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陸/傾き始める過程の線上
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◆
すべての作用を考える。
あらゆるすべての作用を考えている。
世界に織りなす出来事を、すべてのつながりを考えている。考えることを仕組まれている。そういった作用がある。
つながっていない、と思っていることでさえ、結局つながっていることが大半である。それを感じてしまうことを、その作用についてを考えてしまう。
何もない、と思っている事柄にさえ繋がっている何かがある。あらゆるすべてとは、あらゆるすべての延長線である。延長線の元がなにかはわからない。だが、地続きに存在することは確かであり、それを理解してしまっている自分がいる。もしくは理解しようとしている自分が存在する。
あらゆることは、あらゆることにつながっているのだ。
対義語であるような語群のそれぞれが、それぞれでつながっている。
そうではない関連性さえ存在しない語群が、それぞれで、それぞれでなくともつながっている何かが存在する。
同一や合同、相似であるような事柄でさえ、それは地続きにつながっている。世界とは作用の連続であり、それが社会となり、俺にとっての氷塊となる。
それが作用だ、それは作用だった。あらゆる何かに対して作用しているものであり、あらゆる作用に対して存在している何かだった。
地続きにすべては存在する。つながっていないことでさえもつながっているというのであれば、それから逃れる先は存在するのだろうか。逃れる先さえも、その延長線の範疇ではないのだろうか。
解け落ちた氷のその行方とは、どこなのだろう。氷塊から解けた先であったとしても、逃げた道の先であったとしても、すべてを遠ざけていた場所であったとしても。
それは、行方といえるのだろうか。
◇
仕事や学校をサボることが多くなってきたような気がする。別にサボタージュが悪いわけではないとは思う。青い空が見えているなんていう、気分がいい日にはサボってもいいだろう。愛莉の言葉を借りるならば、きっとそれくらいは許されるはずだ。でも、そこに人を巻き込むのならば、おそらくそれは許されない事柄だと思う。
駅前のほうにはサラリーマンが立ち寄るような、チェーン系列で展開されている喫茶店がある。くたびれた中年男性が死んだ顔と革の鞄を提げて、そうして店を出入りする姿がよく見える。その姿を確認したところで何かを思うことはない。強いていうのであれば、この人でさえも社会の歯車の一員であることと、どこまでも逃げれない現実という壁が存在することばかりだろう。
そんなことをぼんやりと頭に浮かべながら、そうして俺は手元にある黒色の液体を口に含む。今までは苦いだけでしかないそれを飲むことは好まなかったが、今じゃ少し求めてしまっている自分の体が恨めしい。
「……ブラック、の、飲めるんですね」
目の前で挙動不審に周囲を警戒している伊万里は、俺の所作を見ながらそうつぶやいた。彼女の手元には緑色のストローが刺さったオレンジジュースがあり、喫茶店でもそういったものがあるのか、と不思議な気持ちになる。彼女はそれを少しずつ吸い上げて喉を潤している。
俺は彼女の言葉に、特に返事をすることはなく、ただ頷くだけを返す。彼女はそれを見て、また挙動不審に周囲に視線を配り始めていた。
ここには俺と彼女の二人きり。
夕方という時間。いつも通りに夕日は傾きだし、そうして世界を橙色に染めようとする。この空を眺めれば、そろそろ学校に行かなければいけないという焦燥感を抱くものの、今日に関してはそうも言っていられない。
『それだったら、俺の妹に頼んでみればいいじゃねえか。それがいいよな、今から連絡しておくわ』
『ちょっ……』
自然科学部の情報を聞いて、恭平は思いついたように声をあげていた。俺の制止が届くわけもなく、そうして恭平に勝手な予定を入れられていく。
……ここでひとまず状況を整理しなければいけない。改めて状況をきちんと頭に入れておかなければ、これから対面する恭平の妹に対してどんな言葉を伝えればいいのか、迷ってしまうからだ。
