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第95話 自分のしたこと
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ときめく?ときめかない?
あ~めんどくせえ。
オレ、いつから断捨離ってんだっけ?
昨日の夜からはじめて、一回寝て、また朝から始めて。
もう結構な時間やってるよな。
もう――ときめかない。ときめかない。。ときめかな~い。。。
ウソっ。
これはときめく。
あぶねえ。
これ、古着だけど二万もしたシャツじゃん。
ときめきを捨てちゃうとこだったぜ。
って……オレがときめいてんのはもしかして二万って金額なんじゃ……。
わから~ん。
ふいに城島さんの言葉を思い出す。
「なあ~灰谷知ってるか」
「何?」
「自分にとって一番大事なものが何かを知るにはどうすればいいのか」
「……どうすんだ」
「今大事だと思ってるものを片っ端から捨ててみること、だって」
ええと、コレはときめかない。
「なんだそれ」
「捨ててみると、大事だと思っていたものも意外とそうじゃなかったり。逆に大事じゃないと思っていたものが大事だと気づいたり。そんで、これが一番大事なんだって気づいたりするんだと」
「そんなもん?」
「わかんないけど、そう言った人がいるんだよ」
ときめく。ときめかない。
ときめかない。ときめく。
灰谷は特に思うところもないのか、しばらくマンガを読み続けていたが、ふいに言った。
「でも真島、それって捨てたあとに大事だって気がついたらどうすりゃいいんだ。捨てちゃった後じゃん」
「それな。オレもそう言ったんだよ」
「だろ」
灰谷。
ときめく。ときめく。。ときめく。。。
ときめきのクレッシェンド。
乙女か!
「そしたらさ、またそこから始めればいいんじゃないかってさ。またそこから、その現実と向かい合ってそこから始めればいいんじゃないかって」
灰谷は眉間にシワを寄せた。
「ん~禅問答か。誰に聞いたんだ?」
「知り合い」
「ふうーん」
大事だと思ってるものを捨ててみる……か。
バンジージャンプして?スカイダイビングして?
死刑台の上で首に縄をかけて?
実際問題難しいぜ城島さん。
そんな怖いこと。
ブブー。ブブー。
スマホのバイブ音がする。
オレじゃねえし灰谷だ。
でも灰谷は動かない。
ええと。
ときめかない。ときめかない。ときめかないっと。
あれ?
ときめかないって唱えてると、大体のもんがときめかなくなる気がする。
言葉マジック?
これ、ときめくって唱えてると逆にときめいちゃうのかな?
ときめく。ときめく。ときめく。
う~ん。
いや、やっぱときめかないものはときめかねえな。
ブブー。ブブー。
まただ。
「灰谷、オマエじゃねえの?バイブ」
「ん?ああ」
灰谷は脇においたスマホの画面をチラッと見ると、電話には出ずにマンガに戻った。
ブブー。ブブー。
バイブ音は止まらない。
「出ねえの?」
「うん」
「……もしかして、明日美ちゃん?」
灰谷はマンガから顔も上げない。
「だろ?出ろよ」
「いいって」
「オレなら、大丈夫だからさ」
「いいよ。真島にタカユキ中だし」
「灰谷にタカユキしてもらう理由もそんなないけどな」
「いいんだよ。オレがタカユキしてえんだよ」
「タカユキ~つって。マンガ読んでるだけじゃん」
「なんだよ。読みたくなっても貸してやんねえぞ」
「それは困る」
「ハハッ」
やっと、バイブ音が止んだ。
ん~。続き。
もうひと踏ん張り。
ときめかない。ときめく。ときめかない。
「つうか真島、オマエ、夏休みの課題やってる?」
課題?んなものあったなそう言えば。
「まったくやってない」
「オレは三分の一くらいかな。夏休みもう残り少ないだろ。そろそろ始めた方がよくねえ?」
