暴君へ捧げる騎士の愛

彩月野生

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第一章<王となる者の定め>

騎士とケダモノ王子1

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 北の大陸を統治する大国バステオには、王となる者を決闘で決める習わしがある。
 例え血の繋がる兄弟であろうとも、その命を奪った者が王座につける資格を得るのだ。
 長兄ランドルフ、次兄ランダリル、三兄エイドリック。息子達を玉座の上から見据える初老の国王は、彼らに問うた。

「間もなくエイドリックが、成人を迎える。その刻を迎えるという意味は、分かっておるな?」
「はい父上」
「はい、父上!」
「ランドルフ?」

 ランダリルとエイドリックが揃って返事をする中、ランドルフだけはゆっくりと顔を上げると口元を吊り上げて囁くように答える。

「ええ。承知しております……王の座につくのはこの俺です」
「うむ。分かっているのなら良いのだ」

 ランドルフの不気味な笑みに一瞬凍りついた場の空気を、国王の返答が和らげた。
 そんな不穏な光景を、王間に揃う臣下達に紛れて騎士アルノルトは見つめていた。
 王子達をそれぞれ観察しつつ、思考を巡らせる。

 長兄ランドルフ様――狡猾、残忍な性格。兄弟の中で一番剣の腕が立ち、攻撃型の炎の魔術に優れている。
 次兄ランダリル様――気高く優しい性格。治癒魔術に優れており、剣の腕は並。
 三兄エイドリック様――ずる賢い性格。魔術はほぼ駆使えず、剣の腕はない。

 何とも癖の強い兄弟である。副団長であるアルノルトは、王子達と連帯を組み、この国を守る責務を負う。
 団長と共に緻密な意思疎通を試みたが、ランドルフは表情の読めない顔つきで相づちさえせず、エイドリックは終始困り顔であり、ランダリルだけが熱心に耳を傾けていた。
 
 アルノルトの剣の腕に強い興味を示したランドルフは、ある時手合わせを命令して来た。
 お互いに兜はかぶらず鎧を着込み、鍛錬場にて剣を構えて向かい合う。お互いの視線が絡み、どこからともなく吹き込む風が、強く頬を凪いだと思った瞬間、状況は激しく動いた。

 金属音が悲鳴を上げてアルノルトの足裏が煙をあげた。
 あまりにもランドルフの剣を振るう力が強すぎたのだ。
 
「うぐうっ!!」

 アルノルトは顔が歪むのを感じつつ、精一杯両腕に力を込めてどうにか鉛のように重たいランドルフの剣を押しのけようと、歯を食いしばるが足裏は地に食いこまんばかりに擦られ、鎧を着込んだ身体はじょじょに後退していく。
 
 アルノルトは目を見開くと内心で叫ぶ。

 ――なんだ、これは!? これが人の力なのか!?

 見透かしたような笑みを浮かべた目の前の怪物は、大声を張り上げると大きく剣を振り払った。

「アアアアアッ!!」
「あがっ――」
 
 腕が吹き飛ぶ――そう感じた時、宙に翳した両手からは剣の姿はかき消えており、どこかで鈍い音が響き渡る。
 ゆっくりと音の方向へと顔を向けると、そこには粉々になった剣の残骸が無残に地の上でこんもりと積もっていた。

 あんぐりと口を開ける事しかできずに硬直していると、高笑いに我に返り勝者に向き直る。
 
「はははははっ」

 ランドルフが剣を片手でなんどか振り回しながら盛大に嗤っていた。
 ひとしきり嗤うと、切っ先をアルノルトの喉元へと突きつけてきた。
 
「――っ」

 ヒヤリとした感触に生唾を自然と飲み下してしまう。
 獲物を狩るケダモノの目が、アルノルトを捕らえた。
 舌なめずりをしたケダモノがおもむろに口を開く。

「俺が勝者だ。ならば、大人しく仰向けに寝転がれ」
「……え」
「いいからそこに仰向けに寝ろ!!」
「うっ!?」

 柄で胸元を小突かれて、操られるように背中を鎧越しに地へと押しつけ、仰向けに転がる。
 ドズッ!!

