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落語?風短編「ぼちぼち屋」
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何時の時代にも「なんでこんな所にあるのに人気あるの?」と言いたくなるような店があったりするもので。
これはそんなお店を見つけたある男の日々のお話。
「…こんな所に本当にあるんかぁ?」
周りは薄暗くなってきた中そんな事を言いながら歩く男が一人。彼は話に聞いた店を探しに向かっていた。
なんでも「美味くて安いが夕暮れよりも暗くなってからじゃ無いと開いて無い店だ、その場所は…」と言われて向かったはいいが最初はその場所を聞いた時は「ほんまかいな」と疑いはしたが「いやあるんやって!それも一杯六文で食える!」と念を押されて気になった事もあって向かっては見たが場所が場所で周りの暗さと静けさも相まって「もう少し進んで見つからなかったら引き返そうか…いやいやそれは…」ともう何回も頭の中で思いながら進んでいくと…
「……ん?」
やっとと言うかやっぱりと言うかそれを思わせる店…所謂担ぎ屋台と言われるものと店が開いてる事を示すような赤ちょうちんが煌々と辺りを照らしていた。
「あれか?」
内心ほっとした気持ちと改めて懐の中の金の確認…「ああ言われたが間違った時に食い逃げ何て騒がれたらたまったもんや無いからな」と十六文以上ある事を確認して店に向かった。
「開いてるか?」
「…へぇ」
近づいて店主らしい男に声をかけると…その場に似合ったというかどこか薄気味悪いがはっきり聞こえる声で顔を向けながら答えて来た。
「なんや声が薄気味悪いな、ここでやってるからか?」
「そうですねぇ…こんな姿とこの調子でいつもここでやらせていただいております」
…変な感じがする。どこか生気が感じられない。でも間違いなくここにいる事は確かで目の前にあるのが全て幻では無い事は間違いない無いのだがどうしてもそうそんな気持ちが浮かんだが…
「…ま、ええやろ。うどん一杯貰えるか?」
それはそれと言うか最早子の周りも含めて雰囲気に慣れたのか噂を確認したくてカウンターと呼べる場所に立つと注文をした。
「へぇ…うどんえ↓~そ~お↑~」
こういうセリフなのか、こんな屋台では定番の言葉…でも。
「ちょっと調子ちゃうな、これもか?」
「へぇ…これもいつもの調子でございます…」
ちょっとズルッっと来そうなその調子もどこ吹く風と作る手際は惚れ惚れするほどによくすぐにうどん一杯が目の前に来た。
「~~~…ん~」
目の前に運ばれてきたうどんからの匂いだけでも旨そうなのが解るが味を確認しなければ始まらんと早速彼は…
「ずずずず~~っ」
器を両手に持つと出しを確認する為に口をつけた。
「おっ!これは…昆布だしか?」
「へぇ…そうでございます」
「珍しいなぁ…昆布だし何て手順がかかるやろうに」
「そういうわけではございませんよ?」
「へぇ~」
そう言った後口に運ぶうどんも絶妙で終始笑みがこぼれるばかりであっという間に器は空になった。
「ごっそさん。じゃあ…」
「…六文でございます」
「へ?…聞いてたけどほんまにええの?」
「ええ、それでやらさせていただいておりますので」
「……」
噂が一切嘘では無い事は確かなのだが驚くばかりの中六文払う男…そんな時だった。
「もし…」
「うおっ!」
後ろから突然。それも不気味な女性の声がして振り返ると。
「一体何…ええ…」
舞妓だろうか?それでもここにいるような雰囲気の無い女性がそこに居た。
「今日はやってはりますか?」
「へぇ…今から始めたばかりでございます」
「そうどすか、じゃあ一杯…」
「へぇ…」
あの調子からうどんが一杯出来上がって男よりもゆっくりと食べる女性がそこに居て…
「……うへへ……」
その一挙手から漂う艶っぽさに鼻の下が伸びるのを止められなかった。
「ごめん!」
「っ!」
しかしそれも束の間後ろから雷のような大きな声がしてビクッとして振り返るとそこには…お侍さんがいた。
「そばを一杯頼む、熱めでな」
「へぇ…」
「え?」
男に目も向けずに、しかもその注文は「いつもの」と言ってる様なそんな調子で店主も戸惑う事も無く程なく側が一杯出て来た。
「うむ!いただこう!」
声は幾分おさまったがそれでも満面の笑みを浮かべてそう言うと力強くという印象を感じさせながら瞬く間に器を開けていき、その時には女性の方も食べ終えていた。
「主人!ご馳走になった!」
「ごっつぉはんどす」
「…へぇ」
「では…ぬ?」
終始上機嫌と言わんばかりの男が懐に手を入れると途端に顔をゆがめた。
「…ぬぬ?」
