陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

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二章【愛憎の果てに】

九話

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 異空間にて。
 道満は、晴明を手中に収めた事実に感極まり、涙した。
 思えば、こやつと初めて相対した時から、今日まで長い時が流れた。
 己はこやつを唯一無二の好敵手と認めていたのに、こやつは己をいつでもぞんざいに扱い、何をしても飄々として、意に介さぬ。

 己は、こやつをいつか手中に収めてやろうと考えていた。
 そんな最中、こやつは妻を娶るというではないか……なぜだ、己の心がざわめき、己はこやつから逃げた。
 何か、とても虚しくなり、何故か怒りが湧き上がり、胸を掻きむしりたくなるような衝動に苦しんだ。

 そんな苦しみの海にいた時、あの奇妙な男子が現れた。
 男子は己と同じ思いを胸に秘め、その目を見れば、同類だと知れた。

 “時が来た”

「ハハハハハハッ」  

 道満は高笑いすると、抱きしめている晴明に囁く。

「良いか、晴明……お前と己は、この異空間で共に死ぬのだ。これがお前が己にした仕打ちの結果よ、せいぜい後悔して死ね!」
「……ならば、共に餓死という事か」
「そうだ! 外界と切り離せば、お前と己の二人きりで死ぬわけだ!」
「まるで心中だな」
「何!?」

 妙な発言をする晴明に道満は狼狽えた。
 それでは、まるで己は……。
 晴明が「忘れてはいまいか」と、声をかけるので、息を呑む。

「な、何の事だ」
「この異空間には、魔が潜む」
「魔だと?」 
「お前が撒いた火種は、すでに災いをもたらしているのだ」

 その時、どこからともなくうめき声が轟き、道満は震えあがった。

 ――この怨念……知っている!


 ※

 蓮は英心と共に忠行の屋敷に戻り、状況を話した。
 一方、忠行にも何かあった様子で、項垂れながら口を開く。

「陰陽寮から、使者が来てな……帝に全てをお話せねばならぬ」
「それは、誠ですか!?」
「うむ」

 英心の問いかけに、忠行は苦悶の顔つきで答えた。

 蓮は無言で瞳を伏せる。

 ――帝に気づかれてる。

 先輩の行方も気がかりだし、泰正の身も心配だが、今は大人しくしているしかない。
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