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ハシビロコウのねがいごと
*5
しおりを挟むトラさんの家に着くと、
玄関の靴箱の上にある籐の花カゴを
使うように言われ、コウタはその中に
羽を入れた。
居間のソファーに腰かけて
自分の隣にカゴを置く。
しばらくするとはちみつの
甘いかおりがただよってきた。
「ついさっき、来客があってね。
その残りで良かったら、
どうぞ召し上がれ」
トラさんはそう言いながら、
はちみつ入りのホットミルクと、
シナモンロールをテーブルに並べた。
「おいしそうだね、いただきます」
コウタはミルクを飲み、それから
シナモンロールもひとくちかじった。
ふわっとした生地。
白砂糖のアイシングが口の中で
ゆっくり溶けていく。
「うん、おいしい!」
「それは良かった」
トラさんは何でも自分で作る。
シナモンロールは今朝、
お客さん用に焼いたのだそうだ。
隣に置いたこの花カゴも
手作りだという。
コウタはゆっくり部屋の中を見回した。
食器棚の上には彩りのいいドライフラワー
など壁飾りが並んでいる。
一番端に、丸い小さな輪っかの飾りが
ぶらさがっているのを見つけた。
輪っかは細かい編み目のネットでおおわれ
輪っかの下の部分には茶色の羽が
四枚くくりつけられていた。
キーホルダーみたいなものだろうか?
控えめな色合いなので、
ほかの壁飾りに比べて目立たない存在だ。
「あの茶色い羽がついているのは何?」
気になったので尋ねると、
トラさんは、コウタの視線の先を追いかけ
ああ、とつぶやき答えた。
「あれはドリームキャッチャーだよ」
「ドリームキャッチャーって?」
トラさんは席を立つと、
壁にかかっていたその飾りを手に取り、
コウタの前に置いた。
「幸運のお守りさ。
まあ本来は悪夢を見ないようにって
ベッドの上に飾るものらしいがね。
いい夢だけがこの羽をつたって
持ち主に届けてくれるそうだよ」
「この羽は?」
「旅先で出会った、
スズメの四姉妹のものさ。
私が風邪をひいて寝込んだときに、
体調が良くなるようにって
持ってきてくれたんだよ」
コウタは四枚の茶色い羽を見つめる。
きっとそのスズメたちは
トラさんのことを想い、自分たちの羽を
くくりつけたのだろう。
じゃあ、みんなからもらったこの羽も……。
「トラさん、ぼくにも
ドリームキャッチャーを作れるかなぁ?」
トラさんはコウタの気持ちを察し、
羽でいっぱいになった籐の花カゴを
ちらりと見てから、
「そうだねぇ……大丈夫。
今から始めれば夕方までには
仕上がるだろうよ」
と言ってにっこり笑った。
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