そこからあちこちと手をまさぐるもお目当ての…代金だろうそれが見つからない事に驚きながらも信じられない程に体を小さくする男がそこに居た。
「……主人、すまぬ」
「……」
その理由を気付いてか主人の顔が一瞬鋭くなった。いや…そんな物じゃない位の…
(おいおいおい…)
彼からは何処か殺気じみたものが出てきて、その隣では女性が何食わぬ様子でお金を置いて去って行った。
「……」
「……」
一瞬静寂が戦慄を孕んでその場に漂う…でもその空気に耐えかねたのは…
「…あ~あ~もう!」
そう言うと男はもしもの為と多めに持っていた懐から六文を取り出してカウンターに置いた。
「これでええやろ!問題無いやろ!」
大袈裟気味の大声でその場の空気を吹き飛ばしたい一心で男はそう言った。
「お主!…しかしこの金は…」
「払えんのやろ!それにこの空気の中離れるなんて気分が悪いわ!折角上手いうどん食べて上機嫌やったのに!」
身分階級を考えると「お侍さんになんて口の利き方を!」と言われそうではあるがこの状況を放置して去るよりはと言う気持ちの方が強くなったが故のやけっぱちとも言える心からの言動だった。
「むう……感謝する」
しかし意外にも相手はしぶしぶと言った様子でそれを受け取る意思を見せて去って行った。
「…よろしかったのです?」
「ええよ、その代わりまた来るで?」
「はい…これ位の時間なら何時でも…」
それを最後の会話と男はそこから離れて行った。
『うまくて安い店は本当だった』
それが解るや否や彼はその店に足しげく通う様になっていった。知り合いは怪訝な顔を浮かべたりその理由を聞いたりしたが男ははぐらかすような答えをして上機嫌でそこに向かった。
それがどうしても気になってと知り合いの一人が後をつけていくと…
「…おい…ここって…」
それがどこか確認するように口に出そうとした瞬間だった。
「あっ!」
追いかけていた男の姿が消えた。驚いて追いかけてその辺りまで来たがその姿は影も形も無くなっていた。
「…あいつ」
心配と戦慄…そして場所が場所故の恐怖もあって男がくわばらくわばらと思いながら逃げる様にそこを去った。
それでもとそれ以降時間を見つけては追いかけていたその男の存在に気付く事も無く彼は今日もその店へ。
「店主!」
「へぇ」
「そういやぁこの店の名前ってきいてなかったよなぁ?」
「…そうでやすね…ここは「ぼちぼち屋」という号でやらせていだいております」
「ぼちぼちやねぇ…それってここでやってるからかぁ?」
「…そうですねぇ…それもありますね」
「ふ~ん…」
そう、ここまでその店のある場所を伏せてはいたが察しの付く方は気付いているかもしれない……
『店のある場所が…「墓地の中」…それも「店が開くのは日が落ちてから」』と言う事に。
男が最初に何度も二の足を踏みそうになったのはそれが理由であの時、そしてそれからも男がいる時にやって来る他の客の様子や雰囲気がまちまちなのもそれが理由だった。
そんな日々がある程度続いて今日も旨かったうどんの余韻に浸りながら帰路に就こうとしていた男に。
「おいっ!」
突然大声で声をかけて来たのは気になって時々後をつけていた男だった。
「…何や?つけて来たんか?」
「そそそそ…それより…お前今どこから来た?」
「どこからて…あっちからに決まってるやろ?」
そう言うと男は後ろに顔を向けて今も見えてるうどん屋を指さした。
「あっちって…なんもないぞ?」
「何も無いってお前…そこにうどん屋があるの見えんのか?」
「うどん屋ぁ?そんなの何処にあるんや?」
「おいおい!そこにあるやろ?」
からかってるようには見えないが至福の余韻を乱す相手に少しイラついてより力強く声を上げて指さした。
「………」
しかし…男の目にはそれが見える事は無かった。それでもこのままでは収まらんと向かって行くと…
「っち…折角の店そうそうばれて欲しくなかったん…や……けど……」
相手に聞こえない大きさで残念そうにそういう男の目に見えたのは……
『その場所に気付かない…いや、見えてないだろう相手がその店をすり抜ける様に通り過ぎる光景』だった。
「……え?」
「………」
一瞬静寂がその場を包む。しかし刹那その場所を通り過ぎた男の体が突然震えはじめと思うと。
「…ひっ……ひいいいいぃ~~~!」
こっちに目も向けずに一目散に走り去って行った。
「………」
一人その場に残された男はこの現実に立ちすくんでいた。
(俺には見えてる…今日もうどんを食べて…でも…あいつには見えてへんし……)
その場故の夜風が余韻を吹き飛ばし肌寒さに差し替えていくように思って男は小走りにそこから離れて行った。
「おい!おい!」
翌日店の紹介をした男に詰め寄る彼が居た。
「あの店っ!一体っ!」
息も切れながら辛うじて叫ぶように男が言う。恐怖は無くなったがそれでも怒りと驚きのせいで口が思う様に動かなかった。
「あの店って?」
「あの店や!墓地の中にあるうどん屋!」
「あああれ…って何で驚いてるん?」
「お前なぁ!俺には見えて食べに行く事が出来たけど違う奴には近づく事さえ出来んかったんやぞ?」
「あ~……」
「あ~ってなぁ!おい!何ぞよくないもんで食べさせようとしたわけ無いよなぁ?」
「そんな訳ないやろ?それやったらとっくの昔に調子が悪くなってもおかしくないやろ?」
「そ…そりゃあ……ほぼ毎日行ってるし………何や言っても多分今日も行くやろし……」
「……」
「……なあ」
「何や?」
「なんであの店を俺に薦めたんや?」
「あ~……何となくとしか言えんな」
「何となくって…」
「お前が経験した事は俺も経験してる。やから紹介しても嘘つき呼ばわりか最悪幽霊に憑りつかれに行かせようとしたと怒られる事もあったで?」
「……何か?…俺やったら行けるかもってか?」
「……せやな。ほんまに何となくや」
「……」
煮え切らない答えに対して煮え切らない気持ちだけがあった……それでもやっぱりその店に向かう彼が居て…
「……」
そこでの賑やかさとうどんの温もりと漂う湯気とだしの香りと…その一切が嘘では無い事は十分解っている。全部嘘やったらここ数日の間毎日版飯抜きの生活をしていたはずだから気付かない訳無い空腹をとっくに感じていただろう。
「……」
しかし疑問と戦慄は消えず彼は今までは珍しくまだ日の高い内にその墓地に向かった。
「……」
店主の言う通り店は開いていない、そこにうどん屋は無くそこを通り過ぎても感じる物は何も無かった。
(じゃあ一体あれは…)
頭がグルグル回り始めようとしたその時だった。
「おや?いつもより早いですな」
声をかけて来たのはこの墓地を管理する寺の住職だった。
「……ここは」
「見ての通りの墓地じゃよ」
「それは解る!解るけど…じゃあ…」
「……うどん屋ですかな?」
「そうそれや!なんで見えるし行けんねん!」
「……なるほどそう言う事か……懐かしいのう」
「…懐かしいって…」
「わしも昔は良く伺ってたよ」
「………」
住職は全てを悟りその上で受け止めるような穏やかな笑みを浮かべた。
「……彼岸屋……わし達の中でそう呼ばれておる」
「彼岸屋…」
「はい。ここではうどん屋じゃが他だと違うとか…でもなぜあるのかの理由は同じじゃ」
「理由…」
「うむ…お彼岸の時の出入り口にその店はあると…」
「お彼岸……え……じゃああの店にやって来る客って…」
「そうじゃな…既にお亡くなりになってこの墓地でおやすみになっておられる…」
「待て待て待て!俺はまだ死んでへんぞ!」
「解っておる。まだ弔ってもおらんし墓もなかろう?」
「言い方……まあまあそうなんやけど」
「何時かは行けなくなる場所じゃ、そして誰もが行ける場所でも無い。ただそれだけの場所じゃ」
「………」
(あっちは……あの世?……じゃあ六文って…)
戦慄が恐怖に変わっていくのを止められなかった。
それを受けて流石になのかしばらく足が遠のく彼が居た。
それを見て知り合いも揶揄い混じりに声をかけてくるがそこで改めて感じた恐怖に驚きながらも慰める知り合いがいた。
そんな日々が続いたある日だった……
「火事だ~~~~!!!」
火が沈もうとした時に突然近くで火事が起こり、その時に吹いていた風にあおられたのもあって瞬く間にそれは広がっていった。
「………」
火が収まり…しかし辺りには焼け落ちた長屋やもっと大きな建物の跡がその男の周りの光景だった。
辛うじてなのか幸いなのか早く気付いて逃げる事が出来た事もあって住んでた長屋は燃えて住めなくなってしまったが怪我も無く燃えてしまった家財等も殆ど無かった。住む所だけを失ったと言っても良い位の被害で済んだがこれからの事に途方も無さを禁じ得なかった。
「………」
とりあえずと残った家財を生き残った他の知り合いに預け、住む場所も少し遠くなるがじきに見つかるだろう……となればなのか。
(……あの店)
住職の言葉が改めて頭の中で膨らむ。それでも足は自然とそこへ向かっていた。遠くなれば次は来れなくなるかもしれない、いや本当は今までも何時行けなくなるか解らない中で続いただけでしか無かった日々…それを噛みしめないと…
『あんな事もあったけど今日も…』
とそんな気持ちを噛みしめないと心が落ち着かないからなのかそこに向かうと…
「…おや?お久しぶりですね」
そこにうどん屋はあった。しかしそこにあったのは担ぎ屋台では無くもう少し大きな荷車屋台があった。
「店主、これは…」
