ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせるDK真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

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第2話 特等席~爆弾

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灰谷が前、オレが後ろ。
チャリにタンデムして高校までは約十五分。

「真島、節子に言ってねえの?バイクのこと」
「ああ。どうせ反対すっから、事後報告する。しかし、いつ買えっかな」
「オマエがバイト代貯めときゃ三ヶ月もありゃ買えるだろ」
「まあな、せっかく原付免許取ったのにバイク買ってくれねえとはな。高校出るまでダメってどういうことだよ」

オレはボヤく。

「バイク事故率高いからな。んで、オマエがバイク買えるまでオレ、毎朝チャリで迎えにくるわけ?」
「もらった自転車代をバイク代に回したいんだよね。まあいいじゃん、灰谷くん。カワイイ節子も喜ぶし。弁当作ってもらえばお昼代も浮くでしょうが」

オレは灰谷の背中をバシバシと叩く。

「痛い。そりゃそうだけど。オレ、オマエんち寄るんでいつもより三十分早く起きてんだけど」
「まあまあ。ギブアンドテイクで行こうぜ」
「ギブが多い気がする……」
「気のせい気のせい」

日差しは強いけれど、自転車の後ろは気持ちイイ。
オレの特等席。

あ~いいな。
いつまでもこうしてこいつの後ろに乗っていたい。
のんびりゆっくり風に吹かれて。


「……あのさ、真島」
「ん~?」
「オレさ……」
「ん~」

眠い。まだ眠い。
つうかコイツの背中、眠気を誘う。
なんか出てんじゃないの。
うっかり広い背中に頬をこすりつけちゃいそう。

「真島って」
「んあ~眠ぅ~」
「昨日さ」
「あっ、ワリぃ。バイト、シフト代わってもらって助かったわ」
「まあそれはいいんだけど。実はオレさ、高梨さんに……」

高梨さん?明日美ちゃん?明日美ちゃんがどうしたって?


「真島~灰谷ぃ~よう!ようようよう!」

朝からテンションの高い佐藤の声がした。
気がつけばいつもの交差点で中田と佐藤のデコボココンビの姿が見えた。

オレはチャリから降りる。
交差点で二人に会って、そのまま四人で歩いて学校まで、これがいつものパターン。

「ウイ~っす」
「ウイ~っす!」

あいさつをかわす。

「ようタンデムズ、今日もお揃いだね~」

佐藤のデカ声に中田が顔をしかめる。

「オマエ、朝からうるさい佐藤」
「中田はいっつもオレ否定。褒められて伸びる子なのに」
「の、割には背が伸びねえな」
「悪かったな。中田と灰谷がデカすぎるんだよ」

灰谷と中田は高校二年にしてすでに百八十近い高身長。
オレはその中間で百七十ちょい。
それに比べて佐藤は百六十を少し越えるくらいだった。

小さいカラダでいつも元気な佐藤とデカくてクールな中田。
二人のいつものやり取り。

「ようサトナカ。朝からモメんなよ」

オレは昨日思いついた言葉を振ってみる。

「モメてねえよ。なんだよサトナカって」
「佐藤と中田でサトナカってどう?」
「なんでオレより佐藤が前なんだ」

中田が文句をつける。

「ナカサトより座りがいいじゃん」
「それならオマエらはマジハイだな」

中田がオレと灰谷を見て言う。

「真島と灰谷でマジハイか」
「ハイマジのがよくない?」

くだらないことをダラダラ喋りながら登校する。

オレ、真島と小学校からの幼なじみの灰谷。
そんで高校から仲良くなった中田と佐藤。
バカやる四人組。


あれ?そういえば灰谷さっきなんか言いかけなかったっけか?
まいっか。


「あ~それにしても彼女ほし~」

いつものように佐藤が言い出した。

「オマエそればっか」
「中田はいるからいいじゃねえかよ。杏子ちゃん」
「作りゃいいだろ」
「作れりゃ作ってる。オマエ欲しくねえ?真島」

佐藤がオレに振る。

「別に。オレ、オマエらといる方が楽しいもん」
「真島はいつもそれだな。灰谷は?なんかちょくちょく手紙とかもらってんじゃん」

灰谷は背が高いのに加えて、頭が小さくてスタイルがよくてツラがいい。
うちのババアを筆頭に女どもは灰谷を見るとみなデレる。
その気にさえなれば、よりどりみどりだ。

「ん~女めんどくせえ」

そう灰谷が言って終わるのが、お決まりのやりとりだった。


それが、その日、灰谷がこう言った。

「ん~それがさぁ」
「あ?女できたとか言うんじゃねえだろうな灰谷」
「つうかさ……」
「つうかさってなんだよ。どうしたんだよ」

佐藤が食いついた。

「いやあ……昨日、告られてさ」
「え?また?誰に誰に?オレも知ってる子?」
「いや、コンビニでいっしょの……」
「いっしょにバイトしてる子?」
「うん」
「真島は知ってんの?」

