暴君へ捧げる騎士の愛

彩月野生

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第一章<王となる者の定め>

騎士とケダモノ王子4

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 ランドルフの言いつけ通り、夜に寝室を訪ねるとすでに準備を整えられていた。
 甘い香りが漂う広々とした寝室の中心に、備え付けられた巨大な寝台。
 その上にあぐらをかいて座るローブ姿の屈強な男が微笑を浮かべる。

「さあ。来い」
「は、はい」

 アルノルトは風呂で身体を洗って絹地の寝着に着替えてはいたが、抱かれればまたすぐに着替えなくてはならないので、上質な服が汚れるがもったいない気がしていた。

 そんな考えを顔を振って振り払う。幼稚な現実逃避だ。
 本当はまた乱暴に身体を貫かれて激痛を味わうのが怖くて仕方ない。

 いっそ全てを陛下に伝えてしまえば楽になるのかも知れないが、何故かランドルフとの件は自分の力で解決したいと思うのだ。

 手を伸ばされてそっと掴むと、寝台に引っ張り上げられて放り投げられた。
 四肢を柔らかく包みこむ寝具の上で大きく跳ねて、慌てて起き上がろうとするが仰向けに縫い付けられてしまう。
 両腕を掴むランドルフの大きな手の平の熱さと強さに歯がみした。

「悔しそうな顔をしているな?」
「くっ」
「良い目だ。騎士たるもの、反抗心をなくしては強い意志を保てまい?」

 覗き込んでくる青い目は欲情で濁り、鈍い光を放つ。
 大きく開いた口から鋭い歯が覗いている。普通の人間よりも鋭いように見えて獣に食われるような錯覚を覚えた。

 同時に不思議な感覚に支配される。何故、自分は尊敬し慕う筈の殿下に組み敷かれ、こんな感情を抱いているのだろうかと。
 こんな感情とはどんな? と疑問を胸の内に尋ねても、答えは容易には返って来ない。
 嫌悪なのか憎悪なのか恐怖なのか不安なのか――ともかく名前のつけられない奇妙な気分だ。

 せめて目を閉じて顔を背けようと試みるが、掴まれた両手首がきつく締め上げられてどうしても目の前のケダモノから目を離せなかった。

「俺をみろ、アルノルト」
「う……殿下……」
「今日は気持ち良くしてやろう。起き上がって裸体を晒して四つん這いになれ」
「……っ」

 耳元で熱い吐息と共に囁かれ、ぞくりと背筋が震える。
 腕を組んで観察するランドルフを尻目に、おずおずと衣服に手をかける。
 裸になっていく自分の姿を観察されるのなんて初めての経験だ。
 指先が震えてぎこちない動作で上着から脱ぎ、露わになった胸筋を見据える。

「前から思っていたが、お前もなかなか立派な肉体を持っているな」
「い、いえ。殿下ほどでは」
「さっさと下も脱げ」
「は、はい」

 まごつきながら穿いているものを足から引き抜くようにして脱ぐと、とうとう全裸となり、なんとなく性器を手の平で隠してしまう。
 それを嗤われて頬がかっとなる。

「四つん這いになって尻をこちらに掲げろ」
「……っ」
 
 指示通りに四つん這いとなり、尻を高く掲げて間もなく、臀部に何かが貼り付いたので四肢が跳ねた。

「ひ?」

 節くれ立った冷たいものが貼り付いている。

「これはある魔術師から手に入れた代物だ。性交用の触手でな、ほどよく弾力があって中に入り込んで掃除したり、解す能力がある」
「はっ? ど、どういう事ですか?」
「つまりは、尻穴で性交する為の淫具だ」

 触手はぐぢゅぐぢゅと尻穴に入り込んで中で蠢き始めた。

「おふぅううっ!?」

 ――は、腹の中がああああっあついいいいっ!!

 ごつごつして弾力があり粘ついている触手が、縦横無尽に腸内をなぶる強い刺激に耐えられず、アルノルトはへこへこと腰を上下に振ったり揺らしたりして、感じる場所を擦りあげられる度にあられもない声で叫んでしまう。

「あっふうううんおおおおおっ」
「いい反応だ!! 痛がるお前もいいが、善がるお前もいい!!」
「ひっ!! ふひぃいいいいい~っ!!」

 ――よ、よがる!? わ、わたしがああっ!?

 尻穴を貫かれて痛みに耐える屈辱を味わうならまだ騎士としての矜持を保てるが、快感に狂うだなんてあってはならない――いくらなんでもそんな真似は、己が許せない。

 アルノルトは必死に四肢に力を入れて口を固く閉ざし、声をおさえようとふんばった。

「んぶうううっんぎいいいいっ」
「何がなんでもイかないと頑張るつもりか? 無駄な努力だな!!」

 ドズンッ!!

「むほおおおお~~っ!?」

 腹奥に埋められた圧迫感に目を見開き、寝台に突っ伏しそうになるが、腹と腰をがっちりと抱え込まれて、くずおれることを回避する。
 アルノルトは何が起こっているのかを理解した。

 ――で、殿下のイチモツを、イれられた……まだ、触手が奥にはいっているのに……っ

 こんな酷い事をするなんて。この王子ならば考えられることだが……。

「舌を突き出して蕩けきったその顔、そそるぞ」
「ん、んむううううう」
「本来ならば触手が役目を終えたら突っこむべきだろうが、面倒だ。このまま一発中だししてやる!!」
「ふぎいいいいいっ」

 おやめください――その声は発する事は叶わず、剛直の杭が腸内をかきみだし、腹奥をぼごぼごと穿ち始めた。

 ごっ!! ごっ!! ごっ!! ごっ!! ごっ!! どづっ!! ごづっ!!

「むほっ!! おほっ!! んほおお~っ!! おほおおおっ!!」
「どうだ!? 触手と一緒に我がイチモツでどづかれるのは? 気持ちよくでたまらんか!?」
「しょ、しょんにゃこひょおおお~っ」
「涙と涎でぐちゃぐちゃの顔で言っても説得力がないな!!」
「ふぎいいっ!! ふぎいいいいっ!!」

 ――あついいいあついいいっ!! でんかのお肉棒があああっ!! 触手をごりゅごりゅしているうううっ!!

 あひあひと情けなく喘ぎ必死にシーツを掴み、背中から覆い被さる男の屈強な体躯の重さと腹奥を穿つ巨根の責めに耐える。
 鼓動の爆音が脳内に響き、尻穴を穿たれる卑猥な水音がやけに大きく響いて聞こえた。
 自分の喘ぐ間抜けな声と共に呼吸が荒くなり、まるで雌犬のようにだらしない呼吸音と快楽に喘ぐ絶叫と重なる。

 頭上にあるランドルフの荒い呼吸と吐息が常に脳天に降り注ぎ、そのケダモノの欲望を感じ取った。

「おっっひいいいいっ!! いひいいいい~っ!!」
「どうっっだあああっ!! 俺のイチモツはああっ!! ぎもちいいかあああっ!!」
「あぎいいいっ!! いいいでひゅうううう~っ!!」
「ならば!! おれの特濃ザーメンをうけとれええっ!!」
「くひょおおおおお~~っ!!」

 欲望を爆発させた男のイチモツが体内で爆ぜるのを、朦朧とした意識の中で懸命に受け止める。

 ぶしゅっ!! ぶりゅうううっ!! ぶぼっ!! ぶぼぼぼぼぼっ!!

「あちゅいいいあぢゅいいいいっ!! ひぎいいいいっ!!」
「受け止めろ! 俺の子種を!! おまえのとろとろの腹の中を穢してやる!!」
「いややあ~っ!! あああああああっ!!」

 体内に汚濁を受け止めるのは二度目だ――それでも、男である己が子種を注ぎ込まれる事実に嫌悪感は消えず、またもや吐き気に襲われる。
 今度は途方もない快感も伴う為、混乱の最中、嵐のような性交に屈した。

 気付けば、静かな世界で四肢を広げて天井を眺めていた。
 覗き込んできたランドルフに額に口づけをされて、唇の感触にぴくりと身体が震えて掠れた声で呼びかける。

「ラ、ランドルフ様……」
「かわいかったぞ。身体を綺麗にしてやろう。まだ触手が中に残っているだろう」
「……っ」
 
 一瞬、目の前にいる男が誰か分からなかった。
 ランドルフの優しい笑みを初めて見せられたアルノルトの胸は、切なく締め付けられて無意識に手で胸元を押さえていた。
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