11 / 79
一章【鬼神に取り憑かれし者】
十一話
しおりを挟む
気を失って倒れた泰正に、三人は駆け寄ると、英心が彼の脈を確認した。
二人に「休ませよう」と声をかけて、英心は泰正を背負って運び出す。
貴族達は泰正に奇異の目を向けて、ひそひそとささやく。
英心は、帝に目を向けて、心臓が跳ねた。
鋭い目つきには、明らかな嫌悪感が浮かんでいたのだ。
英心は、泰正を天照と佐々斬に預け、帝に向かって頭を垂れて歩みよった。
泰正は己が子供の姿であり、陰陽師の卵達が師に教えを仰ぎ、懸命に式神を使役する練習をしているのを見ていた。
そんな子供達の中でも一番目立つのは、英心であった。
彼は、泰正と同年齢で幼なじみなのだが、九歳のこの頃はすでに、安倍晴明と並ぶ才能を持つ、神童だと言われていた。
泰正は、師から“能無し”と見られていた為、主に両親と書物から知識を得ては修練に励んでいた。
英心と己との能力の差は、毎日のように開いていく。その差を目の前で見せつけられて、毎日両親に泣きつく始末であった。
両親は、泰正には力があると励ましてくれたが、どうしても英心に勝ちたいという気持ちに執着してしまい、ある鬼神について書物で知り、鬼神が封印された岩を見つけ出したのだ……。
「……ん」
「泰正様、意識が!」
「千景か……」
――どうやら夢を見ていたようだ。
布団に寝かされていた泰正は、狩衣の格好のままであり、いったい己がどうしたのかが思い出せない。
軽く頭痛もしており、上半身を起こすと顔を振る。
千景に白湯を手渡され、喉を潤してから状況を訊ねた。
「泰正様は、舞の後に倒れたんです」
「……そうだったのか」
「覚えていらっしゃらないのですか」
本堂の傍に仮設された休所に寝かされていた泰正は、記憶をなぞり舞の時の光景が脳裏に蘇る。
「ああ……そうだ、私は……」
「失礼します」
「!」
戸の先から声をかけられ、泰正は千景が戸に近づくのを見つめ、返事を返した。
「その声は、英心か」
「はい。お話がございます」
「……」
やけにかしこまった言葉遣いに違和感を覚えて、泰正は千景に目をやり、頷く。
千景はそっと戸を開き、英心を招き入れて泰正の傍まで下がった。
英心はお辞儀をして少し前に進み出ると、おもむろに口を開いて、泰正の目を見据えて話しかける。
「暫しの間、貴方を監視させて頂く」
二人に「休ませよう」と声をかけて、英心は泰正を背負って運び出す。
貴族達は泰正に奇異の目を向けて、ひそひそとささやく。
英心は、帝に目を向けて、心臓が跳ねた。
鋭い目つきには、明らかな嫌悪感が浮かんでいたのだ。
英心は、泰正を天照と佐々斬に預け、帝に向かって頭を垂れて歩みよった。
泰正は己が子供の姿であり、陰陽師の卵達が師に教えを仰ぎ、懸命に式神を使役する練習をしているのを見ていた。
そんな子供達の中でも一番目立つのは、英心であった。
彼は、泰正と同年齢で幼なじみなのだが、九歳のこの頃はすでに、安倍晴明と並ぶ才能を持つ、神童だと言われていた。
泰正は、師から“能無し”と見られていた為、主に両親と書物から知識を得ては修練に励んでいた。
英心と己との能力の差は、毎日のように開いていく。その差を目の前で見せつけられて、毎日両親に泣きつく始末であった。
両親は、泰正には力があると励ましてくれたが、どうしても英心に勝ちたいという気持ちに執着してしまい、ある鬼神について書物で知り、鬼神が封印された岩を見つけ出したのだ……。
「……ん」
「泰正様、意識が!」
「千景か……」
――どうやら夢を見ていたようだ。
布団に寝かされていた泰正は、狩衣の格好のままであり、いったい己がどうしたのかが思い出せない。
軽く頭痛もしており、上半身を起こすと顔を振る。
千景に白湯を手渡され、喉を潤してから状況を訊ねた。
「泰正様は、舞の後に倒れたんです」
「……そうだったのか」
「覚えていらっしゃらないのですか」
本堂の傍に仮設された休所に寝かされていた泰正は、記憶をなぞり舞の時の光景が脳裏に蘇る。
「ああ……そうだ、私は……」
「失礼します」
「!」
戸の先から声をかけられ、泰正は千景が戸に近づくのを見つめ、返事を返した。
「その声は、英心か」
「はい。お話がございます」
「……」
やけにかしこまった言葉遣いに違和感を覚えて、泰正は千景に目をやり、頷く。
千景はそっと戸を開き、英心を招き入れて泰正の傍まで下がった。
英心はお辞儀をして少し前に進み出ると、おもむろに口を開いて、泰正の目を見据えて話しかける。
「暫しの間、貴方を監視させて頂く」
0
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる