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はじまりの悪夢

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深夜
ここは黒の王宮の一室
少年の姿をした 黒の王・火竜王(サラマンデイア)アーシュランの部屋

柔らかな毛布に包まれ 
「ううん・・」寝返りをうつ眠っているアーシュ
薄っすらと開いた瞳は いつもの焔色の瞳でなく・・黄金の金の色

再び 目を閉じる・・そのまま深い眠りへと誘なわれる・・夢の中へ・・予知夢
見るべきではない・・未来の予兆・・・終末の悪夢

鎧を纏い 青年、大人の姿のアーシュは激しい長い戦いの中
激戦に 血まみれに・・ 傷だらけになりながら 剣を振るい 魔法の呪文を何度も唱える
「炎! 焔の柱! 敵を焼き尽くせ!」

「ぎやああ!」 「うわああ!」 
多くの敵が炎に包まれ 焼け死ぬ
だが・・次々と恐れを知らぬ 
敵の大群が襲いかかる 中には 魔法の呪文を唱える者も

「風の矢!」敵の呪文!
サッと 剣を持ってない右手で逆立ち 横にジャンプ!敵の攻撃魔法を避ける

しかし・・次にまた 同じ風の呪文の魔法の矢が次々と飛んできて 
よけきれずに そのうちの一本が 右腕に命中する!

「っつ!」痛みに声がもれる  矢をへし折り そのまま戦い続ける

「火竜王様! あちらです
あの奥の部屋に 巨人族の王と例の魔法使いがいます!」
味方の兵士が叫ぶ

再び・・子供の姿の 今の眠っているアーシュ
うなされ・・また少し目を少しだけ 開ける・・黄金の金の色の瞳
・・まだまだ夢は・・終末の悪夢は続いてゆく・・

再び目を閉じるアーシュ

次に見た光景は・・相変わらずの血まみれで 傷だらけの自分の鎧姿
床に巨人族の王の首が転がり

宿敵だった あの敵の魔法使いの胸に剣を突き刺して
はあはあ・・と荒い息をしながらアーシュは言う
「これで終わりだ 魔法使い・・」

「・・これで 呪いの入れ墨は残るが 
テインタル王女は解放される・・この戦いも」

「・・ふっ・・ふふ」口元かから血を流しながら 魔法使いは笑う

「・・・何がおかしい?」アーシュは問う

がしっと 剣を刺しているアーシュの左手首を掴み こう言う

「私は・・・遥か遠い時代・・長い時を生きてきた・・追放された神・・」

「・・何故 この大陸に二千年もの間 戦が絶えなかったと思う?

私が 歴代の王や 白の宗主達に取り入り・・裏で操ってきたのですよ
絶大な魔力を 手に入れる為に・・風と土・・水の魔力・・

絶大な力を持った 先代達の黒の王達の力は すでに我がものにした

時や心に干渉したり 支配する特別な力は 先の黒の王 貴方の父親
竜の王(ドラゴン・ロード)の死体から 取り込んだ・・白の力もすでに」
魔法使いは ローブから アーシュにその顔を覗かせる・・誰にもみせた事のない顔

・・40代前後の男の顔・・瞳が様々な色に変化する

歴代の幾世代もの黒の王達・・その魔法の力 属性は瞳に映して現れる
昔の水の魔法の世代・・
水の王・・水の竜王の目の色 深い青・・揺れるように薄い青にも

土の魔法の世代・・薄茶から黒・・豊かな大地の色

風の魔法の世代・・銀と淡い黄緑色・・空の青にも・・

最後に見せたの黄金の金の色・・先代 アーシュの父王と同じもの

「今・・この身は滅ぶが・・死にはしない・・
ずっと炎の世代を待ち続けた
300年前 前回の炎の世代アジェンダ達は奪いそこねた・・ずっと欲しっていた 
特に欲しかったその力・・魔力!

全てを焼き尽くす焔の力
私が大いなる力を手にいれ・・
天上の世界に戻り・・私を追放した神々と呼ばれる私の同族
彼らを 皆殺しにする為の大いなる絶大な魔力・・力

あのもう一人の火竜王テインタル王女だけでは まだ足りない

・・ゆえに 黒の王 火竜王アーシュラン貴方の力を
だが簡単には 殺しはしない 長い間 手間取らせてくれた礼に 
そなたをじわじわと殺して・・嬲り殺してやろう

黒の王 火竜王(サラマンデイア)・・貴方の命と魔力を奪う・・」
ぐいと 左手首を握られながらも 力を入れて 魔法使いの身体に剣を突き刺す

「うぐっ!」声を上げる 魔法使い 彼の口から また血が流れる
「ふっ・・ふふふ」魔法使いは笑う

「・・世迷言はここで終わりだ・・そんな状態で 何が出来る」

「何がおかしい?」怪訝な顔をするアーシュ
 
「ん・・うっ!・・ううっ!」
今度はアーシュが 息苦しそうに 苦しそうな声を口から漏らす

突然 前ぶれもなしに 電流のような力が
アーシュの身体中を巡り 身体の中から 焼けるような激しい痛みを感じる
魔法使いは ぶつぶつと魔法の呪文を唱えてる

「・・き・・きさま! 何をしている魔法使い!」
アーシュは痛みに歯ぎしりをして 叫ぶように言う

「貴方の命、魔力 全てを頂き 奪うと言いましたよ火竜王(サラマンデイア)」

ガリっと 音がして 床から光が走り 
無数の水晶の尖った鋭い先が 下から次々とアーシュの身体を貫く!

「うおおっ!」身体を貫かれた 激しい痛み

「ぐっ・・」焔色の赤い瞳を見開くアーシュラン
口元から血が滴る

魔法使いは また小さな声で 魔法の呪文を唱えてる
「・・これで魔法は完成・・貴方を殺す・・じわじわと長い時間をかけて
私は・・再び新しい身体を・・新しい絶大な焔の力を手にいれる!」

真っ白な大きな光が アーシュと魔法使いの身体・・二人を包み 光が消えた途端
二人は消える

・・しばらく後・・声

「アーシュ様!」血まみれの鎧装束のアルテイシアが呼ぶ
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