「だな。つうか、とりあえずこれ終わらねえと、何もできねえ」
ときめけば。ときめく時。ときめけ~。
「でさ、去年みたいに教科別に手分けしてやったらと思ってさ」
「あ~いいねえ。佐藤と中田と分担してやろう」
ブブー。ブブー
灰谷のスマホがまた震え出した。
ここまで鳴ってるのに灰谷に出ようとする気配はない。
さすがに気になる。
「オマエ、だから出ろって明日美ちゃんだろ」
「ん~いいって」
「じゃあ、LINE入れてやれば?真島くんにタカユキ中だからゴメーンって」
「ん~」
灰谷はマンガから目を離さない。
なんだよ。気になるじゃん。
「何?オマエらケンカでもしてんの」
「いや、別に」
「……もしかして、オレのせいか?オレが結衣ちゃんとあんなことになったから」
「関係ねえよ。それは関係ねえ」
灰谷はオレの顔を見て言う。
「オレと明日美の事だから。オマエには関係ない」
オレと明日美の事、か……。
「そうだな。悪かった」
「あやまんな!」
急に灰谷が大きな声を出した。
「オマエがオレにあやまんなよ。悪いことなんて何もしてねえんだから」
ビックリした。
「ワリィ。大きな声出た」
「いいけど」
なんだかちょっと気まずい雰囲気になってしまった。
その時、階下から母ちゃんの声がした。
「信~灰谷く~ん。お昼ごは~ん。できたわよ~」
灰谷はちょっとホッとしたような顔をして「おっ。ごはんできたって。今行きま~す」と荷物の山をジャンプして出て行った。
なんだったんだろう灰谷のやつ。
あそこ、キレるところか?
まあでも、オレがまったくの無関係ってわけじゃねえよな。
どう考えても。
自分がしたことで自分が傷つくのはしょうがない。当たり前だから。
でも、自分のしたことで、自分の周りが、好きな人が、大事な人が傷つくのが一番つらいってことが今回良くわかった。
城島さんに、結衣ちゃんに、母ちゃんに、灰谷に、そしてたぶん明日美ちゃん。
はあ~。
オレはため息をついた。
あ~めんどくせえ。
オレ、いつから断捨離ってんだっけ?
昨日の夜からはじめて、一回寝て、また朝から始めて。
もう結構な時間やってるよな。
もう――ときめかない。ときめかない。。ときめかな~い。。。
ウソっ。
これはときめく。
あぶねえ。
これ、古着だけど二万もしたシャツじゃん。
ときめきを捨てちゃうとこだったぜ。
って……オレがときめいてんのはもしかして二万って金額なんじゃ……。
わから~ん。
ふいに城島さんの言葉を思い出す。
「なあ~灰谷知ってるか」
「何?」
「自分にとって一番大事なものが何かを知るにはどうすればいいのか」
「……どうすんだ」
「今大事だと思ってるものを片っ端から捨ててみること、だって」
ええと、コレはときめかない。
「なんだそれ」
「捨ててみると、大事だと思っていたものも意外とそうじゃなかったり。逆に大事じゃないと思っていたものが大事だと気づいたり。そんで、これが一番大事なんだって気づいたりするんだと」
「そんなもん?」
「わかんないけど、そう言った人がいるんだよ」
ときめく。ときめかない。
ときめかない。ときめく。
灰谷は特に思うところもないのか、しばらくマンガを読み続けていたが、ふいに言った。
「でも真島、それって捨てたあとに大事だって気がついたらどうすりゃいいんだ。捨てちゃった後じゃん」
「それな。オレもそう言ったんだよ」
「だろ」
灰谷。
ときめく。ときめく。。ときめく。。。
ときめきのクレッシェンド。
乙女か!
「そしたらさ、またそこから始めればいいんじゃないかってさ。またそこから、その現実と向かい合ってそこから始めればいいんじゃないかって」
灰谷は眉間にシワを寄せた。
「ん~禅問答か。誰に聞いたんだ?」
「知り合い」
「ふうーん」
大事だと思ってるものを捨ててみる……か。
バンジージャンプして?スカイダイビングして?