「はい…今日はお客様が多くなりそうなのでこちらで参りました」
「……」
今回の火事で多くの人が亡くなったという、火に焼かれたか建物に潰されたかそれは解らない。実際今誰が亡くなりどれ位の数になったのかを知る者は誰もいないだろう。
彼は知っているのだろうか?聞いてみたくなるがそれを躊躇う男が居た。それを確認してもしも…もしもと思っていたそんな時だった。
「…お?これがその店かぁ?」
「っ!」
知った声がして振り返るとそこには…彼をつけていた知り合いがいた。
「お前…」
「お?なに驚いた顔してんだ?やっと見つけたんや、一緒に食べに行こ?」
「……」
『見える事も無く行く事も出来なかった奴が見つけていく事も出来た』
そして
『大火事の翌日』
となれば…と思えばその答えはもう否定できないだろう、しかしどうしても信じられない気持ちの中二人は店へ、店主はいつもと変わらぬ様子でうどんを二杯用意した。
「おおこれかぁ~じゃ、早速…」
知り合いは初めて見るそれに嬉々として器を両手で持ち上げて口に運び、うまいうまいと一口ごとに声を上げていた。
「……」
それを見て男は動けなかった。体が少し震えて、しかしそれ以上体が動かなかった。
「…何してんねん?せっかくのうどんが冷めてまうで?」
心配と不満と…でもいつもと変わらない様子で声をかけてくる相手に声を聞くごとにその震えが大きくなり…
「……っ!」
それ以上は無理だったのか飛びつく様に器を取るとかきこみ始めた。
「…なんや泣く程上手いんか?まあこれ位なら…でも毎日ここに来てたんやろ?それ程大袈裟な事や無いやろ?」
「………」
涙は悲しみの涙だった。男は気付いていた、そして認めたくなかった……隣の知り合いは……死んでしまった事に。
涙分の塩味がだしに混ざる…それが最後の一匙言わんばかりにその日に食べたうどんはここに通う様になって一番美味しかったはずなのにそれが心を満たす事も無く。
「っ!」
「あっ!おい!」
一気にかき込んで空になった器をカウンターに叩き付ける様に置くとその隣に六文をこれも叩き付ける様に置いて逃げる様に走り去る男が居た。
「………」
それに声をかける知り合い、しかしその声が届いて無いように相手は止まる事も振り向く事も無く走り去ってしまった。その先に自分は行く事が出来ない事に気付いていた彼は一瞬浮かんだ不満そうな顔を静かに見送る顔に変えていった。
「……さよならも言えんとこんな別れかぁ…」
しみじみと彼はそう言い。それを見つめる店主は静かなままで。男が走り去った方から代わりにだろうかやって来る大集団の応対に店主は信じられない程の手際で応対しながらその場には悲喜こもごもなやり取りと空気がありながら誰もが一杯のうどんを味わい合った。
それから数日が過ぎた…彼は別の長屋に移り住み場所は変わったがそれ以外はいつもの生活に戻っていた…あの店、あの墓地に向かう事以外は。
彼がその後その場所に向かった事は無かったという。しかしひょっとしたら向かったとしても二度とあの店に行く事は出来ないかもしれない。
「なあ店主!」
それでもあれから足しげく通う男が一人…あの知り合いだった。
「あいつ来なくなって久しいなぁ」
「そうでございますね」
「……もうこんのかなぁ…折角やっと二人で食べられるのに」
彼はまた男がやって来る事を待っていた、しかし結局やって来る事は無かった。
「仕方なかろう!」
その答えを示すような事を隣でそばを食べるお侍さんが大きな声で言った。
「あ奴はこれからを生きる事に決めたのだからのう!」
「これから…かぁ…」
『死ぬ事で終わった自分と生き残って続きがあるあいつ』
そんな二人がもう二度とと思うと改めて寂しく感じる彼がそこに居た。
「……一杯奢ろう」
「え?」
「あ奴から受けた恩だ!あ奴に返せないならお前に返すのも良かろう!」
慰めのつもりなのか仰々しく六文を出して笑顔でそういうお侍に男は吹き出して。それで悲しみをうどんと共に飲み込んで流そうと思った。
そんなお店はあるのだろうか?あったのだろうか?その答えを記すものは今は無い。
しかし過去を敬い、先祖を敬い、死者を敬い弔う気持ちがある限りひょっとしたらこんな話は日本に限った話では無いのかもしれない。
そしてそんな話もひょっとしたら今もどこかで人知れずあるのかもしれない…しかしそれが知れ渡る事は無い。
行ける人は限られ行った事のある人は何時か行けなくなると同時にその事を語らなくなるのだから。
それは「悲しい過去を思い出したくないから」もあるが同時に「これからまだ生きていくのだから」と言う気持ちもあるからなのだろう。
先祖を死者を弔う気持ちだけまだ生きている自分は生きようと思う気持ちがそうさせるのだろう。
