17 / 94
第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです
新たなる旗と粛清と(2)(ラルフ視点)
しおりを挟む
新たに治政の用人を定め、火急に国として体を整えた。
問題は山積みだ。
荒れた町、不作の農地、飢えに苦しむ民、未だ不満を持つ貴族たち。
それでも進まねばならない。
そして、もうひとつ問題がある。
世継ぎだ。
仮に私の治政がうまくいったとして、王家として存続できたとしても、私とリサの間には子がない。
親類縁者からの養子を迎えることが寛容だが……。
そう思いながらも、私はその晩、リサの寝所を訪ねていた。
拒絶されるのはわかっていた。
それでも一縷の望みを捨てきれない。
その思いが通じたのか、結婚以来初めてその扉が開いた。
「私はもう産めません。いくつだとお思いになって?」
「……そ、そうか……」
「新しく妃を迎えるのがいいでしょう。できることなら、他国からの援助を頂けるような、そういうお家のご令嬢を」
リサはなおも賢明だった。
父と兄に頭が上がらず、自分一人では覚悟をもてない、情けないふぬけのようだった己。
今更ながら理解した。
そんな私の側に、リサはずっと変わらずに居続けてくれたのだ。
頑なな距離を見るに、私を許したわけではないだろう。
それでも、私がここまで心を失わずにいられたのは、間違いなくリサのおかけなのだ。
少なくても、私は孤独ではなかった。
兄上を蝕んだのが孤独という毒ならば、数多の者を周りに侍らせていたにも関わらず、兄上には私にとってのリサに代わる存在がなかったのではないだろうか。
嬉しい時も、苦しい時も……私はずっと、リサに救われ続けていたのだ。
ああ……。
今改めて、私は知った。
リサにずっと救われていた。
彼女が私の人生の羅針盤だったのだ。
リサが今、私の胸をいっぱいに温めている……。
熱いものが目から溢れ、頬を伝う。
それを見たリサが、音もなくそっと私の前に立った。
リサのほっそりとした指が私の頬に触れた。
震えた。この瞬間を、私はどれほど待ち望んでいただろうか。
ああ、リサ……!
「リサ……、君にまだ話していないことがある……。驚くかもしれないが……」
***
ヒューから聞いた話を伝えると、リサは瞬く間に頬を濡らし、声を上げて泣いた。
「本当なの!? 本当なら、ミラに会いたい! 会わせて、お願い!」
「……君なら会えるかもしれない」
「会うわ、必ず会うわ! そ、そうよ……! ミラが帰って来てくれれば……!」
「え……?」
「ミラに輿入れしてもらうのよ……! そうしたら、私とミラの夢が、ふたりで一緒に国のために尽くそうと約束したあの夢が、ようやく叶うのよ!」
「し、しかし……」
「本当にミラの生まれ変わりなら、必ず約束を覚えているわ! 私が言えば、きっとミラはセントライト王国も戻ってきてくれるはずよ!」
リサは一気に娘時代に戻ったかのように頬を染め、興奮に明け暮れた。
私にはヒューの言葉と表情が苦々しく浮かんでいた。
リサの思うようにいくだろうか……。
とはいえ、物の道理としてまずミラとプレモロジータ家には正式な謝罪をせねばならない。
我が国の歴史においても、サーフォネス家の名誉を回復する必要がある。
だが、名誉を回復したからといって、帰国の要請に従うとは限らない。
ミラにとって、私は命を奪った張本人。
この手で首を打ち落としたあの感触。
私だとて、忘れたことはなかった……。
いかに親友同士の若かりし頃の思いが果たせるとしても、ミラが簡単に納得するとは思えない。
ぬか喜びさせて、リサをがっかりとせてしまうのではないか……。
それでも私とリサは、メゾシニシスタ国への訪問を打診するために、連名で書簡を送った。
* お知らせ * こちらも公開中! ぜひお楽しみください!
問題は山積みだ。
荒れた町、不作の農地、飢えに苦しむ民、未だ不満を持つ貴族たち。
それでも進まねばならない。
そして、もうひとつ問題がある。
世継ぎだ。
仮に私の治政がうまくいったとして、王家として存続できたとしても、私とリサの間には子がない。
親類縁者からの養子を迎えることが寛容だが……。
そう思いながらも、私はその晩、リサの寝所を訪ねていた。
拒絶されるのはわかっていた。
それでも一縷の望みを捨てきれない。
その思いが通じたのか、結婚以来初めてその扉が開いた。
「私はもう産めません。いくつだとお思いになって?」
「……そ、そうか……」
「新しく妃を迎えるのがいいでしょう。できることなら、他国からの援助を頂けるような、そういうお家のご令嬢を」
リサはなおも賢明だった。
父と兄に頭が上がらず、自分一人では覚悟をもてない、情けないふぬけのようだった己。
今更ながら理解した。
そんな私の側に、リサはずっと変わらずに居続けてくれたのだ。
頑なな距離を見るに、私を許したわけではないだろう。
それでも、私がここまで心を失わずにいられたのは、間違いなくリサのおかけなのだ。
少なくても、私は孤独ではなかった。
兄上を蝕んだのが孤独という毒ならば、数多の者を周りに侍らせていたにも関わらず、兄上には私にとってのリサに代わる存在がなかったのではないだろうか。
嬉しい時も、苦しい時も……私はずっと、リサに救われ続けていたのだ。
ああ……。
今改めて、私は知った。
リサにずっと救われていた。
彼女が私の人生の羅針盤だったのだ。
リサが今、私の胸をいっぱいに温めている……。
熱いものが目から溢れ、頬を伝う。
それを見たリサが、音もなくそっと私の前に立った。
リサのほっそりとした指が私の頬に触れた。
震えた。この瞬間を、私はどれほど待ち望んでいただろうか。
ああ、リサ……!
「リサ……、君にまだ話していないことがある……。驚くかもしれないが……」
***
ヒューから聞いた話を伝えると、リサは瞬く間に頬を濡らし、声を上げて泣いた。
「本当なの!? 本当なら、ミラに会いたい! 会わせて、お願い!」
「……君なら会えるかもしれない」
「会うわ、必ず会うわ! そ、そうよ……! ミラが帰って来てくれれば……!」
「え……?」
「ミラに輿入れしてもらうのよ……! そうしたら、私とミラの夢が、ふたりで一緒に国のために尽くそうと約束したあの夢が、ようやく叶うのよ!」
「し、しかし……」
「本当にミラの生まれ変わりなら、必ず約束を覚えているわ! 私が言えば、きっとミラはセントライト王国も戻ってきてくれるはずよ!」
リサは一気に娘時代に戻ったかのように頬を染め、興奮に明け暮れた。
私にはヒューの言葉と表情が苦々しく浮かんでいた。
リサの思うようにいくだろうか……。
とはいえ、物の道理としてまずミラとプレモロジータ家には正式な謝罪をせねばならない。
我が国の歴史においても、サーフォネス家の名誉を回復する必要がある。
だが、名誉を回復したからといって、帰国の要請に従うとは限らない。
ミラにとって、私は命を奪った張本人。
この手で首を打ち落としたあの感触。
私だとて、忘れたことはなかった……。
いかに親友同士の若かりし頃の思いが果たせるとしても、ミラが簡単に納得するとは思えない。
ぬか喜びさせて、リサをがっかりとせてしまうのではないか……。
それでも私とリサは、メゾシニシスタ国への訪問を打診するために、連名で書簡を送った。
* お知らせ * こちらも公開中! ぜひお楽しみください!
0
あなたにおすすめの小説
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる






