【完結】【R18】この国で一番美しい母が、地味で平凡な私の処女をこの国で最も美しい男に奪わせようとしているらしい

魯恒凛

文字の大きさ
48 / 50

48.

しおりを挟む
 それから一年後の王城勤め最後の日。

 クロエは備品管理課の先輩たちに送迎会を開かれていた。場所は王城からも近い、商店街にある酒場だ。

「それにしても、クロエかわいくなったわ~」
「あ、ありがとうございます」

 はにかむクロエはベビーブルーとオフホワイトの清楚なワンピースを着ている。ハーフアップにした髪には精巧な銀細工が飾られ、どこかのお嬢様のような上品な雰囲気が漂う。

「一年前までおさげ髪に黒ぶち眼鏡をかけていた、垢抜けない女官だったのにねえ。あの眼鏡、伊達だったんだって? 馴染み過ぎててわからなかったわ」
「うんうん。クロエって田舎から出てきた女の子って感じだったわよね。誰がどう見ても処女だったし」
「せ、先輩、」

 周囲に聞こえないかとクロエがあたふたする。饒舌な先輩の口を閉じようとするが既にアルコールが回っている様子。滑らかな舌が止まらず、クロエはおろおろしていた。

「ほんと。それが今や見てよ、この外見。透明感のある肌にちょっと垂れ目のアンバーの小さな瞳。小さな鼻に小さなおちょぼ口。庇護欲そそる小動物系女子に大変身よ」
「先輩、何気に褒めてませんよね?」

 ジト目で見る本人を無視し、この一年の間のクロエの変化に皆が盛り上がる。

「それよ、それ。まあ、元々構いたくなるタイプではあったんだけどさあ、決して美人ってわけじゃないのに、こう、触れたくなるっていうの? 膝にのせたくなるっていうか……」
「な、なんで膝にのせるんですか!」
「そういうところよ。初心だからついつい揶揄いたくなっちゃうのよね~」

 おちょぼ口をきゅっと尖らせて、斜め下を見ながらクロエが反論する。

「わ、私、……もう、シちゃってるんで、初心なんかじゃないです」
「そんなに真っ赤な顔して、それ言うの?」

 先輩がローズマリーとオリーブオイルのラムラックを取り分けながらクロエを揶揄う。

「それにしても、『青き夜想曲の貴公子』をまさかクロエが落とすなんてねえ。人生って何があるかわからないわ」
「ほんと! 婚約が発表されてもうすぐ半年だったわよね? お互いの両親に合わせるのって気まずくなかった? 私、もうすぐ彼の母国に行って家族に会うんだけど大丈夫かなあ」
「ああ、魔道具課のアリスタ・レッドウッドだったっけ? 警報鳥が縁になるっていうのもすごいわよね~」

 追加ワードの設定に出向いた魔道具課で運命の出会いを果たした二人。お互いドストライクの容姿だったのだとか。

「クロエはお父様がこちらにいらしたんだった?」
「はい、母を迎えに来た時にテオン様ともお会いになられて……」
「クロエのお母様がマダムジョスティーヌだったことにも驚いたけど、お父様はオラクルム神聖国の宰相に就かれたんでしょう? クロエってば貴族のご令嬢だったのね」

 イサク・ガルシアは側近を務めていた王弟が王位に就いたことで、宰相を務めることになったのだ。
 ガルシア伯爵家は侯爵家に、クロエも自動的に侯爵令嬢の肩書を得てしまった。

「だけど、侯爵令嬢の肩書もすぐになくなっちゃうわね。テオン様と結婚したら令嬢じゃなくなっちゃうもの」
「ああ。小侯爵夫人になるんだものね。テオン様が婿入りされるんでしょう?」
「はい。テオン様は三男なので婿入りしてくださることになりました」

 宰相補佐としてその手腕を振るうことが期待されているテオン。元々優秀であることはここヴェルシャンティール王国でも周知されていたのだ。

 その姿を想像して、皆がごくりと喉を鳴らす。

「冷ややかな美貌の鬼畜宰相補佐とかエロくない?」
「眼鏡かけてぐいぐい言葉責めしてほしいわ」
「詰りながら優しい手つきとか最高よね」
「せ、先輩!」

 真っ赤になるクロエだったが、内心で思っていた。

(や、やばい、眼鏡をかける鬼畜なテオン様なんてイメージぴったりすぎる)

「そういえば、ルイジアナ王女殿下の話、聞いた?」
「あのユリシーズ・バーニーと婚約したんでしょう!? 驚いたわ……」
「ルイジアナ殿下、何だかんだで処女だったらしいんだけど。バーニー卿の毒牙にかかって、ドはまりしちゃったんだとか……」

「「「……」」」

「まあ、なんというか……。お互いにそれでいいなら良かったわよね。ね、クロエ」
「は、はい……」

 その時、わっという歓声が上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...