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4/I'm in love

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◇◇◇

 夏休みという期間もあって、相応の人数が園内にはいる。先程バスで見かけた同年代の奴らも、もしくはそれ以外にも学生らしき年齢の人物がたくさんいる。その人物らの大半が、だいたい男女の組み合わせだ。彼らもきっとデートなんだろう。オレたちのがデートというのかどうかはしらないけれど、俺たちもそれに紛れることができるような気がした。

 流石に園内であっても、熱の環境というのは変わりようがない。噴水の近くであれば、そこそこの涼しさが在るけれども、太陽の角度は先程よりも更に鋭敏になって、真上から俺たちを突き刺してくる。まるで、俺たちを丸焼きにでもしようか、とそんな気概さえ聞こえそうなほどである。

 それでも、その日射を無視するようにして、愛莉と俺は気丈に振る舞ってみる。その証拠に、先程自販機で買った飲み物を互いに煽って、ふう、と一息ついた。

 互いにコーラ。普通にスポーツドリンクでもいいような気がするけれど、彼女がコーラを選んだから、俺もコーラにしてみた。炭酸の刺激が喉をくすぐる。

 噴水の近くでしばらく息をひそめるように、車での道のりに対して休息をすると、それに飽きたように俺たちは看板の方へと足を運ばせた。

「……そういえば、こういう場所。愛莉とも来たことなかったな。」

 俺は言葉を出してみた。

 家族とも来たことがない場所。きっと物心がついていない幼い頃には連れてもらったことはあるかもしれないが、その時の記憶は俺の中には残っていない。

 そんな場所に愛莉と一緒に来ている。だが、愛莉ともこんな場所には来たことがない。

 たまに出かける場所と言ったら、夏ならプール、冬ならプールが凍ったスケートリンク。結局、季節という中であまり行く場所については変わらない。

 季節に限らずというのなら、デパートで店を冷やかすことはそこそこにあるけれど、それくらいだ。だいたいが互いの部屋で時間を過ごせていれば、時間を潰すことができるのだから、俺たちはそれでいいのだ。

「まあ、お互いに中学生だし、バイトとかができたのなら、お金とかもあっていっぱい出掛けられるんだろうけれどね。仕方ないよ」

 彼女はそう言って、看板の方へと足を運ばせた後、看板に描かれている地図に指をなぞらせた。

 そこそこに大きい遊園地ということもあって、絶叫系のアトラクションについては、規模のでかいものが相応に集まっている。看板の地図には目玉となるアトラクションがでかでかと強調されており、どこかそれに惹かれる要素があるのは確かだ。

 愛莉は、そんなアトラクションに指を合わせた。

「絶叫系苦手じゃねぇの?」

 俺は普段の彼女の様子から、そんな言葉を聞いてみる。

 彼女はホラー映画とかを一緒に見ると、その声で俺がびっくりするほどに大きな声を上げるほどの人だ。だから、彼女がそんなアトラクションに対して挑戦的な姿勢を見せているのには少し驚きを隠せない。

「乗ったことないからわかんないけど、テレビで見てたら楽しそうじゃない?」

「気持ちはわかる」

 実際、そういったアトラクションについては目を惹かれている。ホラーが得意だとかそういったことは関係なく、目の前で見る絶叫系のアトラクションについては、今の愛莉と同じような気持ちだ。

「じゃあ、最初はそれに乗るのか?」

 彼女が指を指しているのは、谷から落ちるイメージが描かれたアトラクションだ。この夏の気だるさから抜け出すには、確かにちょうどいい場所かもしれない。

「涼しそうだし、最初はこのあたりから始めたいなって」

 そうして愛莉は地図の方角に合わせて、その谷のアトラクションに向けて歩みを進める。

 俺たちはそうして歩き出した。



◇◇◇

 そうしてたどり着いたアトラクションの列はそこまでの長さはなかった。待つとしても十数分ほどで済むくらいだろう。

 その中に紛れるようにして俺と愛莉は列に並ぶ。待つ間の時間つぶしについては適当な会話など。

 会話のラインナップについては、勉強のことを含まないような意識を持つ。一応、彼女と遊園地前で約束した事項だ。今日は楽しむことに重きをおいていなければならない。だから、話すことについては限られていく。

 結局、選択した話題は、ここ最近ではかけなくなった文章についてのことだったり、もしくは皐と見た金曜日のテレビ放映での映画だったり。それに対して彼女は、会えなかった期間に経験した部活での出来事や、その最中の悔しさについてを語ったりしてくれた。

 その話の最中、皐月に対してお土産を買うことの話になったりして、そうして列については短くなっていく。

 アトラクションの入り口に近づけば近づくほどに、出口から出てくる人のずぶぬれている姿が視界に入る。そのどれもが楽しそうな様子で、俺たちもそんな体験をすることを想像すると、どこか心が踊るような感覚がした。

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