心臓がヒュッと音をたてた。


「高梨……明日美ちゃん?」
「ああ」

「高梨明日美!」

佐藤のテンションが一気に上がった。

「佐藤、オマエ知ってるの?」
「隣りの駅の女子高の子だよ中田。マシュマロうさぎ」
「なんだそりゃスイーツか」
「極上スイーツ!色白くて小さくてふわっふわっ。黒目がちで、黒髪ロング。そんで、隠れ巨乳」
「隠れてんのになんでわかるんだよ」
「体育祭!ボイ~ン」
「お前の関心は乳一点だな」

呆れたように中田がつぶやく。

「この辺りじゃピカイチでしょ。うお~高梨明日美に告られたの。すんげえな灰谷」

オレは平静を装って聞いた。

「んで、付き合うの?」
「ん~っ……どうしたもんかと」

そこは女めんどくせえ、じゃないのかよ。

「返事してねえの?なんで?なんでしね~の。迷うことねえだろ」

佐藤がさらにツッコむ。

「ん~まあいい子だし、断る理由もないっちゃないんだけど」
「そりゃあないよ。あるかよそんなの。え~じゃあ彼女いないのはオレと真島だけになっちゃうな」


・・・。
思考が停止する。
灰谷が高梨明日美と付き合う……。


「なあ真島?」
「え?」
「あれ?あれあれ?もしかして真島くん、明日美ちゃんの事好きだったりして。で、ショック受けてたりして~」

みんなの視線が集まる。
灰谷がオレの顔をのぞきこむ。

そうじゃなくて……そうじゃなくてさ。
オレが好きなのは……。

「違うよバ~カ。オレ、オッパイはあんまりないほうがいい」
「え~オレはあればあるだけいい~」
「佐藤、オマエは母ちゃんのオッパイでも吸ってろ」
「なんだよ中田の彼女の杏子ちゃんだってデカイじゃん」
「たまたまだ。育っただけだ。昔はなかった」
「あ~自分が育てたとか言っちゃうやつ?なんだよぉ~」

灰谷がオレの様子をうかがっている気配がする。
ヤバイ。
オレは佐藤の肩に腕を回す。

「じゃあ、オレとホモるか、佐藤」
「やめろよ~」
「いや、サルだっているんだってよ、ホモ」
「うそだろ~」
「いやいや、オスだけのグループがあってさ、ちゃんとヤってんだって」

前にどっかで聞きかじったネタをオレは披露する。

「それはさ、メスがいない代償行為であって、ホモじゃねえよ」

何を冷静に言ってくれちゃってんだ灰谷。

「じゃあ、オレと真島はモテないから代償行為でホモれっての?」
「わかったオレは佐藤を愛するよ。んならいいんだろ?佐藤、愛してる」
「何いってんの真島。やめて、オレを愛さないで」

「つうかさ、モテないのは佐藤、オマエだけじゃん。杏子、友達からマジハイ紹介してってよく言われるらしいぞ」
「マジハイ?」
「真島と灰谷。この間も『マジー、色白くて細くて顔カワイイ~。ハイター、マジイケメンでスタイルいいし、モデルとかやればいいのにぃ~』って言ってたし」

中田の彼女の杏子ちゃんはオレたちに変なアダ名をつけている。
真島でマジー。灰谷でハイター。そして佐藤でサティ。

「え?そうなの?佐藤は?佐藤は?サティはなんだって?」
「あ?『サティなんかちっちゃくってキュッとしててスケベそう~』って言ってた」
「!ガッデム!!男がスケベだからこの世は子々孫々続いとんのじゃい。つうか中田モノマネ、キモっ」
「うるせえよ。真島、杏子の友達、紹介しようか」
「紹介してもらえよ真島」
「いいよ」
「なあんでだよ~。女欲しくねえの?」

女。女か……。

「……オレさ、好きなやつと付き合いたい。断る理由がないとかヤなんだよな」

ついつい言ってしまった。

「おおっ、灰谷全否定?」

佐藤がチャカす。
灰谷がムッとした顔をする。

「付き合ってみないとわかんねえだろ」

付き合うのかよ!

「だな。せいぜい明日美にオッパイ吸わせてもらえや」
「乳乳うるせえなオマエらは~。つうかもう朝、迎えに行ってやんねえぞ」
「おっ来んな来んな。これから乳搾りで忙しいだろうからよ」
「なんだとコラ。まだ決まってないっつーの」
「やめろやめろ。めずらしいなオマエら」

中田が間に入ってくれた。
オレは佐藤の肩を抱いて言う。

「じゃあ愛しの佐藤、オレたちは代償行為とやらで、とりあえずマスでもかきあうか」
「やめろよ~ナマナマし~愛さないでって~」
「おらおら溜まってんだろ。オレの愛を受け入れろ」
「いや~オレの貞操が~」

なんとかその場を乗り切ったけど、オレの気持ちは急速に下降していった。

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