……そして……ひょっとしたら今宵もどこかで声が聞こえて明かりがともっているのかもしれない……
「…うどんえ↓~そ~お↑~」
終わり
これはそんなお店を見つけたある男の日々のお話。
「…こんな所に本当にあるんかぁ?」
周りは薄暗くなってきた中そんな事を言いながら歩く男が一人。彼は話に聞いた店を探しに向かっていた。
なんでも「美味くて安いが夕暮れよりも暗くなってからじゃ無いと開いて無い店だ、その場所は…」と言われて向かったはいいが最初はその場所を聞いた時は「ほんまかいな」と疑いはしたが「いやあるんやって!それも一杯六文で食える!」と念を押されて気になった事もあって向かっては見たが場所が場所で周りの暗さと静けさも相まって「もう少し進んで見つからなかったら引き返そうか…いやいやそれは…」ともう何回も頭の中で思いながら進んでいくと…
「……ん?」
やっとと言うかやっぱりと言うかそれを思わせる店…所謂担ぎ屋台と言われるものと店が開いてる事を示すような赤ちょうちんが煌々と辺りを照らしていた。
「あれか?」
内心ほっとした気持ちと改めて懐の中の金の確認…「ああ言われたが間違った時に食い逃げ何て騒がれたらたまったもんや無いからな」と十六文以上ある事を確認して店に向かった。
「開いてるか?」
「…へぇ」
近づいて店主らしい男に声をかけると…その場に似合ったというかどこか薄気味悪いがはっきり聞こえる声で顔を向けながら答えて来た。
「なんや声が薄気味悪いな、ここでやってるからか?」
「そうですねぇ…こんな姿とこの調子でいつもここでやらせていただいております」
…変な感じがする。どこか生気が感じられない。でも間違いなくここにいる事は確かで目の前にあるのが全て幻では無い事は間違いない無いのだがどうしてもそうそんな気持ちが浮かんだが…
「…ま、ええやろ。うどん一杯貰えるか?」
それはそれと言うか最早子の周りも含めて雰囲気に慣れたのか噂を確認したくてカウンターと呼べる場所に立つと注文をした。
「へぇ…うどんえ↓~そ~お↑~」
こういうセリフなのか、こんな屋台では定番の言葉…でも。
「ちょっと調子ちゃうな、これもか?」
「へぇ…これもいつもの調子でございます…」
ちょっとズルッっと来そうなその調子もどこ吹く風と作る手際は惚れ惚れするほどによくすぐにうどん一杯が目の前に来た。
「~~~…ん~」
目の前に運ばれてきたうどんからの匂いだけでも旨そうなのが解るが味を確認しなければ始まらんと早速彼は…
「ずずずず~~っ」
器を両手に持つと出しを確認する為に口をつけた。
「おっ!これは…昆布だしか?」
「へぇ…そうでございます」
「珍しいなぁ…昆布だし何て手順がかかるやろうに」
「そういうわけではございませんよ?」
「へぇ~」
そう言った後口に運ぶうどんも絶妙で終始笑みがこぼれるばかりであっという間に器は空になった。
「ごっそさん。じゃあ…」
「…六文でございます」
「へ?…聞いてたけどほんまにええの?」
「ええ、それでやらさせていただいておりますので」
「……」
噂が一切嘘では無い事は確かなのだが驚くばかりの中六文払う男…そんな時だった。
「もし…」
「うおっ!」
後ろから突然。それも不気味な女性の声がして振り返ると。
「一体何…ええ…」
舞妓だろうか?それでもここにいるような雰囲気の無い女性がそこに居た。
「今日はやってはりますか?」
「へぇ…今から始めたばかりでございます」
「そうどすか、じゃあ一杯…」
「へぇ…」
あの調子からうどんが一杯出来上がって男よりもゆっくりと食べる女性がそこに居て…
「……うへへ……」
その一挙手から漂う艶っぽさに鼻の下が伸びるのを止められなかった。
「ごめん!」
「っ!」
しかしそれも束の間後ろから雷のような大きな声がしてビクッとして振り返るとそこには…お侍さんがいた。
「そばを一杯頼む、熱めでな」
「へぇ…」
「え?」
男に目も向けずに、しかもその注文は「いつもの」と言ってる様なそんな調子で店主も戸惑う事も無く程なく側が一杯出て来た。
「うむ!いただこう!」
声は幾分おさまったがそれでも満面の笑みを浮かべてそう言うと力強くという印象を感じさせながら瞬く間に器を開けていき、その時には女性の方も食べ終えていた。
「主人!ご馳走になった!」
「ごっつぉはんどす」
「…へぇ」
「では…ぬ?」
終始上機嫌と言わんばかりの男が懐に手を入れると途端に顔をゆがめた。
「…ぬぬ?」
そこからあちこちと手をまさぐるもお目当ての…代金だろうそれが見つからない事に驚きながらも信じられない程に体を小さくする男がそこに居た。
「……主人、すまぬ」
「……」
その理由を気付いてか主人の顔が一瞬鋭くなった。いや…そんな物じゃない位の…
(おいおいおい…)
彼からは何処か殺気じみたものが出てきて、その隣では女性が何食わぬ様子でお金を置いて去って行った。
「……」
「……」
一瞬静寂が戦慄を孕んでその場に漂う…でもその空気に耐えかねたのは…
「…あ~あ~もう!」
そう言うと男はもしもの為と多めに持っていた懐から六文を取り出してカウンターに置いた。
「これでええやろ!問題無いやろ!」
大袈裟気味の大声でその場の空気を吹き飛ばしたい一心で男はそう言った。
「お主!…しかしこの金は…」
「払えんのやろ!それにこの空気の中離れるなんて気分が悪いわ!折角上手いうどん食べて上機嫌やったのに!」
身分階級を考えると「お侍さんになんて口の利き方を!」と言われそうではあるがこの状況を放置して去るよりはと言う気持ちの方が強くなったが故のやけっぱちとも言える心からの言動だった。
「むう……感謝する」
しかし意外にも相手はしぶしぶと言った様子でそれを受け取る意思を見せて去って行った。
「…よろしかったのです?」
「ええよ、その代わりまた来るで?」
「はい…これ位の時間なら何時でも…」
それを最後の会話と男はそこから離れて行った。
『うまくて安い店は本当だった』
それが解るや否や彼はその店に足しげく通う様になっていった。知り合いは怪訝な顔を浮かべたりその理由を聞いたりしたが男ははぐらかすような答えをして上機嫌でそこに向かった。
それがどうしても気になってと知り合いの一人が後をつけていくと…
「…おい…ここって…」
それがどこか確認するように口に出そうとした瞬間だった。
「あっ!」
追いかけていた男の姿が消えた。驚いて追いかけてその辺りまで来たがその姿は影も形も無くなっていた。
「…あいつ」
心配と戦慄…そして場所が場所故の恐怖もあって男がくわばらくわばらと思いながら逃げる様にそこを去った。
それでもとそれ以降時間を見つけては追いかけていたその男の存在に気付く事も無く彼は今日もその店へ。
「店主!」
「へぇ」
「そういやぁこの店の名前ってきいてなかったよなぁ?」
「…そうでやすね…ここは「ぼちぼち屋」という号でやらせていだいております」
「ぼちぼちやねぇ…それってここでやってるからかぁ?」
「…そうですねぇ…それもありますね」
「ふ~ん…」
そう、ここまでその店のある場所を伏せてはいたが察しの付く方は気付いているかもしれない……
『店のある場所が…「墓地の中」…それも「店が開くのは日が落ちてから」』と言う事に。
男が最初に何度も二の足を踏みそうになったのはそれが理由であの時、そしてそれからも男がいる時にやって来る他の客の様子や雰囲気がまちまちなのもそれが理由だった。
そんな日々がある程度続いて今日も旨かったうどんの余韻に浸りながら帰路に就こうとしていた男に。
「おいっ!」
突然大声で声をかけて来たのは気になって時々後をつけていた男だった。
「…何や?つけて来たんか?」
「そそそそ…それより…お前今どこから来た?」
「どこからて…あっちからに決まってるやろ?」
そう言うと男は後ろに顔を向けて今も見えてるうどん屋を指さした。
「あっちって…なんもないぞ?」
「何も無いってお前…そこにうどん屋があるの見えんのか?」
「うどん屋ぁ?そんなの何処にあるんや?」
「おいおい!そこにあるやろ?」
からかってるようには見えないが至福の余韻を乱す相手に少しイラついてより力強く声を上げて指さした。
「………」
しかし…男の目にはそれが見える事は無かった。それでもこのままでは収まらんと向かって行くと…
「っち…折角の店そうそうばれて欲しくなかったん…や……けど……」
相手に聞こえない大きさで残念そうにそういう男の目に見えたのは……
『その場所に気付かない…いや、見えてないだろう相手がその店をすり抜ける様に通り過ぎる光景』だった。
「……え?」
「………」
一瞬静寂がその場を包む。しかし刹那その場所を通り過ぎた男の体が突然震えはじめと思うと。
「…ひっ……ひいいいいぃ~~~!」
こっちに目も向けずに一目散に走り去って行った。
「………」
一人その場に残された男はこの現実に立ちすくんでいた。
(俺には見えてる…今日もうどんを食べて…でも…あいつには見えてへんし……)
その場故の夜風が余韻を吹き飛ばし肌寒さに差し替えていくように思って男は小走りにそこから離れて行った。
「おい!おい!」
翌日店の紹介をした男に詰め寄る彼が居た。
「あの店っ!一体っ!」
息も切れながら辛うじて叫ぶように男が言う。恐怖は無くなったがそれでも怒りと驚きのせいで口が思う様に動かなかった。
「あの店って?」
「あの店や!墓地の中にあるうどん屋!」
「あああれ…って何で驚いてるん?」
