陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

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一章【鬼神に取り憑かれし者】

十八話

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 泰正は、英心の肉体の感触と温もりに、胸が熱くなり、煮えたぎるような情念がわきあがり、身を焦がす。

 ――これが……英心の、身体の感触、熱さ……!

 “そうだ。このままこいつの魂ごと食い尽くせ”

 ――英心の……身も心も……手に入れる……!

「泰正……?」

 “そうだ! 他の誰にも渡すな! この男はお前のものだ! 二度と手放すな!”

 ――他の、誰かの……そうだ……私は……!

「あああ……! ガアアアッ!」

 ――そうだ! 私は手に入れる! 英心を!

「泰正!」

 アア……愛しいモノの……声が、聞こえる……


 鬼の形相と化した泰正を見て、英心は術を駆使して、呪符を泰正に貼り付けた。
 泰正は呻き声を上げながら、尚も英心にしがみつこうとして、急激に伸びた爪を肌にくいこませようとしてくる。

 英心は、このまま術を行使すれば、泰正が鬼神と共に命を落とす事を分かっていた。

 ――だが、もし私が鬼憑きの泰正に殺されて、都に解き放たれれば、災いがもたらされてしまう……!

 英心は九字を切り、さまざまな呪文を唱え、泰正をおさえつける。

「ガアッアアアアッ」
「……泰正、許せ!」

 トドメをさすべく、力を込めた英心の脳裏には、泰正との思い出が蘇る――いつも、不機嫌そうな目を向けて、決して心を許さず、孤独な男であった。

 ――何故だ、泰正……私は、お前に何度も手を伸ばしたのに……!

 愛しい者がいるなら、守りたい存在がいるなら、何故、欲望に勝てなかった……!?

「英心さん! 駄目だ!」

「――!?」

 突然の大声に驚愕を隠せない英心だが、術をとめる事はできず、渾身の一撃を泰正に放った。

「ガアアアッ……!」

 泰正は絶叫して、その場に倒れ込む。
 鏡を手にした男子が、泰正に飛びつくようにして駆け寄った。

「泰正さん! そんな……どうして……!」
「……泰正」

 英心は、呆然として膝を折ると、身体を震わせた。
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