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二章【愛憎の果てに】
十一話
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泰正は、英心の怒り心頭に発する形相にすっかり気圧され、とにかく冷静に話すべきだと壁に背をつけて両手を突き出す。
「これにはな、深い訳があってだな……」
「訳……? ならば、ここで、聞かせてもらおう」
強く手首を握られてしまい、痛みに顔がひきつる。
順を追って説明するべきだが、はたと気づく。
己も、状況の把握はできていないではないかと。
話せる事は、何故生きていたのかくらいだ。
英心に向き直り、咳払いをすると、手首を離すように忠告する。
「落ち着け、離してくれればきちんと話そう。私が生きている理由を……」
「そんなものは想像できる! 私が知りたいのは……お前が、鬼に憑れた理由だ!」
「……っ」
泰正は絶句した。
――決して言えぬからだ。
ただ、今の英心には答えが必要だろう。
仕方なくごまかしながら話すことにする。
泰正は無言で英心を見つめ続けた。
ようやく手を離されて、口を開く。
「私が、誰かを想っているのは知っているな」
「……ああ」
目の前にいる彼を想う事実を隠しながら、言葉を選びつつ語る。
「子供の頃に、惚れた相手がいてな。その相手に構われたくて、鬼の封印を解いてしまい……焦がれる気持ちにつけこまれた」
「……まさか、両親は鬼に」
「そうだ」
苦い気持ちが膨れ上がるが、唇を噛み締めて抑え込む。
これ以上話せば、感情を爆発しかねず、押し黙り、瞳を伏せた。
ふと、風がどこからともなく強く吹く。
同時に英心が声を上げた。
泰正が顔を上げた時、英心は背を向けていたので、何事かと前に回り込むと、英心の目の前には、いつの間にか男子が倒れ込んでいるではないか。
「いきなり飛びかかってきたのだ」
「……彼は」
泰正は、英心が支える男子が、件の者だと分かり、目を瞠る。
「久遠。私を操った者だ」
「な、なぜここに!?」
「私の後をつけて来たのだろう……気を失っているだけだ。師の屋敷に運ぶ」
「ああ」
男子を背負って歩き出す英心の後を追う。
しばし無言で歩いていたが、英心が声をかけてきた。
「私を恨んでいないのか」
泰正は、気を失い、力が抜けている久遠の背中を見つめながら、会話を交わす。
「恨む? 何をだ」
「……お前を殺そうとしたんだ、私は」
溜息まじりに呟く英心に、泰正は頷いた。
真面目で正義感の強い英心らしいと。
泰正は本音を告げる。
「師は封じようとしてくれた。有り難いが、甘い考えだ。本来であれば、お前のやり方が正しい。気にする必要などない」
英心が足を止めるので、泰正もならう。
ぼそりと何かを言っているので耳を傾けた。
「……私は、お前の」
「英心? 何と言っているのか聞こえんぞ?」
その時、何かが光り、まぶしくて瞳をつむる。
英心の叫び声がした。
「鏡が光っている! 師の元へ急ごう!」
「これにはな、深い訳があってだな……」
「訳……? ならば、ここで、聞かせてもらおう」
強く手首を握られてしまい、痛みに顔がひきつる。
順を追って説明するべきだが、はたと気づく。
己も、状況の把握はできていないではないかと。
話せる事は、何故生きていたのかくらいだ。
英心に向き直り、咳払いをすると、手首を離すように忠告する。
「落ち着け、離してくれればきちんと話そう。私が生きている理由を……」
「そんなものは想像できる! 私が知りたいのは……お前が、鬼に憑れた理由だ!」
「……っ」
泰正は絶句した。
――決して言えぬからだ。
ただ、今の英心には答えが必要だろう。
仕方なくごまかしながら話すことにする。
泰正は無言で英心を見つめ続けた。
ようやく手を離されて、口を開く。
「私が、誰かを想っているのは知っているな」
「……ああ」
目の前にいる彼を想う事実を隠しながら、言葉を選びつつ語る。
「子供の頃に、惚れた相手がいてな。その相手に構われたくて、鬼の封印を解いてしまい……焦がれる気持ちにつけこまれた」
「……まさか、両親は鬼に」
「そうだ」
苦い気持ちが膨れ上がるが、唇を噛み締めて抑え込む。
これ以上話せば、感情を爆発しかねず、押し黙り、瞳を伏せた。
ふと、風がどこからともなく強く吹く。
同時に英心が声を上げた。
泰正が顔を上げた時、英心は背を向けていたので、何事かと前に回り込むと、英心の目の前には、いつの間にか男子が倒れ込んでいるではないか。
「いきなり飛びかかってきたのだ」
「……彼は」
泰正は、英心が支える男子が、件の者だと分かり、目を瞠る。
「久遠。私を操った者だ」
「な、なぜここに!?」
「私の後をつけて来たのだろう……気を失っているだけだ。師の屋敷に運ぶ」
「ああ」
男子を背負って歩き出す英心の後を追う。
しばし無言で歩いていたが、英心が声をかけてきた。
「私を恨んでいないのか」
泰正は、気を失い、力が抜けている久遠の背中を見つめながら、会話を交わす。
「恨む? 何をだ」
「……お前を殺そうとしたんだ、私は」
溜息まじりに呟く英心に、泰正は頷いた。
真面目で正義感の強い英心らしいと。
泰正は本音を告げる。
「師は封じようとしてくれた。有り難いが、甘い考えだ。本来であれば、お前のやり方が正しい。気にする必要などない」
英心が足を止めるので、泰正もならう。
ぼそりと何かを言っているので耳を傾けた。
「……私は、お前の」
「英心? 何と言っているのか聞こえんぞ?」
その時、何かが光り、まぶしくて瞳をつむる。
英心の叫び声がした。
「鏡が光っている! 師の元へ急ごう!」
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