虹色の流れ星

藤沢なお

文字の大きさ
11 / 19
白猫のねがいごと

☆6

しおりを挟む

黒猫は虹色のカケラを見つめながら、
大きな声でこう言った。

「蝶々さんの黄色とオレンジ、
  うさぎさんの赤と緑、
  小鳥さんの青と水色。
  見つけた星のカケラと同じ色のカケラを
  みんなに届けてあげてください」

えっ?
それがねがいごとなの?

シロミは拍子抜けしそうになった。

だって、もともとかなえたい願いが
あったから、虹色の流れ星のカケラを
探しにきたんじゃなかったの?

それなのに、
さっき会ったばかりのコたちの、
願いを叶えようとするなんて。

黒猫はじーっと手のひらのカケラを
みつめつづけている。
小鳥たちも黒猫を見守っているようだ。

いいわ、わかったわよ。
その願い、叶えてあげようじゃないの。

シロミは魔法の力で、
黒猫のねがいごとをしっかり
演出してみせようと心に決めた。

ありったけの集中力と想像力を働かせ、
虹色のカケラを黒猫の手から
空中へ浮かび上がらせる。

そして太陽の光を通し、
きらりと最後のかがやきを
印象づけた次の瞬間。

パリン!

ようしゃなく音をたて、
虹色のカケラをふたつに割った。

それからすぐに、一色ずつ色の違う
七つの小さなカケラを、
閉じ込めていたガラスから解放させる。

まるで今生まれ出たかのように、
しばらくはふわふわと宙に浮かばせた。

黒猫も小鳥たちも、
この不思議な光景に
目を見張って眺めている。

よぉ~し。いよいよ最後の仕上げだわ。

シロミは集中力を研ぎ澄ませると、
宙に浮かぶ七つのカケラを、
それぞれ必要としているところへ
飛び立たせた。

黄色とオレンジは蝶々のもとへ。
赤と緑はうさぎのもとへ。
青と水色は
この場にいる小鳥たちの足元へ。

「うわあー、よかった、ありがとう!」

小鳥たちは声を上げて喜んでいる。

ふーっ……つかれたぁ。

何とか仕事をやり遂げたシロミは、
ほうっと息を吐く。

見ると黒猫は、にこにこと嬉しそうだ。

ふーん。
もともと自分のねがいごとが
あっただろうに。

ほかの誰かの願いを優先しちゃって、
良かったのかしら?

小鳥たちは黒猫にもう一度お礼を言うと、
家に帰って行く。
小鳥たちに手を振る黒猫に、
シロミはきいてみた。

「本当に、これでよかったの?」

すると黒猫は、

「うん!」

すっきりした顔でうなずく。

へえ……そうなんだ。
まあ、ほかの誰かの願いを
叶えてみたいというのであれば、
私もおんなじだったけどね。

自分の魔法の力を試してみたい……。

去年、母親の話を聞いたときから
ずっと思っていたこと。

それをやっとかなえることができて、
シロミは満足だった。

ひとつ、紫のアメジストのカケラだけが
地面の上に取り残されている。

虹色の素材として必要だったけど、
けっきょく使わなかったわね。

「ひとつ、カケラが残っちゃったわね」

シロミがそうつぶやくと
黒猫はカケラを手に取り、

「これは、きみのだよ」

とシロミに差し出した。

「え?  私の?」

「うん、だって…」

そこでシロミは黒猫に
まじまじと見つめられてどきっとした。

ああ、なんだ……。
私の目の色に気がついたのね。

シロミの瞳は紫色。
カケラと同じ色をしている。

だからこれは私のものっていうわけね。

でもそれを言うならおんなじだ。
この黒猫だってきれいに澄んだ、
紫色の瞳をしている。

ほんとにお人好しなんだわ……。

シロミはこの黒猫と、
もっと話がしてみたくなった。

本当は何を
お願いするつもりだったのだろう?

「じゃあこれは、
  私たちのものにしましょうよ」

シロミはカケラを手に取り、
黒猫に提案した。

「そこの木の下に埋めておくの。
  それでときどき様子を見に来て、
  ここでおしゃべりをするの。
  ……どうかしら?」

シロミはそう言いながら、
胸がどきどきしてきた。

私ったら何を言ってるのかしら。
もし断られたらどうしよう……。

だけどシロミの心配をよそに、
黒猫の頬はだんだん赤く染まっていく。

そして今日一番の笑顔をみせながら、
うれしそうにこう言った。

「じゃあぼくたち、友だちになろうよ」

虹色の流れ星。
そのカケラを見つけると
ひとつだけ願いがかなうという。

これはシロミと黒猫の出逢いの物語。


~白猫のねがいごと~    完
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

処理中です...