自然科学部での活動は、きっと栽培や科学的な活動が主になる。だが、そういった栽培に関しては夜の部での運営では難しく、朝の部、もしくは昼の部に通っている生徒に管理をお願いしなければいけない。
そこで出てきたのは恭平の妹、という人物。恭平はひたすらに妹、という言葉を出してきたから名前は知らない。
その名前を知ることはできていない妹についての情報をまとめるのならば、昼の部に通っているとのこと。現在は高校二年生であり、俺と同い年であることを恭平から聞いた。
恭平から無理に予定を入れられたことで、約束通り、俺は駅前の喫茶店で、昼の部の完全放課となる五時に待ち合わせをしている。
だが、ここで個人的な行動ばかりをしていいのかどうか、俺は自分自身に疑問を持つ。勝手に入れられた予定ではあるものの、それを独断で行うことに対して疑問を持って仕方がなかった。
俺は自然科学部に所属しているが、それだけでしかない。名目として運営しているのは伊万里であり、その伊万里を差し置いて、俺の独断が許されるのか、俺は気になってしまった。
だから、彼女をここに呼んだ。あらかたの事情を彼女に説明して。
……一応、これがここまでの状況ではあるものの、それでも思考はまとまらない。予定外の出来事というのは、どうも頭の回転を鈍くさせる。
皐も同席してもらおうと思ったが、これ以上俺に関連してサボらせるのは気が引けたので、申し訳ないが学校に行ってもらった。もしかしたら、どこかで恭平の妹とすれ違っているのかもしれないが、顔も知らない誰かとすれ違ったところで意味があるわけでもない。
だから、今は俺と伊万里の二人きり。
そんな状況に戸惑いを覚えているのか、頻りに視線を泳がせる伊万里の姿。少しだけ申し訳なく感じる自分はいるけれど、それはそれとして挙動不審に振舞っている彼女が面白く感じる。
「まあ、そんな緊張するなって」
「ひゃ、ひゃい」
そんな具合の彼女を見て暇をつぶしながら、俺はこれから来るであろう恭平の妹の姿を想像することにした。
すべての作用を考える。
あらゆるすべての作用を考えている。
世界に織りなす出来事を、すべてのつながりを考えている。考えることを仕組まれている。そういった作用がある。
つながっていない、と思っていることでさえ、結局つながっていることが大半である。それを感じてしまうことを、その作用についてを考えてしまう。
何もない、と思っている事柄にさえ繋がっている何かがある。あらゆるすべてとは、あらゆるすべての延長線である。延長線の元がなにかはわからない。だが、地続きに存在することは確かであり、それを理解してしまっている自分がいる。もしくは理解しようとしている自分が存在する。
あらゆることは、あらゆることにつながっているのだ。
対義語であるような語群のそれぞれが、それぞれでつながっている。
そうではない関連性さえ存在しない語群が、それぞれで、それぞれでなくともつながっている何かが存在する。
同一や合同、相似であるような事柄でさえ、それは地続きにつながっている。世界とは作用の連続であり、それが社会となり、俺にとっての氷塊となる。
それが作用だ、それは作用だった。あらゆる何かに対して作用しているものであり、あらゆる作用に対して存在している何かだった。
地続きにすべては存在する。つながっていないことでさえもつながっているというのであれば、それから逃れる先は存在するのだろうか。逃れる先さえも、その延長線の範疇ではないのだろうか。
解け落ちた氷のその行方とは、どこなのだろう。氷塊から解けた先であったとしても、逃げた道の先であったとしても、すべてを遠ざけていた場所であったとしても。
それは、行方といえるのだろうか。
◇
仕事や学校をサボることが多くなってきたような気がする。別にサボタージュが悪いわけではないとは思う。青い空が見えているなんていう、気分がいい日にはサボってもいいだろう。愛莉の言葉を借りるならば、きっとそれくらいは許されるはずだ。でも、そこに人を巻き込むのならば、おそらくそれは許されない事柄だと思う。
