【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴

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■第1章 突然の異世界サバイバル!

0080 まさか人類滅亡後の世界?

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 突然、ゆらゆらと揺り動かされて目が覚めた。

「う、う~ん……」
「銀ちゃん、起きて。明るいうちに小屋を見に行かない?」
「……あっ! そうだった!」
「荷物はもうまとめたし、ブーンズもみんな起きてるよ」
「えっ!」
「それに、タンズの花びらの傷が、見て、治ってるの! 心配してたけどブーンズも寝ると回復するんだね」
「あ、本当だ……」
「むー!」
「むー!」
「むー!」

 昨日夜中に採集に行って傷ついた花びらが三体ともすっかり綺麗になっていた。眠っていたのは小一時間ほどのようだ。後から考えてみると無防備でかなり怖いけど、それをいうなら昨日銀河は麻酔で全く動けない状態で爆睡していたのだ。……ふたりは運がいいとしかいいようがない。

「その小屋に行って、今夜の宿を作らないと」
「人がいれば泊めてもらえるかもしれないよね! 行こう!」
「あっ、みれちゃん、ちょっと待って。僕トイレ行って来ていいかな」
「うん、待ってるよ」

 銀河はいそいそと美怜とブーンズから離れて茂みに入って行った。そこでショルダーバッグからタブレットを取り出して、予定していたブーンズのギブバースをタップした。一瞬の光と共に現れたのは半透明の山吹色をしたスライムのようなゼリー状のブーンズ。いわゆるスライムモンスターと違うのは、ゼリーのような体の中で常にポコポコと小さな気泡が生まれては消えているところだ。

「よしっ、エコロ! 今日から君を僕らのパーティの衛生隊長に任命するよ!」【※24】
「フッフ~」

 口もないのにどこからともなく返事をしたエコロ。ゼリー状の体を震わせて音を出しているらしい。
 銀河は茂みにしゃがんで大きいほうのトイレを済ませて、近くにあった柔らかい葉っぱでお尻を拭いた。紙も布もないサバイバルでトイレをするというのは、野外になれていない現代人にとってかなりハード。水洗トイレのように流すことができないし、換気扇も芳香剤もないので匂いも直撃。さらに、周りの水源を汚さないように常に気を配らなくてはならないし、丸出しのお尻をいつ獣にガブリとやられるかわからない。【※25】
 銀河は息を止めながら急いでエコロに命じた。

「君は有機物を取り込んで分解する力があるよ。分解したものは周辺の土や葉っぱと混ぜて腐葉土として排出するんだ」
「フルッフ~」

 エコロが左右に揺れたかと思うと、トイレに覆いかぶさるように包んだ。同時に匂いもしなくなった。エコロの体がトイレをすっぽり包み込んだからだ。

「よしっ、成功だ! これでトイレの心配はなくなった! みれちゃんにもエコロを紹介してあげよう」

 そう思ったが、銀河は歩み出した足をすぐに止めた。

(待てよ……。エコロのこの半透明の体じゃ僕のウンチが丸見えじゃないか……! う、うわぁっ、そこまで考えてなかった! こんなのみれちゃんに見せらんないよ! えっと、ええと……!)

 銀河はバッグから黒のニット帽を取り出して、エコロにかぶせた。

「エ、エコロ、これを君にプレゼントするよ……。その、つまり、分解中のモノを人に見られないほうが君も安心できるかと思って……」
「フル~」
「ブーンズがアイテムを取得しました! レベルが上がりました。BPが上がりました。LPが上がりました。DPが上がりました」
「お、おお……。よ、喜んでもらえてよかった……」

 急場凌ぎのつじつま合わせだったが、幸いエコロは気に入ってくれたようだ。エコロを連れて戻ると、銀河はヒトエタンから水を注いでもらって手を洗いながら、エコロを紹介した。

「みれちゃん、これからはこのエコロがトイレの始末をしてくれるよ」
「へ~、なんで帽子被ってるの?」
「わあっ、取っちゃだめー!」
「フル~ル~」

 幸い美怜に帽子を取られる前にエコロが逃げたので、銀河の茶色い遺物は見られずに済んだ。危ない危ない……。あれを見られたら今後一切美怜の顔を真正面から見れそうにない。これからはブーンズを生み出すときにもっといろいろと考えてデザインしなくてはと心に刻む銀河だった……。
 早速出発しようとすると、美怜が呼び止めた。

「銀ちゃん、ちょっと待ってね」
「あ、みれちゃんもトイレ?」
「ううん、これ見て欲しいんだけど」

 美怜が手に握っていた蔓草を前にして見せた。なにやら、結び目がついている。結び目は全部で四種類あった。蝶々結びのような二つの輪っかがついた蔓。三つ葉のクローバーのような三つの輪っかがついた蔓。同じように五つの輪っかが花の形のようについた蔓。そして七つの輪っかがついた花の形のような蔓。

「わあ、いつこんなの作ったの? これって確か、飾り結びっていうやつじゃない?」【※26】
「うん、そうだよ。これをケルンの代わりにしようと思うんだ」
「ケルン?」
「うん。さっき小屋を見たときに思い出したの。来た道になにか人工的な目印をしといたほうがいいんじゃないかって」
「そうか、確かに……! 山道には迷わないように目印がつけられているもんね!」
「うん。キャンプ好きの友達が、山には山頂や登山道や分岐点を表すために、小石を円錐型に積んだものがところどころにあるっていっていたのを思い出したの。道しるべだったり、過去に大きな遭難があった場所だからこの先に行っちゃだめだよっていう印がケルンなんだって」

 次第に銀河も雑誌やテレビで見たのを思い出し、うんうんとうなずく。

「はじめ石を積むか、木に目印を掘るかで悩んだんだけど、石を集めるのが大変だし、木に傷をつけるのは獣がやったか、あるいは他の人が同じことを考えてやっていたらごちゃごちゃになっちゃうと思って。それで、この蔓草の飾り結びを木や枝に取り付けておいたらどうかと思って」
「すごくいい案だと思う! もしこれを目にした人が、僕らの存在に気づいてくれるかもしれないし。早速通った道にこれをつけて行こう!」

 美怜が掲げるようにして四つの飾り結びを銀河に見せた。

「一応、前に飾り結びのワークショップで覚えたやり方で四つ作ってみたよ。四つあるから、東西南北で使い分けたらどうかな?」
「それいいね! でも東西南北なら、目当ての方向に目印が来るように幹に縛り付ければいいんじゃない?」
「あっ、そっか!」
「とりあえず、この二つの輪っかを通った道の目印にして、危険な場所はこの七つの輪っかにしよう」
「うん、わかった!」
「これって簡単に解けないよね?」
「うん。この蝶々結びみたいなのを叶結び、一番輪っかが多いのを吉祥結びっていうよ」
「へえ~! なんか縁起のいい名前だね!」

 早速出発してから、目安になりそうな枝や木に、叶結びを取り付けて行った。距離を進んでいる間、結構な数を取り付けたけれど、美怜はすっかり結び方を覚えているらしく、わずかな間にサッサと結んでしまう。【※27】
 ものづくりが得意というだけあって、この器用さは銀河にはとてもできない芸当だ。すっかり感心して銀河が美怜の手をじっと見る。

「さすがみれちゃん。僕もキャンプのロープワークのイラストを描いたときに、バタフライノットっていうのは覚えたけど、それとはやり方が違うね」
「叶結びは手順が少ないから慣れたら十秒くらいでできるの。銀ちゃんもきっとすぐ覚えられるよ。はい、できた! 銀ちゃん」
「ありがとう、ここに付けるね」
「銀ちゃんのロープワークっていうのサバイバルに役立ちそうだね。今夜教えて?」
「うん、じゃあ、僕にも叶結び教えて!」
「うん!」

 美怜から受け取った叶結びを、銀河が引き寄せた枝に取り付けた。枝先に可愛らしいリボンの輪が風に揺れる。これだけはっきりわかる目印なら、辿ればちゃんとシェルターのある場所にも戻れそうだ。

「ほら見て、銀ちゃん。ここトウモロコシ採ったところ」
「ほんとだ……。あっ、確かにあそこ、小屋みたいなのが見えるね……!」
「うん、行ってみよう」
「あ、でもここから先、草丈が高くなって行くみたいだ。この枝で払いながら行こう」

 木のそばに落ちていた長めの枝を取ると、銀河と美怜は草の中を払いながら進んだ。こうすれば石があれば棒にぶつかるし、獣がいてもいきなり鉢合わせるリスクが減るはずだ。

「慎重に行こう。しゃべりながらね」
「う、うん……。ちょっとドキドキする……。またあの大蛇が出てきたらどうしよう……」
「大丈夫だよ、そのためにカラコマを生み出しておいたんだ」
「あっ、あの瓢箪。あれどういうものなの?」
「ふふふ…………! びっくりさせたいからそのときにね!」
「え~、気になる~!」

 そんなことを話しているうちに、次第に小屋らしきものが近づいて見えるようになってきた。見れば確かに、人の手で作られた簡易的な小屋に違いなかった。人がいるかもしれないと心を躍らせたふたりだったが、小屋が目の前になったとき、互いに言葉を失っていた。小屋ははるか昔に朽ちた廃屋だった。

「銀ちゃん、これ……」
「うん……。人がいたのはずっと前みたいだね……」
「……もしかして……」

 その声に振り返ると、美怜が不安そうに枝を両手で握りしめている。

「この世界……人類が滅亡したあとなのかな……」
「え……」
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