが俺の両肩に手を置く。
細やかな彼らの気遣いのおかげで少し震えが落ち着いてきた。

ドゥーガルが口火を切る。
「我が親愛なるカリトゥス領の諸君!我らの大地に1月ほど前、異世界人イシイ・サトル殿が訪れた!」
一瞬で騒然としていた聖堂内が静かになる。
「然るに女神アルテイシア様にご報告の儀を執り行い、後に大会を開催する!」
おおー!と聖堂内が一斉にどよめく。もはや御伽噺となっていた異世界人の話が今まさに現実のものとして目の前に再現されているのだろうか。一気に興奮の熱気で聖堂が溢れる。

ドゥーガルが手を挙げると、聖堂内はまた静粛に包まれる。
俺が思っていたより、領民と領主の間の絆を感じる。

「サトル殿は我ら共通の愛し子である故に、大会の結果が出るまでは我が館で騎士団長ルシアーノ、魔導師団長レメディオスとともに保護する!ゆめ先走った行動を取らぬよう、今ここで我らともに誓おう!皆どうか?」
「「「異議なし!!」」」
即座に聖堂にいる全員が返答する。

「皆ありがとう!親愛なる我が領民よ!異世界人サトル殿に我らが誠意をしめそう!」
そうドゥーガルが語ると聖堂は割れんばかりの拍手に包まれた。


続けて、女神報告の儀が始まった。
教会の神官達がステージ中央の奥にある女神像に向かって祈りを捧げる。そのうちの中央に立っている一番威厳のありそうな神官が像の前にある水を張った、細やかな細工のされている器に自らの血を垂らす。
ドゥーガルの話によるとあの人が神官長らしい。
器の中を今座っているところから見ることは叶わないが、神官長がその隣にいる神官に何かを伝えている。伝えられた神官はその言葉を紙に書き記していく。

一通り伝えられた言葉が紙に記された後、その紙を神官長が受け取り皆の方を向く。
「女神様より我らに託宣がもたらされました。『西部山中にある洞窟へ入り、その最奥にいる者を鎮めよ。そのうち最も功高きものを異世界人の配偶者とする』以上です。」

神官長が話を終えると、ドゥーガルが前に出て宣言する。
「皆聞いたか!?これより1ヶ月後!この街より出立し、託宣にある洞窟へ向かう!この大会に参加する意思がある者は1週間後に設置する受付まで名乗り出るように!以上!」
「「「おおー!カリトゥス領万歳!異世界人万歳!」」」

割れんばかりのバンザイコールに耳が痛くなった。そういえばこれ、俺の争奪戦なんだよな…。この聖堂の雰囲気に圧倒されそうになるが、そもそもの目的を思い出すと圧倒されているばかりではいけない。
俺自身も一体西の洞窟に何がいるのか、この目で確かめなければいけない。
流されてはいけないんだ。と、自分にそう言い聞かせた。

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