「お前なぁ!俺には見えて食べに行く事が出来たけど違う奴には近づく事さえ出来んかったんやぞ?」
「あ~……」
「あ~ってなぁ!おい!何ぞよくないもんで食べさせようとしたわけ無いよなぁ?」
「そんな訳ないやろ?それやったらとっくの昔に調子が悪くなってもおかしくないやろ?」
「そ…そりゃあ……ほぼ毎日行ってるし………何や言っても多分今日も行くやろし……」
「……」
「……なあ」
「何や?」
「なんであの店を俺に薦めたんや?」
「あ~……何となくとしか言えんな」
「何となくって…」
「お前が経験した事は俺も経験してる。やから紹介しても嘘つき呼ばわりか最悪幽霊に憑りつかれに行かせようとしたと怒られる事もあったで?」
「……何か?…俺やったら行けるかもってか?」
「……せやな。ほんまに何となくや」
「……」
煮え切らない答えに対して煮え切らない気持ちだけがあった……それでもやっぱりその店に向かう彼が居て…
「……」
そこでの賑やかさとうどんの温もりと漂う湯気とだしの香りと…その一切が嘘では無い事は十分解っている。全部嘘やったらここ数日の間毎日版飯抜きの生活をしていたはずだから気付かない訳無い空腹をとっくに感じていただろう。
「……」
しかし疑問と戦慄は消えず彼は今までは珍しくまだ日の高い内にその墓地に向かった。
「……」
店主の言う通り店は開いていない、そこにうどん屋は無くそこを通り過ぎても感じる物は何も無かった。
(じゃあ一体あれは…)
頭がグルグル回り始めようとしたその時だった。
「おや?いつもより早いですな」
声をかけて来たのはこの墓地を管理する寺の住職だった。
「……ここは」
「見ての通りの墓地じゃよ」
「それは解る!解るけど…じゃあ…」
「……うどん屋ですかな?」
「そうそれや!なんで見えるし行けんねん!」
「……なるほどそう言う事か……懐かしいのう」
「…懐かしいって…」
「わしも昔は良く伺ってたよ」
「………」
住職は全てを悟りその上で受け止めるような穏やかな笑みを浮かべた。
「……彼岸屋……わし達の中でそう呼ばれておる」
「彼岸屋…」
「はい。ここではうどん屋じゃが他だと違うとか…でもなぜあるのかの理由は同じじゃ」
「理由…」
「うむ…お彼岸の時の出入り口にその店はあると…」
「お彼岸……え……じゃああの店にやって来る客って…」
「そうじゃな…既にお亡くなりになってこの墓地でおやすみになっておられる…」
「待て待て待て!俺はまだ死んでへんぞ!」
「解っておる。まだ弔ってもおらんし墓もなかろう?」
「言い方……まあまあそうなんやけど」
「何時かは行けなくなる場所じゃ、そして誰もが行ける場所でも無い。ただそれだけの場所じゃ」
「………」
(あっちは……あの世?……じゃあ六文って…)
戦慄が恐怖に変わっていくのを止められなかった。
それを受けて流石になのかしばらく足が遠のく彼が居た。
それを見て知り合いも揶揄い混じりに声をかけてくるがそこで改めて感じた恐怖に驚きながらも慰める知り合いがいた。
そんな日々が続いたある日だった……
「火事だ~~~~!!!」
火が沈もうとした時に突然近くで火事が起こり、その時に吹いていた風にあおられたのもあって瞬く間にそれは広がっていった。
「………」
火が収まり…しかし辺りには焼け落ちた長屋やもっと大きな建物の跡がその男の周りの光景だった。
辛うじてなのか幸いなのか早く気付いて逃げる事が出来た事もあって住んでた長屋は燃えて住めなくなってしまったが怪我も無く燃えてしまった家財等も殆ど無かった。住む所だけを失ったと言っても良い位の被害で済んだがこれからの事に途方も無さを禁じ得なかった。
「………」
とりあえずと残った家財を生き残った他の知り合いに預け、住む場所も少し遠くなるがじきに見つかるだろう……となればなのか。
(……あの店)
住職の言葉が改めて頭の中で膨らむ。それでも足は自然とそこへ向かっていた。遠くなれば次は来れなくなるかもしれない、いや本当は今までも何時行けなくなるか解らない中で続いただけでしか無かった日々…それを噛みしめないと…
『あんな事もあったけど今日も…』
とそんな気持ちを噛みしめないと心が落ち着かないからなのかそこに向かうと…
「…おや?お久しぶりですね」
そこにうどん屋はあった。しかしそこにあったのは担ぎ屋台では無くもう少し大きな荷車屋台があった。
「店主、これは…」
「はい…今日はお客様が多くなりそうなのでこちらで参りました」
「……」
今回の火事で多くの人が亡くなったという、火に焼かれたか建物に潰されたかそれは解らない。実際今誰が亡くなりどれ位の数になったのかを知る者は誰もいないだろう。
