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第85話 話せよ オマエがオレに話したいこと全部
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コンコン。
ドアをノックして、部屋のドアを開けると真島はベッドの中にいた。
「灰谷」
灰谷の顔を見ると微笑んでカラダを起こした。
「ウイッス!起き上がって大丈夫か?」
「ん?平気平気」
「ほれお見舞い」
「ありがとう。おっ、イチゴオーレ。また久子母ちゃんのパクって来たのか?」
「ちがう。買ってきた」
「おっ、ミニゴールドスナックとマヨコーンパン」
「オマエ好きじゃん」
「うん。ありがと。ペプシ」
「おう」
灰谷はベッドの横に腰を下ろした。
なんだか痩せたなこいつ。顔白いし。
真島はいつもより頼りなげに見えた。
「熱中症だって?ダッセぇ」
「ああ。ダサいな。入院とかもっとダサい。来てくれたんだって?ありがとな」
「うん」
「あ、カーディガン、また病院に忘れてったろ。そこにある。母ちゃんが洗濯してたぜ」
「そっか。節子にお礼言わないと」
真島はイチゴオーレにストローをさして、チューチュー吸った。
「もういいの?」
「うん。母ちゃんが寝とけってうるさいからさ。あ、バイトのシフト、昨日今日代わりに入ってくれたんだって。悪かったな。予定あったんじゃないのか」
「ん?別にねえし。いいよ。カネになる」
「カネかあ~。結局全然貯まんなかったなあ。今年の夏」
「まだ日にちあるじゃん」
「まあな」
真島のベッド。
この間、真島はこのベッドで結衣ちゃんにしゃぶられてたんだよな……って、やめろオレ。
灰谷は強く首を振った。
「どした灰谷」
「いや、別に……」
「灰谷。オレ、結衣ちゃんに別れてくれって言ったわ」
静かな声で真島が言った。
「ああ……聞いた」
「明日美ちゃんか」
「うん。ソッコー電話来た」
「なるほど」
真島は小さく何度もうなずいて腕を組んだ。
「ん~。結局、灰谷の言う通りになっちまった」
「うん……」
灰谷も小さくうなずいた。
「それもこれも、オレがダメで弱いからだ」
「真島はダメなんかじゃねえよ。それに……強い人間なんかいない」
「おっ、名言出ました」
「チャカすな」
「うん。……うん。そうだな。チャカしちゃダメだ……」
真島はまた小さく何度もうなずいた。
「あのさあ真島、オレ、気になってることがあってさ」
「結衣ちゃんのこと?それで来たんだろ。明日美ちゃんに頼まれた?」
「いや、それは、オマエら二人のことだから。話したいなら聞くけど」
「う~ん。話したくはないかな。多分、灰谷の思ってる通りだから」
「じゃあ、聞かない」
「うん」
「じゃなくて……」
自分から言い出したものの灰谷は少し躊躇した。
真島がこんな状態の時に聞くことでもなかった。
でも、それがこのもろもろの事態の始まりのような気が灰谷にはしていた。
「ずっと気になってて。で、なんかそのせいでオマエとこう~ギクシャクっていうか。言いたくなければ言わなくていいんだけど」
「もしかして、城島さんのこと?」
真島の方からその名前が出てきた。
「ああ」
「うん。あの人がセフレ」
真島はあっさりと認めた。
「……そっか」
「灰谷、オレ、男ともできるんだ。女ともできるんだけど。こういうのバイって言うんだっけ?むしろ男のほうがいいんだけどさ」
冗談めかして真島は言った。
「そうか」
「ワリぃな、気持ち悪いだろこんな話」
「いや。まあ、ビックリはしたけど。つうか……してる」
「ずっと言えなくて。いや言う事なのか?そもそもこういうの。オレもあの人と出会ってわかった事だし」
「そっか」
「んでもさ佐藤に見られたって言われた時、すんげえ怖かった。本当のこと知ったらオマエが……オマエらが離れていっちゃうんじゃないかって。でも、灰谷の言葉、うれしかったよ」
「おう。その後、聞きたくないとか言っちゃったけどな」
「ああ。まあ。でも……しょうがねえよ。オレだってオマエにこんな話、しないでいいならしたくねえもん。聞きたくないってのだってしょうがねえよ」
しょうがなくねえよ。
オレ、あんなカッコつけた事、言っといて逃げたんだから。
「で、結衣ちゃんと別れて、あの人と……付き合うのか?」
「いや」
「なんだよ」
「……」
「言えよ」
「城島さんとも別れた」
「え?」
「まあ始めから付き合ってるっていうんじゃなくて、本当にセフレって言うか。カラダだけって言うか。もう会わない。会っちゃいけない」
会っちゃいけない?
灰谷には随分と意味深に聞こえた。
あの日、駅で城島の腕をつかんでいた真島の切羽詰まった顔を思い出した。
「真島、オマエ無理してるんじゃないのか」
「……してないよ」
してる顔だった。
「今さらオレが言えたことじゃないかもしれないけど。オレで良ければ話せよ。オマエがオレに話したいこと全部。グチでも八つ当たりでもいい。これからはちゃんと聞く」
灰谷の言葉に真島はなんとも言えない顔をした。
なんなんだ。どうしてそんな顔するんだ。
あ、いや違う。
この顔は……一度見たことがある。
あの夏の日、坂道でふり返り、オレに何か言いかけた時の顔だ。
言いたいことがあるのに、言い出せない。
どうしても口に出せないような……顔。
悲しい顔だった。
今にも泣き出しそうな顔だった。
いいよ真島、なんでも話せよ。
灰谷は真島を見つめた。
二人はひと時、見つめ合った。
先に目をそらしたのは真島だった。
「フゥ~」
真島は大きく息を吐いて、そして灰谷を見て笑った。
無理やり作ったような笑顔だった。
「じゃあアスミルクもいいけど、もっとオレとも遊んでくれ」
「……おう。つうか、アスミルク言うな」
「ハハ。あ~腹減った~パン食おう」
そう言うと真島は何事もなかったように灰谷の持ってきたパンに食いついた。
ドアをノックして、部屋のドアを開けると真島はベッドの中にいた。
「灰谷」
灰谷の顔を見ると微笑んでカラダを起こした。
「ウイッス!起き上がって大丈夫か?」
「ん?平気平気」
「ほれお見舞い」
「ありがとう。おっ、イチゴオーレ。また久子母ちゃんのパクって来たのか?」
「ちがう。買ってきた」
「おっ、ミニゴールドスナックとマヨコーンパン」
「オマエ好きじゃん」
「うん。ありがと。ペプシ」
「おう」
灰谷はベッドの横に腰を下ろした。
なんだか痩せたなこいつ。顔白いし。
真島はいつもより頼りなげに見えた。
「熱中症だって?ダッセぇ」
「ああ。ダサいな。入院とかもっとダサい。来てくれたんだって?ありがとな」
「うん」
「あ、カーディガン、また病院に忘れてったろ。そこにある。母ちゃんが洗濯してたぜ」
「そっか。節子にお礼言わないと」
真島はイチゴオーレにストローをさして、チューチュー吸った。
「もういいの?」
「うん。母ちゃんが寝とけってうるさいからさ。あ、バイトのシフト、昨日今日代わりに入ってくれたんだって。悪かったな。予定あったんじゃないのか」
「ん?別にねえし。いいよ。カネになる」
「カネかあ~。結局全然貯まんなかったなあ。今年の夏」
「まだ日にちあるじゃん」
「まあな」
真島のベッド。
この間、真島はこのベッドで結衣ちゃんにしゃぶられてたんだよな……って、やめろオレ。
灰谷は強く首を振った。
「どした灰谷」
「いや、別に……」
「灰谷。オレ、結衣ちゃんに別れてくれって言ったわ」
静かな声で真島が言った。
「ああ……聞いた」
「明日美ちゃんか」
「うん。ソッコー電話来た」
「なるほど」
真島は小さく何度もうなずいて腕を組んだ。
「ん~。結局、灰谷の言う通りになっちまった」
「うん……」
灰谷も小さくうなずいた。
「それもこれも、オレがダメで弱いからだ」
「真島はダメなんかじゃねえよ。それに……強い人間なんかいない」
「おっ、名言出ました」
「チャカすな」
「うん。……うん。そうだな。チャカしちゃダメだ……」
真島はまた小さく何度もうなずいた。
「あのさあ真島、オレ、気になってることがあってさ」
「結衣ちゃんのこと?それで来たんだろ。明日美ちゃんに頼まれた?」
「いや、それは、オマエら二人のことだから。話したいなら聞くけど」
「う~ん。話したくはないかな。多分、灰谷の思ってる通りだから」
「じゃあ、聞かない」
「うん」
「じゃなくて……」
自分から言い出したものの灰谷は少し躊躇した。
真島がこんな状態の時に聞くことでもなかった。
でも、それがこのもろもろの事態の始まりのような気が灰谷にはしていた。
「ずっと気になってて。で、なんかそのせいでオマエとこう~ギクシャクっていうか。言いたくなければ言わなくていいんだけど」
「もしかして、城島さんのこと?」
真島の方からその名前が出てきた。
「ああ」
「うん。あの人がセフレ」
真島はあっさりと認めた。
「……そっか」
「灰谷、オレ、男ともできるんだ。女ともできるんだけど。こういうのバイって言うんだっけ?むしろ男のほうがいいんだけどさ」
冗談めかして真島は言った。
「そうか」
「ワリぃな、気持ち悪いだろこんな話」
「いや。まあ、ビックリはしたけど。つうか……してる」
「ずっと言えなくて。いや言う事なのか?そもそもこういうの。オレもあの人と出会ってわかった事だし」
「そっか」
「んでもさ佐藤に見られたって言われた時、すんげえ怖かった。本当のこと知ったらオマエが……オマエらが離れていっちゃうんじゃないかって。でも、灰谷の言葉、うれしかったよ」
「おう。その後、聞きたくないとか言っちゃったけどな」
「ああ。まあ。でも……しょうがねえよ。オレだってオマエにこんな話、しないでいいならしたくねえもん。聞きたくないってのだってしょうがねえよ」
しょうがなくねえよ。
オレ、あんなカッコつけた事、言っといて逃げたんだから。
「で、結衣ちゃんと別れて、あの人と……付き合うのか?」
「いや」
「なんだよ」
「……」
「言えよ」
「城島さんとも別れた」
「え?」
「まあ始めから付き合ってるっていうんじゃなくて、本当にセフレって言うか。カラダだけって言うか。もう会わない。会っちゃいけない」
会っちゃいけない?
灰谷には随分と意味深に聞こえた。
あの日、駅で城島の腕をつかんでいた真島の切羽詰まった顔を思い出した。
「真島、オマエ無理してるんじゃないのか」
「……してないよ」
してる顔だった。
「今さらオレが言えたことじゃないかもしれないけど。オレで良ければ話せよ。オマエがオレに話したいこと全部。グチでも八つ当たりでもいい。これからはちゃんと聞く」
灰谷の言葉に真島はなんとも言えない顔をした。
なんなんだ。どうしてそんな顔するんだ。
あ、いや違う。
この顔は……一度見たことがある。
あの夏の日、坂道でふり返り、オレに何か言いかけた時の顔だ。
言いたいことがあるのに、言い出せない。
どうしても口に出せないような……顔。
悲しい顔だった。
今にも泣き出しそうな顔だった。
いいよ真島、なんでも話せよ。
灰谷は真島を見つめた。
二人はひと時、見つめ合った。
先に目をそらしたのは真島だった。
「フゥ~」
真島は大きく息を吐いて、そして灰谷を見て笑った。
無理やり作ったような笑顔だった。
「じゃあアスミルクもいいけど、もっとオレとも遊んでくれ」
「……おう。つうか、アスミルク言うな」
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