11 / 14
番外編 本編後すぐ②
しおりを挟むなかなか泣き止まない新君を放置して解散するのは勿論論外。だけどそのまま外で慰めるのもどうかと思って、自宅に招待してから十数分。
暖房の効いた部屋で温かいお茶を飲む新君は、鼻こそ啜っているものの、少しだけ赤く充血した目にもう涙は見えない。しかし彼は涙を零す代わりに、今度は僕に対する今までの不満のようなものをつらつらと吐き出していた。
「ああいう時は、同学年で暇そうな俺が隣に居たんだからそっちに質問すべきだろ。わざわざ図書室出てまで『先輩に教えてもらう~』って…、何の当てつけかと思ったわ……、おい、聞いてんの?」
あ、やべ。何かもう存在が可愛すぎて話全然聞いてなかった。でも多分僕が悪いから全謝罪です。
──新君は僕のことが好き。
僕にとっては、もう何?もしかして明日世界滅びたりする?ってくらい衝撃的なニュースだ。家に殺到するマスコミ。溢れかえっておちおち外にも出られないよ。記者会見とか開くべき?
「灰被さんは大路さんの事が好きなんですか!?」
そうみたい。
「小学校の頃から想いを寄せているとのことですが!」
そうみたいなんだよ。新君が。夢みたいだよねホント。
心ここにあらずな感じで謝った僕にちょっとムッとした新君が、お茶を一口飲んでからまた続ける。
「…大体、いくら経験豊富な奴が好きだとしても、流石に俺に告った後に他の男に媚びを売るような真似は……ってだから聞いてんのかよ真白!?」
「新君僕のこと好きなんだぁ…」
「何十分前の会話で止まってんだ!好きで悪いか!あ゛!?」
ぽやんと呟いた僕に流石の新君も堪忍袋の緒が切れたようだ。真っ赤な顔をしてダン!とテーブルを叩く。
やばいやばい怒ってる。えっと何だっけ?経験豊富な人が好きだとか何とか…ってとこは何となく耳に入って来てたけど…。
っていうか──、
「経験豊富な人が好き、とか、僕そんなこと新君に言ってないよね?」
「…いーや言ったね。小2の時の帰りに言ってた。俺は聞いた」
腕を組んで自信ありげにする新君。小学2年生の帰り…ってことは、新君をおぶって帰ったあの日の事だろうか?うん。新君が言うなら絶対に間違いないよきっと僕は言ったんだそうに違いない。
そして新君はその情報を元に努力して経験豊富になろうと……、
「新君僕のこと好きなんだぁ…」
「いい加減にしろよお前!!」
危ない危ない。また思考が振り出しに戻ってしまうところだった。
でも仕方がないよ。だって本当に夢みたいなことだったから驚愕も驚愕だし…、何より同じくらいの時間新君も僕の事を想ってくれていたってことが嬉しすぎるんだもん。顔だってずっとにやけちゃってこれ戻らなかったらどうしよう!新君は近くにずっとニヤニヤした奴が存在してても平気な人!?
…おっと本気でまずいぞ!新君が顔を真っ赤にして震えながらまた涙目になってきてる!
何だったっけ!そうそう経験豊富経験豊富…!それを小学生の時に僕が言ったんだよね!うん絶対言った!覚えてないけど絶対言った!
えーーと、…でも、僕はどっちかっていうと相手に経験豊富さを求めるってより…、
「多分、それ、僕がなりたい人の話かも」
「は?」
それこそ新君のお父さんみたいな、常に冷静沈着で凛としていて、経験と知識の豊富さが余裕に繋がっている格好良い男性。
「そんな風になれたら新君に振り向いてもらえるかも、ってずっと思ってたし…。…そ、そういうわけで、これは他の誰かに求めているものじゃないっていうか!」
僕は気恥ずかしさを誤魔化すように、顔の前で忙しなく手を振る。
障害物のあるその視界の奥で、「じゃあ何のために俺はあんなことを…?」と途方に暮れる新君が見えた。
そうだよ。だから、経験豊富でもそうじゃなくても、
「僕は、どんな新君でも好きだよ」
虐められても動じない堂々とした姿勢が好きとか、美しいその見た目が好きとか、もうそんな次元はとうの昔に超えてしまっている。長い時間をかけて積もった想いは嫌いなところを探すことが難しいほどに、新君のやる事成す事、その口から出る言葉の一つ一つでさえ全て愛しさで纏められて僕の心に届くのだ。
つまりもう新君の事で受け入れられないことはないよ。準備は既に完了しているのさ。育児、介護を参考にしてあんなことやこんなこともシミュレーションしたけどむしろ「来なよ早く!!」の域だったよ。大丈夫全部僕に任せて。
言葉にすれば新君にドン引かれそうなこと(覚悟)を脳内で想像していると、目の前の新君から囁くような声で「俺も…」と聞こえた。
うん。やっぱり新君レベルになると自己肯定感も高いや。新君自身、自分がどんな自分であろうと自分の事が好きなんだね。そんな顔を真っ赤にして…、ふふふ。
照れを誤魔化すように手元のお茶を啜る新君を微笑まし気に眺めながら、僕はある一抹の不安が自身の胸を過ったのを見逃さなかった。
新君は、明確に揺らがない自分を持っている。自信に満ちているし、誰かのために一生懸命努力も出来る。素敵なところはもう星の数以上にあるのだ。
──でも、そんな新君に僕は釣り合っているのだろうか?
ガタッ!
「…っ!こうしちゃいられないっ!!僕も経験豊富になってくるね!!!」
「だからこの流れで何でそうなる!?もう一回泣くぞ!?」
45
あなたにおすすめの小説
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話
雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。
主人公(受)
園山 翔(そのやまかける)
攻
城島 涼(きじまりょう)
攻の恋人
高梨 詩(たかなしうた)
いつも優しい幼馴染との距離が最近ちょっとだけ遠い
たけむら
BL
「いつも優しい幼馴染との距離が最近ちょっとだけ遠い」
真面目な幼馴染・三輪 遥と『そそっかしすぎる鉄砲玉』という何とも不名誉な称号を持つ倉田 湊は、保育園の頃からの友達だった。高校生になっても変わらず、ずっと友達として付き合い続けていたが、最近遥が『友達』と言い聞かせるように呟くことがなぜか心に引っ掛かる。そんなときに、高校でできたふたりの悪友・戸田と新見がとんでもないことを言い始めて…?
*本編:7話、番外編:4話でお届けします。
*別タイトルでpixivにも掲載しております。
俺がモテない理由
秋元智也
BL
平凡な大学生活を送っていた桜井陸。
彼には仲のいい幼馴染の友人がいた。
友人の名は森田誠治という。
周りからもチヤホヤされるほどに顔も良く性格もいい。
困っている人がいると放かってはおけない世話焼きな
性格なのだった。
そんな二人が、いきなり異世界へと来た理由。
それは魔王を倒して欲しいという身勝手な王様の願い
だった。
気づいたら異世界に落とされ、帰りかたもわからない
という。
勇者となった友人、森田誠治と一緒に旅を続けやっと
終わりを迎えたのだった。
そして長い旅の末、魔王を倒した勇者一行。
途中で仲間になった聖女のレイネ。
戦士のモンド・リオールと共に、ゆっくりとした生活
を続けていたのだった。
そこへ、皇帝からの打診があった。
勇者と皇女の結婚の話だった。
どこに行ってもモテまくる友人に呆れるように陸は離
れようとしたのだったが……。
幼馴染が「お願い」って言うから
尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。
「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」
里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。
★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2)
☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。
☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる