61 / 154
第61話 女の子とのキス
しおりを挟む
それにしても……結衣ちゃん遅いな。
帰っちゃったとか?
電話する?
その時、ガチャッとドアを開けて結衣ちゃんが帰ってきた。
「遅かったね」
「あたし、歌うね」
「うん」
結衣ちゃんは覚悟を決めたみたいな顔をしていた。
「何歌うの?」
「あのね、少しはマシに歌えるかなってやつにするね。YUIの『CHE.RR.Y』って曲知ってる?」
「あ、知ってる」
結衣ちゃんだけにYUI……ね?
「がんばってみる」
いやいや、別にがんばらなくても。
イントロが流れ出した。
オレは結衣ちゃんにマイクを渡す。
結衣ちゃんは不安そうな顔でマイクを受け取ると緊張した顔で両手でマイクを掴み、カラダでリズムをとる。
大きく息を吸って歌い始めた。
♪手のひらで震えた それが小さな勇気になっていたんだ
!!!
なんだこの棒読み。
♪絵文字は苦手だった だけど君からだったら ワクワクしちゃう
す……すげえ!お経?
結衣ちゃんは眉間にシワをよせて一生懸命歌っている。
顔に似合わず絶品にオンチな結衣ちゃんの歌声だった。
♪かけひきなんて できないの
オレは地を這うような低音と絞め殺された鳥のような高音のコンボににふつふつと、こみ上げる笑いをこらえた。
しかし、それは次の瞬間はじけとんだ。
♪好きなのよ~ah ah ah ah
なっ何?オットセイ?発情期のオットセイ?
♪恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう?
オレはとうとう吹き出した。
必死で歌い続ける結衣ちゃんを尻目にオレは笑いが止まらなかった。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっ」
好きなのよ~ah ah ah ah
顔を真っ赤にしたオットセイがオウオウ前ヒレを叩く絵が浮かぶともうダメだ。
ダメだ。耐えられない。
痛い。腹が痛い。
ヤバイ。ツボに……ツボに入った。
オレの笑いが止まらないので結衣ちゃんは歌うのをやめてカラオケを切った。
「何~なんでそんなに笑うの~」
「いや、結衣ちゃん、すんげえわ。ハハ。腹筋痛え」
「ひど~い。これでもよくなったほうなんだけど~」
「これで?くくく。あ~腹痛え。それってマジだよね。ウケ狙いとかじゃないよね」
オレは涙を流す。
「正真正銘マジ歌いだよ~」
「すげえ。最高。ハハハハ。佐藤だってここまでひどくないよ。原曲全然ないじゃん。はじめはお経……くくく……で、最後にオットセイ出た。オウオウオウって……。痛い痛い腹痛い」
「ひど~い。だからオンチだって言ったのにぃ~歌わせたの真島くんじゃん」
結衣ちゃんがむくれた。
「ハハハハハ。悪い悪いツボに入っちゃって……。ハハハハハ」
気がつけば結衣ちゃんがオレを見つめていた。
ありゃ、笑いすぎたか?
「ごめんごめん。怒った?」
「怒った。でも、真島くんがそんなに笑ってくれて……ちょっと、嬉しい」
あ、ホントに嬉しそうな顔。
オレのこと、そんなに好き?
自分に向けられる好きという感情。
わかりやすいね。
そんなにわかりやすいと、つけこまれちゃうよ。
オレみたいなのに。
手を伸ばして結衣ちゃんの頬にそっと触れた。
ピクリとカラダが震えた。
オレは目を見ながら顔をゆっくりと近づける。
逃げない。
チュッ。ついばむようにキスをした。
チュッチュッ。
結衣ちゃんは目を閉じて身を固くしている。
顔を両手で挟みこむ。
小さいな。
小さい顔小さいアゴ。
城島さんとは、男とは……違う。
なんだろうふんわりって感じ?
そう、なんだか全体に壊れそうなんだ。
上唇下唇全体と包みこむように口づけた。
結衣ちゃんの唇は柔らかい。
夢中で受け止めている結衣ちゃんの顔。
スカートの上でキュッと握られた小さな手を上から包み、口の脇を親指と中指でキュッとはさむ。
口が少し開くから舌を滑りこませた。
とまどって後ろに引く頭を優しく抱えこみながらカラダを引きよせる。
奥へ逃げる結衣ちゃんの舌を追いかける。
されるがままだった結衣ちゃんの舌が、次第にオレの動きに応えてくる。
腕がオレの背中に回された。
体温のあがったカラダ。
バクバクしている心臓の鼓動。
柔らかいカラダの感触。
男とは違う。
互いの力をぶつけ合うようなガッシリとした骨も筋肉も力強さもなかった。
そう、まるでマシュマロだ。
唇を離すと結衣ちゃんがゆっくり目を開けた。
その頬は赤く染まり目がうるんでいる。
あれ?これ、もう少し押せるかな?
「もっとくっつける場所、行く?」
「え?」
結衣ちゃんは、うつ向いた。
早かったか。まあいいけど。
「ごめん……なんか……」
「うん、行く」
結衣ちゃんは小さな声で言った。
あらら。
帰っちゃったとか?
電話する?
その時、ガチャッとドアを開けて結衣ちゃんが帰ってきた。
「遅かったね」
「あたし、歌うね」
「うん」
結衣ちゃんは覚悟を決めたみたいな顔をしていた。
「何歌うの?」
「あのね、少しはマシに歌えるかなってやつにするね。YUIの『CHE.RR.Y』って曲知ってる?」
「あ、知ってる」
結衣ちゃんだけにYUI……ね?
「がんばってみる」
いやいや、別にがんばらなくても。
イントロが流れ出した。
オレは結衣ちゃんにマイクを渡す。
結衣ちゃんは不安そうな顔でマイクを受け取ると緊張した顔で両手でマイクを掴み、カラダでリズムをとる。
大きく息を吸って歌い始めた。
♪手のひらで震えた それが小さな勇気になっていたんだ
!!!
なんだこの棒読み。
♪絵文字は苦手だった だけど君からだったら ワクワクしちゃう
す……すげえ!お経?
結衣ちゃんは眉間にシワをよせて一生懸命歌っている。
顔に似合わず絶品にオンチな結衣ちゃんの歌声だった。
♪かけひきなんて できないの
オレは地を這うような低音と絞め殺された鳥のような高音のコンボににふつふつと、こみ上げる笑いをこらえた。
しかし、それは次の瞬間はじけとんだ。
♪好きなのよ~ah ah ah ah
なっ何?オットセイ?発情期のオットセイ?
♪恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう?
オレはとうとう吹き出した。
必死で歌い続ける結衣ちゃんを尻目にオレは笑いが止まらなかった。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっ」
好きなのよ~ah ah ah ah
顔を真っ赤にしたオットセイがオウオウ前ヒレを叩く絵が浮かぶともうダメだ。
ダメだ。耐えられない。
痛い。腹が痛い。
ヤバイ。ツボに……ツボに入った。
オレの笑いが止まらないので結衣ちゃんは歌うのをやめてカラオケを切った。
「何~なんでそんなに笑うの~」
「いや、結衣ちゃん、すんげえわ。ハハ。腹筋痛え」
「ひど~い。これでもよくなったほうなんだけど~」
「これで?くくく。あ~腹痛え。それってマジだよね。ウケ狙いとかじゃないよね」
オレは涙を流す。
「正真正銘マジ歌いだよ~」
「すげえ。最高。ハハハハ。佐藤だってここまでひどくないよ。原曲全然ないじゃん。はじめはお経……くくく……で、最後にオットセイ出た。オウオウオウって……。痛い痛い腹痛い」
「ひど~い。だからオンチだって言ったのにぃ~歌わせたの真島くんじゃん」
結衣ちゃんがむくれた。
「ハハハハハ。悪い悪いツボに入っちゃって……。ハハハハハ」
気がつけば結衣ちゃんがオレを見つめていた。
ありゃ、笑いすぎたか?
「ごめんごめん。怒った?」
「怒った。でも、真島くんがそんなに笑ってくれて……ちょっと、嬉しい」
あ、ホントに嬉しそうな顔。
オレのこと、そんなに好き?
自分に向けられる好きという感情。
わかりやすいね。
そんなにわかりやすいと、つけこまれちゃうよ。
オレみたいなのに。
手を伸ばして結衣ちゃんの頬にそっと触れた。
ピクリとカラダが震えた。
オレは目を見ながら顔をゆっくりと近づける。
逃げない。
チュッ。ついばむようにキスをした。
チュッチュッ。
結衣ちゃんは目を閉じて身を固くしている。
顔を両手で挟みこむ。
小さいな。
小さい顔小さいアゴ。
城島さんとは、男とは……違う。
なんだろうふんわりって感じ?
そう、なんだか全体に壊れそうなんだ。
上唇下唇全体と包みこむように口づけた。
結衣ちゃんの唇は柔らかい。
夢中で受け止めている結衣ちゃんの顔。
スカートの上でキュッと握られた小さな手を上から包み、口の脇を親指と中指でキュッとはさむ。
口が少し開くから舌を滑りこませた。
とまどって後ろに引く頭を優しく抱えこみながらカラダを引きよせる。
奥へ逃げる結衣ちゃんの舌を追いかける。
されるがままだった結衣ちゃんの舌が、次第にオレの動きに応えてくる。
腕がオレの背中に回された。
体温のあがったカラダ。
バクバクしている心臓の鼓動。
柔らかいカラダの感触。
男とは違う。
互いの力をぶつけ合うようなガッシリとした骨も筋肉も力強さもなかった。
そう、まるでマシュマロだ。
唇を離すと結衣ちゃんがゆっくり目を開けた。
その頬は赤く染まり目がうるんでいる。
あれ?これ、もう少し押せるかな?
「もっとくっつける場所、行く?」
「え?」
結衣ちゃんは、うつ向いた。
早かったか。まあいいけど。
「ごめん……なんか……」
「うん、行く」
結衣ちゃんは小さな声で言った。
あらら。
0
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる