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第四章 異質殺し
4-21 まずは作戦会議だ
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◇
「さて、まずは作戦会議だ」と朱音は呟く。
「作戦会議?」と俺が訝るように返すと、彼女は胸を張って頷いた。それを聞いて天音は片隅でぱちぱちと拍手をしている。
「……作戦会議って、なんの作戦だよ」
「単純に、イギリスでの私たちの仕事についてだよ」
……仕事。
それっぽい言い方をしているが、現実的に存在している仕事とは違うことは俺はよく知っている。
ここでいう仕事とは、もちろん悪魔祓いとしての仕事。つまりは悪なる魔法使い──悪魔──を討伐、更に言い方を変えれば殺すことが優先とされる仕事。
俺は息を呑む。過去に立花先生に依頼された天使時間のことを思い出す。
「まず、私がイギリスで何をやっているか、ということの説明から入ろうか」
朱音はそう口頭を置いて話し始める。
「今、このイギリスでは大量の誘拐事件が発生している。……誘拐という言い方は違うかもしれない。“拉致”だな。まあ、もしかしたら言葉巧みに誘導されて、誘拐という言葉通りの意味を辿った者もいるかもしれないが、ともかく、現在はイギリスで大量の行方不明者が出てきている。それも年齢も性別も問わず、アトランダムに」
「……魔法使いが犯人じゃない可能性もあるんじゃないか?」
朱音は首を振った。
「それなら、何かしらの足がつくだろうからね。大量の行方不明で、それでいて一般人がやっているのならば、相応に警察も動くことができるだろう。
だが、今回の依頼は警察からのものだ。警察では対処しきれないからこそ、悪魔を討つとされる『教会』に話が来たんだろうさ」
なるほど、と俺は頷いた。天音は真剣に朱音の話を聞いている。
「今のところ、行方不明になった人に憑いては発見されていない。だが、そうなるとそれを隠す場所なり、施設なりが必要となってくる。足もつかないような者がそれをやっているのであれば、それは確実に非現実的だろうさ。もしかしたら、人の目がつかないような場所に『アリクトエアル』を展開し、そこに監禁をしているのかもわからない。だから、この捜査については、今めちゃくちゃ手が詰まっている。
もし、法則性のある行方不明者事件であれば、次の該当者なども調べて、そこから追跡することもできるだろうが、今回はそれはできない。なにせアトランダムなんだ。そこでお前と天音を使う」
……。
「えっ」
俺は声を出した。一瞬の理解が遅れてしまったから。
「……つまりは誘拐されろ、と?」
「それは思考を急ぎ過ぎだ。単純に、お前と天音の力を使いたい、ってことだよ」
朱音は得意げに鼻を鳴らした。
「天音は対極を受け容れた魔法使い。そして、対極を受け容れた悪魔祓いだ。もしかしたら、従来の私たちとは違う発見ができるかもしれない」
「……」
俺は、よくわからなかった。
「……ていうか、天音って対極を受け容れてたの?!」
「え? ああ、うん」
天音はさりとてどうでもいいように呟いた。
……いや、俺が今まで考えていなかっただけで、幼少の頃とは髪の色が違うし、確かに対極を受け容れていても不思議じゃない。だから、それについては納得できるけれども。
「……俺に力なんてないよ」
俺については、対極を受け容れただけでしかないんだから、それを力と言われても困る。
「だって、単純に対極を受容しただけだぜ? それで何かが変わることなんて──」
「──いいや、お前は明らかに私たちとは違う対極の受容をしている」
朱音は言葉を吐いた。
「お前は“物理的”に対極を受け容れているからな」
「さて、まずは作戦会議だ」と朱音は呟く。
「作戦会議?」と俺が訝るように返すと、彼女は胸を張って頷いた。それを聞いて天音は片隅でぱちぱちと拍手をしている。
「……作戦会議って、なんの作戦だよ」
「単純に、イギリスでの私たちの仕事についてだよ」
……仕事。
それっぽい言い方をしているが、現実的に存在している仕事とは違うことは俺はよく知っている。
ここでいう仕事とは、もちろん悪魔祓いとしての仕事。つまりは悪なる魔法使い──悪魔──を討伐、更に言い方を変えれば殺すことが優先とされる仕事。
俺は息を呑む。過去に立花先生に依頼された天使時間のことを思い出す。
「まず、私がイギリスで何をやっているか、ということの説明から入ろうか」
朱音はそう口頭を置いて話し始める。
「今、このイギリスでは大量の誘拐事件が発生している。……誘拐という言い方は違うかもしれない。“拉致”だな。まあ、もしかしたら言葉巧みに誘導されて、誘拐という言葉通りの意味を辿った者もいるかもしれないが、ともかく、現在はイギリスで大量の行方不明者が出てきている。それも年齢も性別も問わず、アトランダムに」
「……魔法使いが犯人じゃない可能性もあるんじゃないか?」
朱音は首を振った。
「それなら、何かしらの足がつくだろうからね。大量の行方不明で、それでいて一般人がやっているのならば、相応に警察も動くことができるだろう。
だが、今回の依頼は警察からのものだ。警察では対処しきれないからこそ、悪魔を討つとされる『教会』に話が来たんだろうさ」
なるほど、と俺は頷いた。天音は真剣に朱音の話を聞いている。
「今のところ、行方不明になった人に憑いては発見されていない。だが、そうなるとそれを隠す場所なり、施設なりが必要となってくる。足もつかないような者がそれをやっているのであれば、それは確実に非現実的だろうさ。もしかしたら、人の目がつかないような場所に『アリクトエアル』を展開し、そこに監禁をしているのかもわからない。だから、この捜査については、今めちゃくちゃ手が詰まっている。
もし、法則性のある行方不明者事件であれば、次の該当者なども調べて、そこから追跡することもできるだろうが、今回はそれはできない。なにせアトランダムなんだ。そこでお前と天音を使う」
……。
「えっ」
俺は声を出した。一瞬の理解が遅れてしまったから。
「……つまりは誘拐されろ、と?」
「それは思考を急ぎ過ぎだ。単純に、お前と天音の力を使いたい、ってことだよ」
朱音は得意げに鼻を鳴らした。
「天音は対極を受け容れた魔法使い。そして、対極を受け容れた悪魔祓いだ。もしかしたら、従来の私たちとは違う発見ができるかもしれない」
「……」
俺は、よくわからなかった。
「……ていうか、天音って対極を受け容れてたの?!」
「え? ああ、うん」
天音はさりとてどうでもいいように呟いた。
……いや、俺が今まで考えていなかっただけで、幼少の頃とは髪の色が違うし、確かに対極を受け容れていても不思議じゃない。だから、それについては納得できるけれども。
「……俺に力なんてないよ」
俺については、対極を受け容れただけでしかないんだから、それを力と言われても困る。
「だって、単純に対極を受容しただけだぜ? それで何かが変わることなんて──」
「──いいや、お前は明らかに私たちとは違う対極の受容をしている」
朱音は言葉を吐いた。
「お前は“物理的”に対極を受け容れているからな」
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