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針仕事と店の火事

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お友達が出来ました 私同様 まだ娼婦の仕事をしてない子

「うちは 貧しい農家で兄妹も多くて 口減らしにね 此処に売られたのよ」
赤色かかったくせ毛 そばかすの少女が苦笑する

ハリエッタ 将来は間違いなく美人になる

「ああ、服が破れてる あたしが縫ってあげるよ」
ハリエッタが手早く 服を直してくれた

「死んだ叔母がね 昔、お針子をしてたのよ
大きな御店 あたしもお針子をしたかったな ちょっとした小金持ちになれるらしくて」

じっと手際を見ていたら
「あんたにも 教えてあげようか?」「本当?」「うん」

下働きの暮らしは苦しいけれど 
友達が出来て ちょっとだけ喜びを感じていた

半年後
「すごいね!」「ハリエッタ そうかな?」
「ハリエッタの教え方がいいのよ!」「うふふ そう?」

練習の成果は なかなかのものだった 自分の服は生地さえあれば縫える程に
上達していたのよ


しばらく後の事  
間もなく 娼婦として店に上がる 数か月前の事だった

身体も心を壊した娼婦の一人が店に火をつけて 自分も死んでしまったのです

「ああ」「い、今よ 今のうちに逃げるのよ!」

二人で手を繋いで 逃げ出したの
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