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しおりを挟む後日、BL粛正委員会室にて。
「委員長が副委員長と一緒に検閲作業なんて珍しいですね」
「まあな。後学のためだ」
黙々と禁書を読み進める茨に、質問をした一年の桃園 律は密かに羨望の眼差しを向けていた。
部下の管理統制だけでなく、常に己の研鑽も惜しまないその姿勢……流石委員長だ。
憧れの存在をそのキラキラした目に映していると、机の配置的な問題で、視界の左側を埋め尽くす位置にPCを叩く林堂の姿が映る。
あまりに早いキーボード捌きで機械的に文字を打ち込んでいる様子だったので、何をそんなに入力する業務があるのかと、律は素直に気になった。
「副委員長は何をしているんですか?」
「禁書を密造した違反者に、再発防止のための警告文送ってる」
「へえ……うわ画面黒っ!文字多っ!こっ、こんなに書いてるんですか?」
「これでもまだまだ足りないくらいだよ。でもあんまり長くても(作家の)先生が読むの大変かなとか思ってさ、一応抑えてる感じ?みたいな?」
「先生……一度教師に見せるんですね?……あれ?こんな特殊なピンクのメールフォームありましたっけ?えっと、ま、しゅ…?」
「過激な文章をAIで弾いてくれる機能がある警告文専用のツールだよ。文字数制限はあるけど匿名で送れるから、俺みたいな認知されたくないタイプの人間にはありがたいんだ」
「はあ……。あれ、あの、なんか今副委員長が送ったやつ、文末にチラッと『次回作も期待してます』とか見えたんですけど、これって本当に警告文ですか?」
「当たり前だろ。これはあれだよ饅頭怖い的なあれだよ。『次回作に期待』って書くことで言外に『お前次回があったらどうなるかわかってんだろうな』って脅してるんだよ。立派な警告文だよ当たり前だろ」
律は、ことあるごとに自分を小馬鹿にしてくる林堂のことを正直好きになれないでいた。しかし、委員会に関わる知識だけは素直に敬意を払っているし、早く追いつきたいとも思っている。
警告文に関しても、律は禁書そのものを読んだことがないため、当然書いた経験もなく、先程の林堂の説明を半分も理解できた気がしない。こういう瞬間にこそ、自分の知識不足を骨身に染みて思い知らされるのだ。
しかし、だからこそこのままでは終われない。
律は、茨委員長の学び続ける姿勢を改めて思い出す。
『出来ない』、『やりたくない』をいつまでも隠れ蓑にせず、今こそ新たな知識を習得するべきではないだろうか。今がその時なのではないだろうか…!
そのためには、たとえ苦手な副委員長であっても頭を下げ、教えを乞うべきだ。それは礼儀であり、自身の成長のためでもある。
律は決意を固めると、勇気を出して林堂に声をかけた。
「あ、あの……、今後の参考にしたいので、良ければ送信済みの文面を、その、見せて、もらえませんか」
「え?嫌だけど」
「死んでください」
「まっすぐな殺意!だ、だって~自分の感想人に読まれるの恥ずかしいじゃん」
「感想?僕が見せて欲しいのは警告文なんですが…」
「てか何、誰?いや誰かはわかるけど、何なのそのフルフェイス防護服。さっきからシュコーシュコーうるさいんだけど。誰も何も言わないから俺も今まで触れなかったけどさあ……。プリッツっていうかもうそれは冬季限定のポッ◯ーだろ。そんな変な格好しててクラスでイジメられないの?」
「あなたはいつもそうやって僕を馬鹿にして!!これはパパから買ってもらった高性能の防護服で、年中温度湿度管理がっ、」
「静かにしろお前ら!タケシの告白シーンに集中出来ないだろ!」
私立ルミナス学園。
ここは、男同士の恋愛を禁じていることで有名な一風変わった学園。
今日も学園では、BL粛清委員会によって平和と秩序が保たれていた。
おわり
──BL取締規定──
【第一条 交際の禁止】
男子生徒同士が恋愛関係、またはそれに類する関係を結ぶことを禁ず。
【第二条 過度な接触の禁止】
男子生徒同士の抱擁・手つなぎなど、親密とみなされる行為を禁ず。
【第三条 表現物の禁止】
BLを示唆・助長する創作物、文書、画像、映像等の所持・制作・頒布を禁ず。
【第四条 報告の義務】
違反行為を見聞した者は、速やかにBL粛清委員会へ報告すること。報告を怠った場合、同様に処分の対象とする。
【第五条 違反者の処遇】
違反者は粛清委員会・理事の審議を受け、必要に応じて指導・奉仕活動・停学・退学・その他の処分を科す。
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