「ひっ」

 顔のすぐ横に剣が突き立てられたと気づき、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
 ランドルフはアルノルトの服を弄っている。しかも下半身を。
 思わぬ事態におののくアルノルトは、慌てて上半身を起こしてその手を止めようと掴んだ。

「お止め下さい!!」
「黙っていろ!」

 有無を言わさずランドルフは、アルノルトの穿いているものを剥ぎ取り下半身を丸出しにされてしまう。
 肌が空気に触れて冷たさに身が震えた。股間の中心で揺れている性器が滑稽に見える。
 かっと頬が熱くなり、心臓がばくばくと脈打つのを感じた。
 
「かわいらしいな、ん?」
「あっ」

 指先で弾かれて鋭い痛みが性器から神経へと伝わって腰が跳ねる。
 悪戯にしては度が過ぎている!!
 ぐにゅぐにゅと子供のように性器を弄るランドルフに向かって声を張り上げた。

「どうか、お止め下さい!! こ、このような辱めはあまりにも……」
「フン。これはお前に屈辱を味わわせるための儀式だ。いっておくが、遠慮はせんぞ」
「!?」

 性器から手を放したランドルフが、アルノルトの両足を掴んで広げる。
 思い切り開かれるので太ももの付け根にぴりっと痛みが走った。

「うぐ……」
「力を抜け」
「え?」

 ごそごそとランドルフが自身の前を片手で弄っているのを呆然と眺めていた。
 
 ――まさか、私を犯すつもりなのか……!?

 アルノルトの焦燥を見抜いたかのように、ランドルフの瞳がギラつく。
 口元を吊り上げると舌なめずりをする。

「俺が与える痛みをじっくりと感じろ、アルノルト!」
「――あっ」

 臀部の秘部を熱くて硬い肉塊が勢いよく貫いた。
 焼けた鉄が埋められたような感覚に激痛で涙が滲むのを感じて、舌を突き出して無様に呻く。

「おふぅう……んお、お……っ」
「どうだ、アルノルト? 俺のイチモツは?」
「んンッ……ぐうう……」

 両手を投げ出し口と目を見開いて、体内を貫く肉槍から与えられる痛みと熱に、浅い呼吸を繰り返して耐える。

 ――く、るしい……まるで、凶器だ……っ

「どうなんだアルノルト!?」

 ごりゅりゅりゅっ!!

「あぎいいいっ!! いだいいっ」
「そうか痛いか!! それでいい!!」

 アルノルトは男根に貫かれるというあり得ない体験に、思わず子供のように叫び、両手を地の上でバタバタさせて顔を振って叫んだ。
 熱い、苦しい、早く終わらせてくれ――っ!!

 そんな悶絶するアルノルトに、満足したように歓喜の声を上げてランドルフは遠慮なく腰を突き上げて来る。

「いいぞ!! 俺をこのまま刻み込んでやる!!」

 ランドルフの腰の突き上げに合わせて、アルノルトの四肢が激しく揺れた。
 酷い痛みと熱さから身体の力は抜けないせいで、ただただ苦しみ喘ぐばかりだ。
 
 ぼぢゅぼぢゅという肉を穿つ奇妙な音が、やけに大きく脳内に響いている。
 肉棒を突き入れられている秘部が、感覚がないほどに熱くて液体が流れ出ているような感触だけが肌に伝わってきた。
 きっと鮮血であろう。
 ランドルフは唸り声を上げながら恐ろしい顔つきでアルノルトを穿ち続ける。
 
 アルノルトはひゅ、ひゅっという空気が抜けるような間抜けな声しか出せなくなっていた。
 
 ――肉穴にされた人形だ……。

 腹の奥で吐き出された汚濁を受けても、四肢はもはや言う事を聞かず、ランドルフが出ていっても仰向けで荒い呼吸を繰り返し、宙を見据える事しかできない。

 下半身から流れ出る不快な感覚に頬が引きつるのを感じつつ、自分を見下ろして笑うケダモノと視線が交わった。

「いい目だ……お前は俺の物だ。逃げられんぞ」


 悠然と立ち去る逞しい背中を見送ると、嫌悪感と吐き気に襲われて、何度も咳き込んだ。

 ――殿下は狂っている。
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