死刑台の上で首に縄をかけて?
実際問題難しいぜ城島さん。
そんな怖いこと。
ブブー。ブブー。
スマホのバイブ音がする。
オレじゃねえし灰谷だ。
でも灰谷は動かない。
ええと。
ときめかない。ときめかない。ときめかないっと。
あれ?
ときめかないって唱えてると、大体のもんがときめかなくなる気がする。
言葉マジック?
これ、ときめくって唱えてると逆にときめいちゃうのかな?
ときめく。ときめく。ときめく。
う~ん。
いや、やっぱときめかないものはときめかねえな。
ブブー。ブブー。
まただ。
「灰谷、オマエじゃねえの?バイブ」
「ん?ああ」
灰谷は脇においたスマホの画面をチラッと見ると、電話には出ずにマンガに戻った。
ブブー。ブブー。
バイブ音は止まらない。
「出ねえの?」
「うん」
「……もしかして、明日美ちゃん?」
灰谷はマンガから顔も上げない。
「だろ?出ろよ」
「いいって」
「オレなら、大丈夫だからさ」
「いいよ。真島にタカユキ中だし」
「灰谷にタカユキしてもらう理由もそんなないけどな」
「いいんだよ。オレがタカユキしてえんだよ」
「タカユキ~つって。マンガ読んでるだけじゃん」
「なんだよ。読みたくなっても貸してやんねえぞ」
「それは困る」
「ハハッ」
やっと、バイブ音が止んだ。
ん~。続き。
もうひと踏ん張り。
ときめかない。ときめく。ときめかない。
「つうか真島、オマエ、夏休みの課題やってる?」
課題?んなものあったなそう言えば。
「まったくやってない」
「オレは三分の一くらいかな。夏休みもう残り少ないだろ。そろそろ始めた方がよくねえ?」
「だな。つうか、とりあえずこれ終わらねえと、何もできねえ」
ときめけば。ときめく時。ときめけ~。
「でさ、去年みたいに教科別に手分けしてやったらと思ってさ」
「あ~いいねえ。佐藤と中田と分担してやろう」
ブブー。ブブー
灰谷のスマホがまた震え出した。
ここまで鳴ってるのに灰谷に出ようとする気配はない。
さすがに気になる。
「オマエ、だから出ろって明日美ちゃんだろ」
「ん~いいって」
「じゃあ、LINE入れてやれば?真島くんにタカユキ中だからゴメーンって」
「ん~」
灰谷はマンガから目を離さない。
なんだよ。気になるじゃん。
「何?オマエらケンカでもしてんの」
「いや、別に」
「……もしかして、オレのせいか?オレが結衣ちゃんとあんなことになったから」
「関係ねえよ。それは関係ねえ」
灰谷はオレの顔を見て言う。
「オレと明日美の事だから。オマエには関係ない」
オレと明日美の事、か……。
「そうだな。悪かった」
「あやまんな!」
急に灰谷が大きな声を出した。
「オマエがオレにあやまんなよ。悪いことなんて何もしてねえんだから」
ビックリした。
「ワリィ。大きな声出た」
「いいけど」
なんだかちょっと気まずい雰囲気になってしまった。
その時、階下から母ちゃんの声がした。
「信~灰谷く~ん。お昼ごは~ん。できたわよ~」
灰谷はちょっとホッとしたような顔をして「おっ。ごはんできたって。今行きま~す」と荷物の山をジャンプして出て行った。
なんだったんだろう灰谷のやつ。
あそこ、キレるところか?
まあでも、オレがまったくの無関係ってわけじゃねえよな。
どう考えても。
自分がしたことで自分が傷つくのはしょうがない。当たり前だから。
でも、自分のしたことで、自分の周りが、好きな人が、大事な人が傷つくのが一番つらいってことが今回良くわかった。
城島さんに、結衣ちゃんに、母ちゃんに、灰谷に、そしてたぶん明日美ちゃん。
はあ~。
オレはため息をついた。
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