彼は知っているのだろうか?聞いてみたくなるがそれを躊躇う男が居た。それを確認してもしも…もしもと思っていたそんな時だった。
「…お?これがその店かぁ?」
「っ!」
知った声がして振り返るとそこには…彼をつけていた知り合いがいた。
「お前…」
「お?なに驚いた顔してんだ?やっと見つけたんや、一緒に食べに行こ?」
「……」
『見える事も無く行く事も出来なかった奴が見つけていく事も出来た』
そして
『大火事の翌日』
となれば…と思えばその答えはもう否定できないだろう、しかしどうしても信じられない気持ちの中二人は店へ、店主はいつもと変わらぬ様子でうどんを二杯用意した。
「おおこれかぁ~じゃ、早速…」
知り合いは初めて見るそれに嬉々として器を両手で持ち上げて口に運び、うまいうまいと一口ごとに声を上げていた。
「……」
それを見て男は動けなかった。体が少し震えて、しかしそれ以上体が動かなかった。
「…何してんねん?せっかくのうどんが冷めてまうで?」
心配と不満と…でもいつもと変わらない様子で声をかけてくる相手に声を聞くごとにその震えが大きくなり…
「……っ!」
それ以上は無理だったのか飛びつく様に器を取るとかきこみ始めた。
「…なんや泣く程上手いんか?まあこれ位なら…でも毎日ここに来てたんやろ?それ程大袈裟な事や無いやろ?」
「………」
涙は悲しみの涙だった。男は気付いていた、そして認めたくなかった……隣の知り合いは……死んでしまった事に。
涙分の塩味がだしに混ざる…それが最後の一匙言わんばかりにその日に食べたうどんはここに通う様になって一番美味しかったはずなのにそれが心を満たす事も無く。
「っ!」
「あっ!おい!」
一気にかき込んで空になった器をカウンターに叩き付ける様に置くとその隣に六文をこれも叩き付ける様に置いて逃げる様に走り去る男が居た。
「………」
それに声をかける知り合い、しかしその声が届いて無いように相手は止まる事も振り向く事も無く走り去ってしまった。その先に自分は行く事が出来ない事に気付いていた彼は一瞬浮かんだ不満そうな顔を静かに見送る顔に変えていった。
「……さよならも言えんとこんな別れかぁ…」
しみじみと彼はそう言い。それを見つめる店主は静かなままで。男が走り去った方から代わりにだろうかやって来る大集団の応対に店主は信じられない程の手際で応対しながらその場には悲喜こもごもなやり取りと空気がありながら誰もが一杯のうどんを味わい合った。
それから数日が過ぎた…彼は別の長屋に移り住み場所は変わったがそれ以外はいつもの生活に戻っていた…あの店、あの墓地に向かう事以外は。
彼がその後その場所に向かった事は無かったという。しかしひょっとしたら向かったとしても二度とあの店に行く事は出来ないかもしれない。
「なあ店主!」
それでもあれから足しげく通う男が一人…あの知り合いだった。
「あいつ来なくなって久しいなぁ」
「そうでございますね」
「……もうこんのかなぁ…折角やっと二人で食べられるのに」
彼はまた男がやって来る事を待っていた、しかし結局やって来る事は無かった。
「仕方なかろう!」
その答えを示すような事を隣でそばを食べるお侍さんが大きな声で言った。
「あ奴はこれからを生きる事に決めたのだからのう!」
「これから…かぁ…」
『死ぬ事で終わった自分と生き残って続きがあるあいつ』
そんな二人がもう二度とと思うと改めて寂しく感じる彼がそこに居た。
「……一杯奢ろう」
「え?」
「あ奴から受けた恩だ!あ奴に返せないならお前に返すのも良かろう!」
慰めのつもりなのか仰々しく六文を出して笑顔でそういうお侍に男は吹き出して。それで悲しみをうどんと共に飲み込んで流そうと思った。
そんなお店はあるのだろうか?あったのだろうか?その答えを記すものは今は無い。
しかし過去を敬い、先祖を敬い、死者を敬い弔う気持ちがある限りひょっとしたらこんな話は日本に限った話では無いのかもしれない。
そしてそんな話もひょっとしたら今もどこかで人知れずあるのかもしれない…しかしそれが知れ渡る事は無い。
行ける人は限られ行った事のある人は何時か行けなくなると同時にその事を語らなくなるのだから。
それは「悲しい過去を思い出したくないから」もあるが同時に「これからまだ生きていくのだから」と言う気持ちもあるからなのだろう。
先祖を死者を弔う気持ちだけまだ生きている自分は生きようと思う気持ちがそうさせるのだろう。
……そして……ひょっとしたら今宵もどこかで声が聞こえて明かりがともっているのかもしれない……
「…うどんえ↓~そ~お↑~」
終わり
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