駅前のほうにはサラリーマンが立ち寄るような、チェーン系列で展開されている喫茶店がある。くたびれた中年男性が死んだ顔と革の鞄を提げて、そうして店を出入りする姿がよく見える。その姿を確認したところで何かを思うことはない。強いていうのであれば、この人でさえも社会の歯車の一員であることと、どこまでも逃げれない現実という壁が存在することばかりだろう。
そんなことをぼんやりと頭に浮かべながら、そうして俺は手元にある黒色の液体を口に含む。今までは苦いだけでしかないそれを飲むことは好まなかったが、今じゃ少し求めてしまっている自分の体が恨めしい。
「……ブラック、の、飲めるんですね」
目の前で挙動不審に周囲を警戒している伊万里は、俺の所作を見ながらそうつぶやいた。彼女の手元には緑色のストローが刺さったオレンジジュースがあり、喫茶店でもそういったものがあるのか、と不思議な気持ちになる。彼女はそれを少しずつ吸い上げて喉を潤している。
俺は彼女の言葉に、特に返事をすることはなく、ただ頷くだけを返す。彼女はそれを見て、また挙動不審に周囲に視線を配り始めていた。
ここには俺と彼女の二人きり。
夕方という時間。いつも通りに夕日は傾きだし、そうして世界を橙色に染めようとする。この空を眺めれば、そろそろ学校に行かなければいけないという焦燥感を抱くものの、今日に関してはそうも言っていられない。
『それだったら、俺の妹に頼んでみればいいじゃねえか。それがいいよな、今から連絡しておくわ』
『ちょっ……』
自然科学部の情報を聞いて、恭平は思いついたように声をあげていた。俺の制止が届くわけもなく、そうして恭平に勝手な予定を入れられていく。
……ここでひとまず状況を整理しなければいけない。改めて状況をきちんと頭に入れておかなければ、これから対面する恭平の妹に対してどんな言葉を伝えればいいのか、迷ってしまうからだ。
自然科学部での活動は、きっと栽培や科学的な活動が主になる。だが、そういった栽培に関しては夜の部での運営では難しく、朝の部、もしくは昼の部に通っている生徒に管理をお願いしなければいけない。
そこで出てきたのは恭平の妹、という人物。恭平はひたすらに妹、という言葉を出してきたから名前は知らない。
その名前を知ることはできていない妹についての情報をまとめるのならば、昼の部に通っているとのこと。現在は高校二年生であり、俺と同い年であることを恭平から聞いた。
恭平から無理に予定を入れられたことで、約束通り、俺は駅前の喫茶店で、昼の部の完全放課となる五時に待ち合わせをしている。
だが、ここで個人的な行動ばかりをしていいのかどうか、俺は自分自身に疑問を持つ。勝手に入れられた予定ではあるものの、それを独断で行うことに対して疑問を持って仕方がなかった。
俺は自然科学部に所属しているが、それだけでしかない。名目として運営しているのは伊万里であり、その伊万里を差し置いて、俺の独断が許されるのか、俺は気になってしまった。
だから、彼女をここに呼んだ。あらかたの事情を彼女に説明して。
……一応、これがここまでの状況ではあるものの、それでも思考はまとまらない。予定外の出来事というのは、どうも頭の回転を鈍くさせる。
皐も同席してもらおうと思ったが、これ以上俺に関連してサボらせるのは気が引けたので、申し訳ないが学校に行ってもらった。もしかしたら、どこかで恭平の妹とすれ違っているのかもしれないが、顔も知らない誰かとすれ違ったところで意味があるわけでもない。
だから、今は俺と伊万里の二人きり。
そんな状況に戸惑いを覚えているのか、頻りに視線を泳がせる伊万里の姿。少しだけ申し訳なく感じる自分はいるけれど、それはそれとして挙動不審に振舞っている彼女が面白く感じる。
「まあ、そんな緊張するなって」
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そんな具合の彼女を見て暇をつぶしながら、俺はこれから来るであろう恭平の妹の姿を想像することにした。
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